大判例

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大阪地方裁判所 昭和25年(ワ)1924号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(事実)

原告は被告から金員(數額は爭いがある)を借受け、金四十二万円について公正証書が作成せられ、且右公正証書に基き担保のため原告所有の建物について所有権移轉の仮登記及び本登記がなされた。

原告は訴金三十万円仮受ける約束であつたのに、利息を天引せられ金二十七万六千円を交付せられたに過ぎないと主張して(一)公正証書の無効確認、(二)強制執行の不許、(三)仮登記及び本登記の抹消を求めていた。

被告は、金三十万円を月四分の利息で十ケ月間貸与することとし、金三十万円の授受をなした上期限までの利息を加えた金四十二万円の公正証書を作成したものであると爭つた。

後に至り原告は、右金二十七万六千円の内金八万四千円は弁済し、残額に利息制限法所定の年一割の利息を加えた金二十三万八百四十九円は供託したことを理由として(一)の公正証書の無効確認の請求を別件で審理中の債権債務関係を除き、原告は被告より何等の債務を負担していないことの確認の請求に変更する旨申立てた。

(判斷)

原告敗訴。判決は先ず本件請求の変更の申立は著しく訴訟手続を遲滯させるものとして却下した。

判示事項一、「まづ職権を以て按ずるに原告訴訟代理人は本件記録上明らかな如く準備手続終結後第一回の口頭弁論期日において、突如従前の事実に吻口しない記載を原因とする消費貸借契約公正証書の無効確認を求める請求及び請求の原因を変更し、弁済を原因とする債務不存在確認を求める旨申立てた。そして右は請求の基礎に変更あるものとは認められないし、成立に爭のない甲第八号証によれば、原告主張の日その主張の金員が供託せられたことも認められるけれども、被告が右供託により原被告の債権債務関係が別件大阪高等裁判所昭和二六年(ネ)第三七六号事件として審理中のものを除き全部消滅に帰したとの原告主張事実を爭う以上、これが審理を相当続行するの必要あること一件記録し徴し明らかである。従つてかかる訴の変更は右期日に口頭弁論を終結した本件においては著しくその訴訟手続を遲滯せしむるものと認めるから、原告の右申立を不当として却下する。」

そして本案については本件公正証書は無効ではないとして次のように判示した。

判示事項二、三、「凡そ消費貸借契約において貸主が貸附元金中から利息を天引して残額を借主に交付したときは、右交付金額と利息制限法所定の限度における天引利息の合算額について該契約は成立するものと解するを相当とするから、成立に爭のない甲第五号証によると、原被告間に金四十二万円の金円授受があり、これにより消費貸借が成立した旨公正証書に記載せられてあるが、仮に原告主張の如く金三十万円の貸借に対し金二万四千円の利子が天引せられ残額金二十七万六千円しか交付せられなかつたとしても、右消費貸借は右交付金額とこれに対する利息制限法所定の最高限度年一割の利息の合算額を超過しない部分について成立したものと認むべきであり、従つて部分については右公正証書は債務名義となることを妨げるものではない。尤も敍上の如く事情に拘らず金四十二万円の授受があつた旨の記載あるのは穩当を欠く嫌いがないではないが、然し右金額につき一部事実に吻合するときは、この後者の部分につき契約成立を認むべきであるから、一部吻合しない故を以つて該公正証書自体が全く無効の証書であると言うことはできないばかりでなく、そもそも右公正証書作成について原告は被告主張の如き趣旨にて作成を合意の上自らこれが作成を爲し、それも眞意を以つて且つ任意にこれを爲したことは原告の自認するところである以上、他に特段の事情のない限り敍上一部事実に吻合しない一事を以つて直ちに右証書自体の無効を主張する如きは著しく信義に反するものと言わざるを得ない。」

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