大判例

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大阪地方裁判所 昭和28年(ワ)1832号 判決

原告 島岡金蔵

被告 太田伊三郎 外一名

一、主  文

被告橋本已一は被告太田伊三郎に対し別紙目録<省略>記載の家屋につき所有権移転登記手続をしなければならない。

原告の被告橋本已一に対する其の余の請求を棄却する。

原告の太田伊三郎に対する訴を却下する。

訴訟費用中原告と被告橋本已一との間に生じた分は同被告の負担原告と被告太田伊三郎との間に生じた分は原告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は、被告橋本已一は別紙目録記載の建物の保存登記手続をしなければならない。被告橋本已一は被告太田伊三郎に対し右建物につき所有権移転登記手続をしなければならない。被告太田伊三郎は原告に対し右建物につき所有権移転登記手続をしなければならない。訴訟費用は被告等の負担とする旨の判決並びに仮執行の宣言を求め、其の請求の原因として別紙目録記載の建物は元被告橋本已一の所有であつて未登記建物であるところ被告太田伊三郎は昭和二十三年七月三日被告橋本より買受け其の所有権を取得した。原告は同年八月十日被告太田より右建物を代金一万円で買受け、右代金全額を支払い其の所有権を取得し其の引渡を受けた。右建物は未登記であるから被告橋本は被告太田に対し自己に所有権保存登記手続を了した上被告太田に其の所有権移転登記手続を同年七月末日限りすることを約し、被告太田は原告に対し同年十月末日限り右建物の所有権移転登記手続をすることを約した。しかるに被告等は右各登記手続をしないので、原告は民法第四百二十三条に依り被告太田に代位して被告橋本に対し右建物の保存登記手続並びに被告太田に対し所有権移転登記手続をなすことを求めると共に被告太田に対し右売買契約により原告に右建物の所有権移転登記手続をすることを求めるため本訴に及ぶと陳述した。

被告太田伊三郎は原告の請求を棄却する旨の判決を求め答弁として原告主張事実は全部争わないけれども目下手許不如意であるから原告の請求に応ずることができないと述べた。

被告橋本已一訴訟代理人は原告の請求を棄却する訴訟費用は原告の負担とする旨の判決を求め答弁として原告主張の建物が未登記であること被告が原告主張の日時右建物を被告太田伊三郎に売却したことは認めるも其の余の事実は不知と陳述した。

三、理  由

被告太田伊三郎が昭和二十三年七月三日被告橋本已一より原告主張の未登記家屋一戸を買受け、被告橋本が右家屋を被告太田に引渡し且つ保存登記を経由した上同月末日限り所有権移転登記手続をする旨約したことは原告と被告橋本との間に争がなく、被告太田が同年八月十日右未登記建物を原告に対し代金一万円で売渡し原告より右代金の支払を受け原告に対し同年十月末日限り右建物の所有権移転登記手続をすることを約したこと及び原告が被告太田より右建物の引渡を受けたことは原告と被告太田伊三郎との間に争がなく、原告と被告橋本との間において弁論の全趣旨に依り被告橋本の明かに争わないことが看取できる。従つて被告橋本の被告太田に対する右売買契約による目的建物の所有権移転登記がなされていない以上、原告は被告太田との間の右建物売買契約により被告太田に対して有する所有権移転登記手続請求権を保全するため、被告太田の被告橋本に対する右建物の所有権移転登記手続を裁判上代位行使できるものというべきであるから、原告の被告橋本に対し同被告が被告太田に対し右所有権移転登記手続をすることを求める本訴請求は正当である。原告は更に被告太田を代位して被告橋本に対し、同被告が自己に右建物の保存登記手続をすることを請求するけれども、かような保存行為は買主被告太田が売主被告橋本に代位してなし得る右代位権を被告太田より右建物を買受けた債権者原告が更に代位して裁判外において任意なし得るものと解すべきであつて、原告は裁判上代位権を行使すべき利益を有しないものと解するから、原告が被告太田に代位して被告橋本に対し自己に右建物の保存登記手続をすることを求める部分は失当といわねばならない。次に原告の被告太田に対する本訴請求につき按ずるに、原告は本件建物につき被告橋本より被告太田に対し所有権移転登記手続がなされたとき被告太田が原告に対し右建物の所有権移転登記手続を求めるのであつて、此の点において原告の被告太田に対する本訴請求は将来の給付を求める訴と同一視すべきものであるところ本件建物が既に原告に引渡され被告において何時でも任意に登記手続に協力すべき意思あることが、本件口頭弁論の全趣旨により明かであるから原告において予め給付を求める利益を有しないものと解すべきで、およそ民事上の訴は給付の訴でもすべて判決を以て私法上の権利関係の確定を求めることにより、権利保護を受けることの必要ある場合に限り許さるべきであつて、単に原被告双方間の税負担等の考慮のために裁判所に給付判決を求めることは到底許されないものと解するのを相当とするから、原告の被告太田に対する本訴は権利保護の利益を欠く不適法あるものとして却下する。なお原告は被告橋本に対し登記手続の意思表示を求める非財産上の請求につき仮執行の宣言を求めているが許さるべきでないことも民事訴訟法第百九十六条第一項により明かである。よつて同法第九十二条但書第八十九条に則り、主文の通り判決する。

(裁判官 南新一)

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