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大阪地方裁判所 昭和28年(ワ)2926号 判決

原告 国

被告 阪和興業株式会社 外一名

一、主  文

別紙目録<省略>記載の物件は原告の所有であることを確認する。

被告両名は原告に対し前記物件を引渡せ。

被告阪和興業株式会社(以下被告阪和と略称する。)は原告に対し昭和二十八年七月十九日から前項物件引渡済に至る迄一箇月につき金二十一万千四百五十円の割合による金員を支払え。

原告のその余の請求につき訴を却下する。

訴訟費用はその二十分の一を原告の負担とし、その余を被告阪和の負担とする。

被告阪和に対しては金五十万円の担保を供するときは第二、三項について、被告日通に対しては金四十万円の担保を供するときは第二項について、いずれも仮に執行することができる。

二、事  実

原告訴訟代理人は主文第一乃至第三項同旨及び被告阪和は原告に対し金十三万一千二百四十二円及びこれに対する昭和二十八年七月十九日から完済に至る迄年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告等の負担とするとの判決並びに仮執行の宣言を求め、

被告阪和に対する請求原因として、別紙目録記載の物件(以下本訴物件と略称する)は普通国有財産でいわゆる賠償指定物件として旧連合国軍から指定を受けていたものであるが、昭和二十五年九月訴外株式会社高木製罐所(以下訴外高木と略称する。)から本訴物件の一時使用認可の申請があつたので、原告は昭和二十七年四月二十五日同訴外人に対し、使用場所大阪市西淀川区大和田町一、五〇五番地同社大和田工場、使用目的ドラム罐其の他製造、使用期間昭和二十七年四月二十五日から同年十月二十七日まで、使用料一ケ年につき金二十一万一千四百五十円、使用料は国の発行する納入告知書に示す納付期日までに所定の場所に納付すること、使用者は使用の場所及び目的を変更し又は使用に関する権利を他に譲渡し若しくは転貸してはならない等の条件で、本訴物件の一時使用を認可し、同年九月十一日頃これを同訴外人に引渡した。ところが訴外高木は被告阪和に対する債務金二百五十万円の担保のため、昭和二十八年二月四日原告に無断で右物件に譲渡担保を設定し、同日その旨の公正証書が作成され、被告阪和は同年三月末頃右訴外人不知の間に右物件をその保管場所から勝手に搬出し隠匿していたが、同年四月四日以降被告日本通運株式会社(以下被告日通と略称する。)にこれを寄託し、被告日通は被告阪和のため本訴物件を保管するに至つた。そこで原告は被告阪和に対しその引渡を求めたが、被告は右物件に対する原告の所有権を争いその引渡をしない。尚被告阪和は本件物件を他に処分し物件の所在場所を変動する等の模様があつたので、原告は右物件上の権利を保全する必要に迫られ、被告両名に対し動産仮処分命令の申請をし、同年五月二十二日執行吏保管、譲渡占有の移転其の他一切の処分禁止の仮処分決定(当庁昭和二十八年(ヨ)第一、二三七号)を得、同月二十六日仮処分命令は執行されたが、その執行の必要上当該受任執行吏は同年七月六日被告日通の倉庫から右物件を大阪市東区杉山町所在近畿財務局倉庫に移動し保管替の方法を採つた。このため原告は本訴物件保管料金八万二千二百四十二円(昭和二十八年四月四日から同年七月四日に至る間一ケ月につき金二万一千三百二十九円の割合)と同運送費其の他諸掛金四万九千円合計十三万一千二百四十二円の金員を支出した。この金員は被告阪和が原告の本訴物件に対する所有権を侵害したことに因り原告の蒙つた損害である。更に原告は被告阪和の右侵害行為に因り本訴物件の使用料収益権を侵害せられたゝめ一ケ年につき金二十一万一千四百五十円の割合による使用料相当額の損害を蒙つた。

被告日通に対する請求の原因として、前記の如く本訴物件は原告の所有であるところ、被告日通は被告阪和との間の寄託契約に基き昭和二十八年四月四日以降右物件を保管しているので、原告はその引渡を求めたが、同被告は原告の所有権を争い引渡をしない。よつて原告は本訴物件が原告の所有であることの確認及び被告両名に対し所有権に基き右物件の引渡を求め、被告阪和に対し仮処分に要した費用金十三万一千二百四十二円とこれに対する訴状送達の翌日である昭和二十八年七月十九日から完済に至る迄民事法定利率年五分の割合による遅延損害金及び同日から右物件引渡済に至る迄年二十一万一千四百五十円の割合による賃料相当額の遅延損害金の支払を求めるため本訴に及んだと陳述し、

被告阪和の抗弁事実を否認し、被告阪和の本件物件に対する占有は悪意又は過失により、強暴隠秘になされたものである。即ち昭和二十八年一月末頃被告阪和はその使用人訴外後藤某を訴外高木方に派し、訴外高木代表者高木勘十郎及び訴外稲持某に面接せしめ、本訴物件に譲渡担保を設定し、其の旨の公正証書を作成されたき旨申入れた。この申入に対し訴外高木勘十郎は右物件が国有財産であることを告げ右申入を拒絶した。ところが前記訴外後藤某は「仮令公正証書を作成しても本訴物件を持ち帰る等のことをするものでなく、たゞ気休のものとして作成するものであるから」と言明したから、遂に同年二月四日原告に無断で訴外高木は大阪法務局所属公証人利光晟役場において、前記公正証書が作成されたのであり、被告阪和はその当時本訴物件が原告の所有に属し訴外高木は何等処分権限を有していないことを十分知悉していたものである。若し仮にそうでないとしても本訴物件はいわゆる賠償指定物件として旧連合国軍から指定を受けていた関係上、物件個々に明瞭に賠償指定物件たることを表示する物件番号(インベントリーナムバー)が付せられ、一見して普通市場に流布する物資でないことが容易に認められる特殊の物件であるから、右物件につき訴外高木に所有権その他の処分権ありと誤信したことは過失に基くものである。更に同年三月中頃被告阪和は訴外高木を被告として本訴物件の引渡請求訴訟を神戸地方裁判所尼ケ崎支部に提起し(昭和二十八年(ワ)第七〇号)目下係属中であるが同年三月末頃同被告は前記訴訟の帰趨が不明なる時期に拘らず、訴外高木の不知の間に実力を行使し、強暴隠秘に右物件を其の所在場所から移転し、右物件を事実上所持するに至つたものであるから即時取得は成立しないと主張した。<立証省略>

被告両名各訴訟代理人は夫々原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め、答弁として、

原告の主張事実中訴外高木が原告主張の日以降本訴物件を占有していた事実、同訴外人が被告阪和に対し右物件につき譲渡担保を設定し原告主張の日その旨の公正証書が作成された事実、同被告が訴外高木に対し原告主張の頃その主張通りの訴訟を提起した事実、その後同被告は右物件につき現実の占有を取得し、更に同被告と被告日通との間の寄託契約に基き原告主張の日以降被告日通が被告阪和のためにこれを保管するに至つた事実及び原告主張の日にその主張通りの仮処分を受けた事実は認めるが、本訴物件が原告の所有に係るものであつて、原告主張の如き特殊の物件であつた事実及び原告と訴外高木間に原告主張の如き賃貸借関係のあつた事実は不知、その余の事実はこれを争うと答え、

抗弁として被告阪和は本訴物件が訴外高木の所有に係るものと信じて譲り受けたものであるが、仮にしからずして原告の所有物であつたとしても、被告阪和が本訴物件を訴外高木より譲受けた時期は昭和二十八年二月三日であるが、右譲受は現実の占有移転により平穏公然且つ善意無過失になされたものであるから、被告阪和は右物件の所有権を即時取得したものである。即ち右物件を同訴外人から譲受けた時期は譲渡担保の公正証書作成の前日であるが、当時右物件は大阪市西淀川区大和田町一、五〇五番地訴外トキワ容器工業株式会社倉庫に保管されており、譲渡担保の公正証書を作成するに当つて現実に右物件の引渡を受けるべく、同日被告阪和より同社員寺田俊三及び同後藤貴久三の両名が右倉庫に赴き、同所において訴外高木代表者高木勘十郎立会の下に同訴外人より現実に右物件の占有の移転を受けたものである。その際右物件は梱包されたまゝで訴外高木が之を使用していたものではなかつたが、右物件は相当大きな機械であつて簡単に運搬することができなかつたので、取敢えず現実に占有移転を受けたことを証するため右物件の目録に代るものとして本訴物件価格見積書、機械内容を証する書類一册を訴外高木より受取つたものであり、之は社会観念上まさに実力的支配の移転があつたものとなし得る。而も本訴物件は訴外高木が被告阪和より購入した薄鉄板等の代金支払のために振出した約束手形の書替のため担保に供したものであるが、当時訴外高木勘十郎が右物件を国有財産であると説明したことは全くない。若しそのような説明があれば被告阪和としてはそのような物を担保にとつてまで手形を書替える必要はない訳であり、当然手形の書替を拒絶した筈であり、それが通常商取引における常識である。又本訴物件は賠償指定物件であることを表示するためインベントリーナムバーが付せられているから一見して特殊の物件であることが分る筈であると原告は主張するが、インベントリーナムバー自体相当な専門家を除いては何の意味か全く理解出来ない程の符号をもつてつけられていること及び通常梱包の機械類には中味の標識が色々な符号でつけられていること等を考え合せれば、前記寺田俊三、後藤貴久三が此の符号に気がつかなかつたとしても之をもつて過失ありとはなし難い。

若し仮に右の占有移転が現実の占有移転ではなく占有改定による引渡であるとするも、占有改定による引渡の場合も民法第百九十二条に所謂即時取得の要件を満すものである。即ち同条は動産の占有に公信力を認めたものであり、動産の引渡に占有改定を除外すべき何等の根拠なく、若し之を除外すれば譲渡担保権者は非常な不安に陥り不合理な結果を生ずるに至るのである。

若し仮に右の主張が認められないとしても、被告阪和が同年四月初本訴物件を当初の保管場所たる訴外トキワ容器工業株式会社倉庫より搬出して現実の占有を取得した時においても平隠公然且つ善意無過失であつたからその時に右物件の所有権を即時取得したものである。即ち現実に右物件を右倉庫より搬出する際は、当時訴外高木の経理係であり譲渡担保設定に関し当初より同訴外人の代理人として一切の交渉の任に当つていた訴外北島孫七立会の上白昼堂々とトラツクで運搬し、之に対し右訴外高木より何の異議もなかつたものである。尤も引取の当時訴外高木より右物件は原告より払下を受けたものであり代金の一部が未払であること及び残代金を払つてくれゝば何時でも引渡す旨の交渉を受けたことはあるが、払下を受けている以上たとい残代金があつても所有権は当然払下を受けた訴外高木にあるので之を引取つたのであつて、平隠公然且つ善意無過失に現実の引渡を受けたものである。

以上何れの主張をもつてするも被告阪和は即時取得により、本訴物件の所有権を取得しており、原告の本訴請求は失当であると主張した。<立証省略>

被告日通訴訟代理人は、原告の主張事実中被告日通が被告阪和との間の寄託契約に基き原告主張の日以降本訴物件を保管している事実は認めるが、その余の事実は不知である。被告日通は倉庫営業者であるから被告阪和より物品の倉庫保管の委託があり、之に応じて保管したのは当然の業務の執行であつて、その保管品について仮に真の所有者が他に存在していたとしても被告は其の所有権を侵害する意思もなければ又不法に其の物品を占有するものでもない。原告が真の所有者であると主張するならば、原告は法律の規定に従い本訴物件につき被告日通に対して有する被告阪和の返還請求権の転付を受けた上でこれが返還を被告日通に請求すべきであり、原告が右物件につき直接被告日通に対し返還請求権あることを前提とする本訴請求は失当であると述べた。<立証省略>

三、理  由

一、被告阪和関係

訴外高木が、被告阪和に対し、金二百五十万円の債務担保のために、同訴外人占有中に係る本訴物件を譲渡し、その後被告阪和は右物件につき現実の占有を開始して、原告主張の仮処分執行当時被告日通にこれを寄託していたことは当事者間に争いがないから右譲渡当時本訴物件の所有者が何人であつたかを判断することとする。

証人五林与三郎、高木勘十郎、威枉夫の各証言並に右五林の証言により成立を認めることができる甲第一号証の一乃至三、同第六号証の一乃至四、右高木の証言により成立を認めることができる同第四号証を合せて考えると本訴物件は元岩国陸軍燃料廠で施設せられていた製罐用機械であつて普通国有財産に属し、旧連合国軍最高司令官から、賠償予定物件として指定せられた、いわゆる賠償指定施設であつて、各機械には各所にそのことを示すためインベントリーナンバーと称する特異な番号が白ペンキで記入せられていたこと、訴外高木から昭和二十五年九月二十六日付で本訴物件の一時使用認可の申請があり、中国財務局長は昭和二十七年四月二十五日付で原告主張の如き内容の一時使用の認可をし、同年九月十一日頃これを訴外高木に引渡したこと、訴外高木は同年七月一日付で本訴物件の払下許可申請をし、中国財務局から、同年十二月下旬頃、払下金額を二百六十四万四千九百円とし、昭和二十八年一月十日迄に契約保証金百十万円を納入するときは、払下契約をする旨の通知を受けたが、訴外高木に於て、右期限迄に契約保証金の調達ができなかつたため、契約を締結するに至らなかつたこと、訴外高木は本訴物件を梱包した儘で、大阪市西淀川区大和田町一、五〇五同訴外会社旧工場附属倉庫内に保管していたが、昭和二十八年二月四日頃前記の如く、これを被告阪和に対し、譲渡担保として提供したことが認められるから、被告阪和が担保として譲り受けた当時、本訴物件は原告の所有に属し、訴外高木は一時使用の認可を受けてこれを占有していたに過ぎないことが明らかである。

そこで即時取得の抗弁の当否を判断しなければならない。原告は訴外高木が、本訴物件を担保として提供するに当り、被告阪和に対し本訴物件が国有財産であることを告げているから、被告阪和は悪意の取得者であると主張し、前記甲第四号証の記載並に証人高木勘十郎の証言中には、これに照応する部分があるけれども、右は証人後藤貴久三、寺田俊三、北島孫七の各証言と対比するときはたやすく信用しがたく、他に被告阪和の悪意を認定するに足る証拠がない。従つて被告阪和は、本訴物件譲受当時、これが原告の所有に属することを知つていたものと断ずることができない。しかしながら、証人威枉夫、後藤貴久三、高木勘十郎の各証言を合せて考えると、昭和二十八年二月上旬頃は、訴外高木の財政状態は非常に窮迫していて、同月十日頃支払停止の状態となり、同年九月上旬頃遂に破産の宣告を受けたこと、被告阪和は昭和二十七年十月頃訴外高木に鉄板四屯を代金二百四十六万円で売り渡し、同月末頃にこれが代金支払の手段として、満期は昭和二十八年一月三十一日、金額は百二十万円の手形と満期は同年二月五日、金額は百二十六万円の手形各一通の交付を受けたこと、ところがその後訴外高木の代表者高木勘十郎より右満期に手形の支払ができないから、一箇月間支払を猶予せられたい旨の申入を受け、交渉の結果相当な担保の提供を受けて、右申入に応ずることになつたが、訴外高木では適当な担保物件が他になかつたので、本訴物件が担保とされることになつたのであるが、その際被告阪和側では社長、専務取締役と共に鉄鋼第二課長後藤貴久三、経理担当社員寺田俊三等が交渉に当つたが、同人等は訴外高木代表者より本訴物件は政府から払下を受けたもので、代金の残額百五十万円が未払になつている旨を告げられたのに拘らず、同代表者の本訴物件が払下を受けて同訴外人のものになつているとの言を信じて、その真偽の調査をせず、単に物件の点検をしたのみで、本訴物件を譲受けたことを認めることができる。右認定の事実によると訴外高木は昭和二十八年二月上旬頃財政状態が非常に窮迫していて、同月十日頃支払停止になつた程であり、このことは被告阪和に於ても当時手形の支払猶予を求められているのであるから、ある程度知り得た筈であり、そのような状態において、二百五十万円の債務の担保能力を有するような物件を梱包した儘で所有していたという点、前記認定の如く梱包された本件物件には白ペンキで特異な番号が記入されていた点及び一般に相当高価な動産類を売買するに当り、代金を分割払とするときは代金完済の上で所有権を移転するの方法によること多く、殊に政府が国有財産の払下をする場合の如きは代金完済迄所有権を留保するの取扱をしていることは一般の常識とされるところであるところ、右認定の如く、訴外高木が本訴物件譲渡に際し、その払下代金の半額以上に相当する百六十万円の代金が未払になつていると言つていた点等から考えると、当時訴外高木が払下により本訴物件の所有権を取得したとの同代表者の言は相当疑わしいところであつて、被告阪和はこれを譲り受けるに際し、訴外高木より払下に関する書類の提示を求め、又は払下担当官庁につきその真偽を照会するときは容易に訴外高木に所有権のないことが判明したるべく、又これが調査をなすことは取引上通常人の払うべき注意とせられるところであるのに拘らず、被告阪和は訴外人の払下により所有権を取得したとの言を軽信して、これが調査を怠り、本訴物件を譲り受け、これが占有を承継取得したものであるから、占有につき過失があつたものといわなければならない。而して占有者が即時取得により所有権を取得するには善意にして無過失なることを要するところ、被告阪和の占有は右の如く過失があるから、同被告の即時取得の抗弁は他の争点に関する判断をする迄もなく失当であつて採用できない。

しからば被告阪和の本訴物件の占有は権原なきものであつて、これにより原告の右物件に対する所有権を侵害しているものであり、前記認定の如く本訴物件は訴外高木に対し一箇年につき金二十一万千四百五十円の使用料で貸与されていたものであるから、特段の事情の認められない本件では、原告は被告の右不法占拠により本訴物件の使用収益権を侵害せられ、右使用料相当の損害を蒙つているものといわなければならない。尚原告は被告阪和に対し仮処分執行の費用として合計金十三万千二百四十二円の支払を求めているが、仮処分の執行費用は民事訴訟法第七百五十六条第七百四十八条第五百五十四条により仮処分命令の執行正本に基いて取立てることができ、又必要に応じて費用額の確定決定を得ることもできるのであつて、しかも法律上右方法による取立のみが許されているものと解されるから、本訴中右請求に関する部分は権利保護の利益を欠き、不適法といわなければならない。

二、被告日通関係

次に原告の被告日通に対する訴につき按ずるに、所有権に基く物件返還請求の相手方はその物件を現に占有する者であれば足りその占有を取得せる原因の如何を問わず又故意過失は因より必要でないのであつて、何等債権上の返還義務を前提とするものではなく又他に執行方法があることも本訴請求の妨げとはならない。而して本訴物件が原告の所有であることは前認定の通りであり、被告日通が被告阪和との間の寄託契約に基き原告主張の日以降右物件を保管している事実は当事者間に争がない。従つて被告日通は本訴物件を占有するにつき所有者たる原告に対抗できる権利を主張立証しない限り、右物件を所有者たる原告に返還しなければならない。

果してそうであるならば、原告が本訴物件につきその所有権の確認を求め、被告両名に対し所有権に基き右物件の引渡を求め、被告阪和に対し同被告が本訴物件の占有開始後であり、本件訴状送達の翌日なる昭和二十八年七月十九日から右引渡に至る迄一箇年につき金二十一万千四百五十円の割合による損害金の支払を求める部分については理由があるからこれを認容し、被告阪和に対するその余の請求の部分は不適法であるから訴を却下することとし訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条第九十二条第九十三条、仮執行の宣言につき同法第百九十六条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 乾久治 前田覚郎 白須賀佳男)

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