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大阪地方裁判所 昭和25年(ワ)2113号の12 判決 1963年7月02日

原告 田口タカ 外三名

補助参加人 大阪市平野土地区画整理組合

被告 国

国代理人 堀川嘉夫

主文

一、本訴中売渡処分による第三者の所有権取得登記の末消を求める部分は却下する。

二、原告その余の請求はこれを棄却する。

三、訴訟費用は原告の負担とする。

事  実 <省略>

理由

(本案前の判断)

一、被告の本案前の抗弁について

仮に被告主張のとおり、原告田口、同野口の別紙第一、第二物件表記載の土地の譲受けがいずれも昭和二一年一一月で、右所有権の移転に知事の認可ないし許可を得ていないとしても右各土地の本件買収処分が同原告を所有者としてこれに対して行われたことが当事者間に争いがないから、同原告らは右土地の本件買収処分の無効確認を求め、又これが所有権確認等を求めるにつき法律上の利益を有するものとして原告適格があることは明らかである。

二、政府売渡の登記の抹消請求について

登記抹消請求の訴における被告適格者はその登記の登記名義人である。売渡処分による第三者の所有権取得登記の抹消請求はその第三者を相手方とすべく、被告国は当事者適格がないから、右訴は不適法である。

(本案についての判断)

一、原告主張一の事実は当事者間に争いがない。

二、原告主張二の(1) 、(2) について

行政処分の無効を主張する者は、その処分に重大かつ明白なかしがあることを具体的事実に基づいて主張しなければならないのであるが(最高裁判所第三小法廷昭和三四年九月二二日判決、民集第一三巻第一一号一四二六頁参照)、原告が違法であると主張する二の(1) (2) の各事実は未だ抽象的で具体性に乏しく、このような事実では右処分を無効とするに足らない。

三、原告主張二の(3) について

自創法第五条第四号の知事の指定は自由裁量行為であるから、同号の指定のない以上、これを買収することは違法ではない。(昭和二八年二月二〇日最高裁判所第二小法廷判決、民集七巻二号一八〇頁参照)

四、原告主張二の(4) について

原告所有の土地が平野土地区画整理組合地区内の土地で同組合より仮換地の指定があつたことは当事者間に争いがない。

本件買収計画、買収処分当時の都市計画法による区画整理は耕地整理法を準用してなされたのであるが(当時施行中の都市計画法第一二条第二項)、耕地整理法にはその後にできた土地区画整理法に規定するような仮換地に関する規定はないが、耕地整理法施行規則第九条第一〇号により組合の規定に換地処分認可の告示前の土地使用に関する規定を設けることが定められ、組合はこれに基づき換地処分前の土地使用に関する指定がなされていた。しかし耕地整理法第一七条第一項により、換地処分の認可があつて始めて従前の土地に存した権利は換地に移行するのであつで、仮換地の指定によつては、所有権は仮換地に移行するのではない。ただ仮換地の指定があると従前の土地に対する使用収益が禁止され、仮換地について同一内容の使用収益が許されることになる。(耕地整理法には仮換地の指定の効果についてはなんら規定がないが、現行の土地区画整理法におけると同様に解されていた。)仮換地の指定があると右のとおり所有権の主要な内容をなす使用収益権は従前の土地については禁止され、同一内容の使用収益権が仮換地上に認められることになるのではあるけれども、未だ所有権そのものが仮換地に移行するのではない。農地かどうか、小作地かどうかという買収要件の検討は使用収益の禁止された従前の土地についてではなく、現に使用収益がなされている仮換地についてなすべきではあるが、買収するのは所有権でありその所有権はなお、従前の土地に存するのであるから、旧地番、地積を表示してなされた本件買収計画、買収処分になんらの違法の点はない。

(結論)

前記のとおり、原告の本訴中売渡処分による第三者の所有権取得登記の抹消を求める部分は不適法であるから却下し、その余の請求は理由がないので棄却する。訴訟費用は民事訴訟法第八九条により原告の負担とする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 前田覚郎 中村三郎 野佃殷稔)

第一ないし第三物件表<省略>

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