大阪地方裁判所 昭和29年(ワ)5695号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決要旨〕建物が隣地との境界線を踰越して建設せられた場合にも原則として民法第二三四条第二項但書の準用があり、故意又は重大な過失なしに建設せられた境界踰越の建物は隣地所有者において遅滞なく異議を述べない限り、原則としてその取除きを請求することはできず、ただ償金の請求を以て甘んずべき認容義務を負担しているものというべきである。
〔判決理由〕そうすると、被告奥田所有の本件物件は同被告所有の五一番地の二、宅地三坪と、原告所有の五二番地の三、宅地二坪八合地上にまたがり存在していることが明らかである。ところで、かくの如く境界線を踰越して建物が建設せられた場合にも、原則として民法第二三四条第二項但書の準用があるものと解するのを相当とすべく、従つて、故意、又は重大な過失なしに建設せられた境界踰越の建物は隣地所有者において遅滞なく異議を述べない限り、原則としてその取除を請求することはできず、ただ償金の請求を以て甘んずべき認容義務を負担しているものというべきであるが、被告奥田の前々主たる訴外増田京一は自己所有の宅地がわずか三坪であるに拘らず、建坪約六坪登記簿上の表示でさえ四坪三合五勺の建物を建設している(この事実は前記甲第四、第五号証と原告本人の供述並びに弁論の全趣旨により明らかである)のであつてこの事実と前記認定の附近の状況を総合すると右建物が境界を踰趣して建設せられるものであることについては故意、又は重大な過失があつたものと解するのを相当とするから、原告は右建物を譲受けた被告奥田に対しても、その取除きを請求しうるものというべきところ、右物件はその構造上五二番地の三地上部分のみを収去することは不可能な状況にあること成立に争のない検乙第一号証と弁論の全趣旨により明らかであるから、原告は被告奥田に対し右物件中鉄骨塔全部及び建物部分中右地上に存在する部分の収去を求めうるものと解するを相当とすべく、従つて、被告奥田が右五二番地の三地上を占有するにつき正権原を有することを他に主張立証しない本件においては、被告奥田は原告に対し右部分を収去して前記五二番の三、宅地二坪八合を明渡す義務があると共に、少くとも、昭和二九年一一月一日以降原告に対し資料相当の損害を与えているものというべきところ、鑑定人荒木久一の鑑定の結果(第一回)によると、その賃料相当額は昭和二九年一一月一日から昭和三一年一〇月末日までは一ケ月坪当り金一、五〇〇円、同年一一月一日から昭和三三年一〇月末日までは一ケ月坪当り金二、五〇〇円、同年一一月一日から昭和三五年一〇月末日までは一ケ月坪当り金二、八〇〇円、同年一一月一日からは一ケ月坪当り金三、二〇〇円であることが認められるから、被告奥田は原告に対し昭和二九年一一月一日以降明渡済に至るまで右割合による賃料相当の損害金を支払う義務があるものといわねばならない。
そして、被告中川が被告奥田から右物件中の建物部分を賃料し、これを占有していることは被告中川において明らかに争わないから自白したものと看做すべきであるから、被告中川は原告に対し、右建物の収去部分から退去する義務があるものといわねばならない。
そうすると、原告の本訴請求は右認定の限度において正当として認容すべく、その余は失当として棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九二条第九三条、仮執行の宣言につき同法第一九六条を適用して主文のとおり判決する。(大野千里)