大判例

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大阪地方裁判所 昭和27年(ワ)4771号 判決

協和銀行

まず被告協和銀行の本案前の主張(再訴で不適法、既判力にふれる)について判断するに、原告が大阪地裁に被告銀行を相手方として原告主張の預金通帳記載の預金の払戻請求訴訟を提起し、原告が敗訴しその判決が確定したことは原告の争わないところであるが、右請求は預金払戻請求債権の存在を主張するものであり、本訴は昭和二四年四月二八日原被告間に成立した寄託契約に基ずき、寄託物である預金通帳の返還請求債権の存在を主張するもので、かれこれ訴訟上の請求は同一ではないから、本訴は民訴第二三一条に牴触しないばかりでなく、前訴の判決の既判力によつてもなんら影響がないので被告の右主張は理由がない。

次に本案について判断するに、証拠によると、Kは昭和二四年一月二七日頃原告に対し被告銀行に無記名式の定期預金をするように勧誘しその承諾を得たので同月二八日Mと原告を伴つて被告銀行鴫野支店に行き、原告を前に待たせMと二人で同支店内に入り、自ら左浦吉男(虚無人)と称して同支店長Hに面接し、自己が同銀行に無記名定期預金をなす旨告げ「自分はMに金員を貸すことになつているが個人間では確実に返済を受けることが困難であるから、被告銀行に預金をなし、これを担保として金員の貸与を受けそれをMに貸与することにしたい。預入の金は程なく使者が持参するから手配をして貰いたい」と申し入れ、その承諾を得たので、同支店前に待たせていた原告を招き入れ、原告所持の大和銀行振出の金額二〇万円の小切手一通を同支店長Hに交付させ、これを受領したHは係員に左浦吉男を預金者として金額二〇万円満期同年四月二八日宛名無記名殿とした定期預金通帳を作成させ、これをKに交付し、原告がKからこれを受け取つて同支店を立ち去つたのち、Kは同支店長Hに対し右預金を担保に金員の貸与方を求め、その際Hから差入を求められた預金通帳は後刻必ず持参すると言葉巧みに申し向け、これを信用した同支店長は後日必ず右通帳の差入があるものと考え、左浦吉男名義の担保品差入証を徴しKに金一九万円を貸与したこと、KはHに対しては原告を恰も自己の使者のように扱つていたので、Hとしては被告銀行に対する預金者左浦吉男、すなわちKであるとして同人との間に預金契約をしたもので当時原告が預金者であることは考だに及ばなかつたこと、その後Kが預金通帳の差入をしないので調べたところ、同年四月頃になつて初めて右預金は原告から出たもので、預金通帳も原告が所持しており、原告としては右預金を担保に金員を借り受けることを承諾していないことが判明したこと、預金の満期日である同年四月二八日被告銀行鴫野支店でH、K、原告らが話合つた結果、被告銀行とKの間では預金と貸付金を相殺し、預金残額一万円と利息をKに交付し、これがため原告の被る損害については原告とKとの関係では話合がつかなかつたこと、しかし被告銀行において預金を担保に金員を貸与するときは必ず預金通帳の差入をうけることとなつているのに、Kの言を信じたのとKから金員の貸与をうけるMが自己の親戚である関係上、預金通帳の差入を受けないで貸付をした被告銀行鴫野支店長Hとしてはその責任上預金通帳を入手する必要があり、而も預金の満期当日被告銀行本店から検査員が調査に来ていて、預金通帳を示す必要に迫られていたので、同支店長Hは原告に対し一両日中に返還する約定の下に右預金通帳の寄託方を懇請し、預り書と引換えに右預金通帳の寄託を受けたものであることが認められる。したがつて右寄託契約に基ずき被告は原告に対し本件預金通帳の返還をなすべき義務がある。被告は右預金通帳は既に廃棄処分に対し預金通帳として存在しないと主張するが、廃棄処分が被告主張の如く通帳にPAIDと打ち抜き、預金残高欄に消印を押捺するだけに止まる以上、通帳そのものの存在は失われていないので、これが返還請求の妨とならないから、右主張を以ては原告の請求を阻止するに足らない。

なお被告その余の主張(預金通帳は預金者に預金受入の証拠として交付する証拠証券であつて、本件預金はKがなしKに本件預金通帳を交付したもので、右預金通帳はKの所有で、預金当事者でない原告からの請求は失当であり、被告銀行はKに対する貸金債権と右預金払戻債権とを差引計算し預金残額一万円と利息をKに交付し被告の預金払戻債務は消滅したから、右預金に対する証拠証券として発行された預金通帳の所有権を被告において回収したもので返還すべきものでない)について考えるに、原告の請求は特定物の寄託契約に基ずきこれが返還義務の履行を求めるもので、原告が右預金の預金者として、或いは預金通帳の所有者としてその返還を求めるのではないから被告の右主張はいずれもその理由がない。

そうすると前記寄託契約に基ずき被告に対し本件預金通帳の返還を求める原告の請求は正当であるとしてこれを認容した。

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