大阪地方裁判所 昭和25年(ワ)195号 判決
原告 吉田義三
被告 高橋茂義 外一名
一、主 文
被告等は連帶して原告に対し金弐万円及びこれに対する昭和二十五年一月十三日以降完済に至る迄年一割の割合による金員を支拂うことを命ずる。
訴訟費用は被告等の連帶負担とする。
この判決は原告において被告等に対し各金七千円の担保を供託するときはその被告に対し仮りに執行することができる。
二、事 実
原告訴訟代理人は主文第一、二項と同旨の判決並びに仮執行の宣言を求め、その請求の原因として、原告は昭和二十三年十一月十九日被告両名に対し金二万円を弁済期昭和二十四年一月十九日、利息一ケ月一割の約定で貸與したが被告等は弁済期に右元金の弁済をしないのみならず昭和二十四年六月以降の遅延利息の支拂もしなくなつた。被告等は夫婦であつて本件貸借は被告等に連帶して貸與することに黙示の合意があつたものであるから、原告は被告等に対し連帶して前記貸金二万円及びこれに対する本件支拂命令送達日の翌日である昭和二十五年一月十三日以降右約定利率を利息制限法所定の範囲に引直した年一割の割合による遅延利息の支拂を求めるため本訴請求をすると陳述し被告高橋茂義の抗弁事実を否認した。
被告高橋茂義は本件口頭弁論期日に出頭しないが、同被告の提出した答弁書によると、原告の請求を棄却する訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め、被告等夫婦が原告から原告主張の日に金二万円を原告主張のような約定で貸與を受けたことは認めるが、被告等と原告との間には本件貸金の弁済方法に関して昭和二十四年十二月末日以降毎月金千円宛分割弁済する旨の特約が成立しているからこの特約を無視して被告等に対し一時に全額の支拂を求める原告の本訴請求は失当である。又右分割金は毎月末原告において被告等方に取立に來る約定であつたにもかゝわらず原告は未だ一回も取立に來ないのであるからこの点においても被告等には何等履行遅滞の責任はないというのである。
被告高橋ゆきゑは本件口頭弁論期日に出頭せずかつ答弁書その他の準備書面をも提出しない。
三、理 由
先ず被告高橋茂義に対する原告の請求について考えてみると被告等夫婦が原告から原告主張の日に金二万円を原告主張の約定で貸與を受けたことは当事者間に争がない。普通に夫婦が同居して共同生活を営み單一生活共同体を構成している以上この夫婦が他人から金員の貸與を受けた場合には、特に別段の事情がない限り夫婦共に貸主に対しその全額支拂の責任を負担する黙示の連帶の特約が成立しているものと認めるのが相当である(夫婦間の内部関係において連帶債務の負担部分の割合は事情によつて異なるであろうが通常は夫の負担部分が全部であり妻のそれが零である場合が多いであろう)。被告等は夫婦として被告両名連名で原告から前記貸金の貸與を受けたのであるから特段の事情の認められない本件金員貸借に当つては黙示の連帶の特約が成立しているものと認めるのが相当である。被告茂義は原告と被告等との間には本件貸金の弁済方法に関して分割弁済の特約が成立しているからこの特約を無視して一時に全額の支拂を求めるのは失当であり、又右分割金の弁済は取立債務の約定であるにもかゝわらず原告においてその取立を怠つているのであるから被告等には何等履行遅滞の責任はないと抗弁するけれども、同被告はこの点について全然立証しないから右抗弁を認めることはできない(もつとも同被告において陳述したものとみなされた答弁書末尾には答弁書記載事実の立証方法として被告高橋ゆきゑ本人を指示しているけれども証拠申出に要する印紙の貼用もないから、これを以て適法な証拠の申出とは認め難く従つて同被告主張の抗弁事実に関する唯一の証拠方法を採用しなかつたことにもならない)そして同被告が原告に対し昭和二十四年六月以降の遅延利息の支拂をしていないことは同被告の明かに爭わないところである。そうすると同被告は被告ゆきゑと連帶して前記貸金元金二万円及びこれに対する本件支拂命令送達の日の翌日である昭和二十五年一月十三日以降右約定利率を利息制限法所定の範囲に引直した年一割の割合による遅延利息を支拂うべき義務があること明白であつてその支拂を求める原告の本訴は正当として認容しなければならない。
次に被告高橋ゆきゑは本件口頭弁論期日に出頭せずかつ答弁書その他の準備書面をも提出しないので原告主張の請求原因事実は全部自白したものとみなしかつ右事実に基く原告の本訴請求は正当として認容すべきである。
よつて訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九條、第九十三條第一項後段、仮執行の宣言について同法第百九十六條を各適用して主文の通り判決する。
(裁判官 相賀照之)