大判例

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大阪地方裁判所 昭和27年(ワ)380号 判決

原告 内田甚作

被告 椎名英治

一、主  文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は、被告は原告に対し金二十万円及びこれに対する昭和二十七年一月一日より完済迄年六分の割合による金員を支払うべし。訴訟費用は被告の負担とするとの判決と仮執行の宣言を求め、その請求原因として原告は昭和二十六年十二月十七日頃振出人訴外三幸機械株式会社、振出日昭和二十六年十二月六日、金額二十万円、満期同年十二月三十一日、支払場所株式会社第一銀行堂島支店、支払地振出地共大阪市、受取人及び裏書人被告なる白地式裏書あり、拒絶証書作成義務を免除した約束手形一通を訴外内田貞雄より引渡により取得し現にその正当な所持人である。原告は昭和二十六年十二月二十五日訴外株式会社大和銀行泉大津支店に前記手形の取立を委任し、同銀行は右委任に基き同日白地裏書空白部分に「取立委任候に付、株式会社大和銀行泉大津支店なる取立委任文言並びに受任者の商号」及び「昭和二十六年十二月二十五日」なる日付を補充し右手形の支払呈示の為め同月三十一日手形交換に付したところ、昭和二十七年一月四日支払銀行第一銀行堂島支店は「……支払人の来所なく、且つ貴方御依頼なので……」との理由で支払を拒絶した。そこで大和銀行泉大津支店は前記取立委任文言並びに自己の被裏書人名義を抹消した上前記手形を原告に引渡し、取立委任を解除した。よつて被告に対し右手形金二十万円及びこれに対する満期の翌日たる昭和二十七年一月一日より支払済迄商法所定の年五分の割合による損害金の支払を求めるため本訴に及んだと陳述した。<立証省略>

被告訴訟代理人は主文第一項同旨の判決を求め、答弁として原告主張の如き手形の裏書欄に記名捺印したことは認めるが、被告は本件手形について何等の対価を取得していないから原告の本訴請求に応ずることができないと陳述した。<立証省略>

三、理  由

原告は本訴において手形所持人としてその前者(裏書人)たる被告に対し手形金の償還を求めるものであること原告の主張に照らし明かである。そして手形所持人がその前者たる裏書人に対し償還請求権を行使するには法定期間内に適法なる支払呈示を為したることを要するものであるところ、原告は昭和二十六年十二月十七日頃訴外内田貞雄より被告の白地式裏書ある本件手形を引渡により取得し、その所持人となつたので同月二十五日訴外株式会社大和銀行泉大津支店に右手形の取立を委任し同日同銀行は被告の白地裏書欄の空白部分に「取立委任候に付、株式会社大和銀行泉大津支店」なる取立委任文言及び「昭和二十六年十二月二十五日」なる日附を補充し、同月三十一日手形交換に附したと主張するので、斯の如き記載ある裏書に基く訴外銀行の支払呈示が被告に対する償還請求権保全の要件としての原告の支払呈示として有効なりや否やについて按ずると、支払呈示を為す約束手形の所持人が何人なりやは振出人の利害に関係あること勿論であつて、延いて償還義務者たる裏書人の利害にも関係なしと謂うことを得ず、しかも支払呈示の際手形所持人が何人なりやは手形面上の記載によつてこれを知るの外なきことを通常とするから、白地裏書によつて手形を取得した所持人が取立を委任する場合には自己名義をもつて取立委任裏書を為すことを要し、その前者の白地裏書を利用し、前者名義をもつて為すことを得ざるものと解すべく、従つて本件の如く訴外銀行が原告名義の取立委任裏書を受くることなく、前者たる被告の白地裏書の空白部分に取立委任の文言及び訴外銀行の商号を補充して為したる支払呈示は被告に対する償還請求権保全の要件たる原告の支払呈示として適法有効なるものとは認め難い。従つて本件手形は法定の期間内に適法なる支払呈示なかりしことに帰し、原告はその前者(裏書人)たる被告に対する償還請求権を喪失したものと謂わなければならない。

然らば原告の本訴請求は爾余の点につき判断を為す迄もなく失当なること明かであるから、これを棄却すべきものとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条を適用し主文の通り判決する。

(裁判官 岩口守夫)

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