大判例

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大阪地方裁判所 昭和25年(ワ)966号 判決

原告 樋口亀吉

被告 村瀬木材株式会社

一、主  文

被告は原告に対し金十八万九千八百八円及びこれに対する昭和二十五年三月二十二日以降支拂ずみに至るまで年六分の割合による金員を支拂うべし。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決は原告が金五万円の担保を供するときは仮執行ができる。

二、事  実

原告訴訟代理人は主文第一、第二項と同旨の判決並に仮執行の宣言を求め、請求の原因として、

訴外阪南工業株式会社は昭和二十四年十二月十四日被告に宛て金額十八万九千八百八円、支拂期日二十五年三月二十日、支拂地振出地共に堺市、支拂場所株式会社大和銀行堺北支店なる約束手形一通を振出交付し、被告は同日原告に対し支拂拒絶証書の作成を免除して白地裏書により右手形を讓渡した。そこで原告は株式会社三和銀行大正橋支店に取立委任のため白地裏書により右手形を讓渡し同銀行において昭和二十五年三月二十二日右支拂場所で右手形を呈示して支拂を求めたけれども、支拂を拒絶せられたので、原告は同銀行より右手形の返戻をうけた。よつて裏書人たる被告に対し右手形金及びこれに対する右呈示の日以降支拂ずみに至るまで年六分の法定利息の支拂を求めるものであると述べ、なお被告の主張に対し右手形の被告裏書欄には「支拂拒絶証書作成ノ義務ヲ免除ス」との印刷文言の下に裏書人の捺印があり、すぐその左側に裏書人の記名捺印があるから、被告は裏書人として原告に対し支拂拒絶証書の作成を免除したものと解すべきであると附陳した。<立証省略>

被告訴訟代理人は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、答弁として、原告主張事実のうち、被告が支拂拒絶証書の作成を免除したとの点を除きその他の事実はすべて認めるが、支拂拒絶証書の作成を免除した事実は否認する。すなわち、支拂拒絶証書作成の免除は手形法第四十六條第一項の規定によれば、「裏書人ハ証券ニ記載シ且署名シタル拒絶証書不要ノ文句其ノ他之ト同一ノ意義ヲ有スル文言ニ依リ」なすを要するところ、本件手形の被告裏書欄には「支拂拒絶証書作成ノ義務ヲ免除ス」との印刷文言があるだけでその下に被告の署名又は記名捺印なく法定の要件を欠缺しているから、拒絶証書作成免除の効力を生じないものというべく、從つて拒絶証書を作成しなかつた原告は被告に対し償還請求権を有しないと述べた。<立証省略>

三、理  由

原告主張の請求原因事実中被告が裏書に際して支拂拒絶証書の作成を免除したとの点を除きその他の事実は、すべて当事者間に爭がない。

そこで本件で唯一の爭点である、被告が裏書に際して支拂拒絶証書の作成を免除したかどうかの事実につき考察する。手形法第七十七條第一項により約束手形に準用される同法第四十六條第一項の規定によれば、裏書人が支拂拒絶証書の作成を免除するには「証券ニ記載シ且署名シタル拒絶証書不要ノ文句其ノ他之ト同一ノ意義ヲ有スル文言ニ依リ」なすことを要するが、かかる署名を必要とする所以は免除の事実の有無及び何人により免除されたかを明かにするためであるから、裏書人が免除するには裏書人の裏書署名によつておおわるべき場所に免除の記載ある限り裏書署名の外に更に免除の記載部分に署名する必要はないと解するのが相当である。ところで本件において成立に爭のない甲第一号証によれば、被告の裏書欄には「支拂拒絶証書作成ノ義務ヲ免除ス」との印刷文言があり(この点は爭がない)、その下方に裏書人の捺印があるばかりでなく、すぐその左側下方に裏書人の記名捺印がなされていることが明かであつて、右事実に徴するときは、右印刷文言は裏書人の記名捺印によつておおわるべき場所に記載されているものということができるから、右印刷文言につき特に裏書人の署名又は記名がなくても、被告は裏書に際して支拂拒絶証書の作成を免除したものと認定できる。以上と異る被告の見解は当裁判所の採用しないところである。

從つて、被告は原告に対し裏書人として右手形金十八万九千八百八円及びこれに対する呈示の日である昭和二十五年三月二十二日以降支拂ずみに至るまで年六分の法定利息の償還請求に應ずべき義務がある。よつて原告の本訴請求は正当として認容し、訟訴費用の負担につき民事訴訟法第八十九條、仮執行の宣言につき同法第百九十六條を適用し、主文の通り判決する。

(裁判官 木下忠良)

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