大阪地方裁判所 昭和31年(ワ)4204号 判決
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〔事実と争点〕一、原告主張
(一) 被告旭油業株式会社は名実ともに原告の個人会社というべきもので、その株式の所有状況などは次のとおりであつた。
(1) 会社設立に際し発行した株式はすべて原告が払込をしたものであり、その内二四〇株を原告名義とし、西尾化工研究所時代からの店員大森昭三、大永信一に功労株として各一〇株宛を贈与した外は、原告が第三者名義をかりた所謂名義株として、将来は原告に名義書換をなす約定で、同名義人の白紙の譲渡証書を貰い、これを株券とともに被告会社に寄託していた。
(2) 又昭和二九年三月五日発行の新株については、大森昭三が一六〇株、露口清彦が六〇株、西脇養子が四〇株、大永信一が四〇株、光揚塗料株式会社が一〇〇株、脇田朝栄が八〇株、東中克夫が四〇株、岡田喜久雄が二〇株の払込とした外は、原告と訴外西尾歳一がそれぞれ二、七三〇株の払込をした。しかし前記光揚塗料株式会社、脇田朝栄、東中克夫、岡田喜久雄が払込をした株式については、右株券発行前に当然原告に配当されるべき被告会社の裏勘定資金を持つて買入れをしたもので原告の所有に属するものである。そして前記原告払込にかかる株式並びに買入株式はそのうち七六〇株を原告名義にした外はそれぞれ名義株(旧名義人)として(1)と同様将来原告に名義書換をなす約定で各名義人の白紙の譲渡証書を貰い、これを株券とともに被告会社に寄託した。
(二) 被告会社代表者西尾歳一は、前記西尾氏I研究所が有望であるので、昭和二六年一月頃原告に雇われ、原告の実兄に当るところから被告会社の設立に際し代表取締役となつたもので、労務のみを提供してきたものであるが、昭和三〇年初頃から原告との間が不和となると被告会社から原告を追出すため、被告会社として前記事情を熟知しているに拘らず、原告が前記株式の株主であることを否定し、かつ名義株につきその株券などが被告会社の倉庫に保管中であることを奇貨として違法に現名義人に書換をした。
(三) よつて、原告は株主並びに株券の所有者として、目録記載(1)ないし(32)の株式につき株主権の確認並びに同寄託株券の引渡、被告会社が違法に名義書換をなした右目録記載(2)ないし(10)の株式につき現名義人の名義の抹消並びに第三者名義の同目録記載(2)ないし(32)の株式につき原告の名義書換手続を求める。
二、被告主張
(一) 本案前の抗弁
(1) 株主権確認の訴について
原告の主張によると、その所有すると主張する株式中一、〇〇〇株のみが自己名義であり、他は第三者名義の所謂名義株である。ところで株主が記名株式につき会社に対して株主であることを対抗しうるためには株主であるだけでは足らず、株主名簿に記載されるか少くとも裏書のある株券或は譲渡証書のある株券を提出して当該会社に対し株式名義の書換を請求することが必要である。このことは第三者名義の株式につき単に株主であるという理由で会社に対して株主権確認の訴を提起し得るとすれば、会社としてはその攻撃防禦の方法がないことからも理由付けられるところである。すなわち、かかる株主は直接会社に対して株主権確認の訴を提起することが許されないのである。また原告名義になつている一、〇〇〇株については被告会社は原告を株主として処遇しているので訴の利益がない。よつて原告の株主権確認の訴は不適法である
(2) 株式名義の抹消並びに書換の訴について
原告は、第三者名義の株式につき、被告会社が違法に名義の書換をしたことを理由として当該名義の抹消を求め、かつ株主権に基づき原告名義への書換手続を請求しているが、株式名義の抹消手続請求は当該株式名義人を相手方として株主権確認の訴を提起し、勝訴判決を得た上で当該株券とともに被告会社に提出してなすべきであり、また、株式名義書換手続の請求についても正当に株券を所持し、裏書のある株券或は譲渡証書のある株券を会社に提出してなすべきところに、原告はかかる手続をなさず株券を所持していないのであるから、右告訴は不適法である。
よつて、株主権確認の訴、株式名義の抹消ならびに書換の訴は不適法なものとして却下を求める。
〔判決理由〕本案前の抗弁に対する判断
被告は記名株式につき株主が会社に対して株主であることを対抗しうるためには単に株式の取得者であるだけでは足らず、取得者の氏名及び住所を株主名簿に記載されるか、少くとも会社に対し裏書のある株券或は譲渡証書を附した株券を提出して株式の名義書換手続を請求することが必要不可欠であり、また株式の名義書換手続を求めるためには株式の取得者において裏書のある株券或は譲渡証書を附した株券を会社に対して提出すべきであるにも拘らず、これを欠いて提起された原告の株主権確認および株式名義書換手続を求める部分の訴は不適法として却下される旨主張するが、被告指摘の株主として会社に対抗するための要件並びに株式の名義書換のための要件事実はいずれもいわゆる訴訟要件事実に該当せず、実体法上の要件事実を構成するものと解されるから、この点に関する被告の主張は採用しない。次に被告は株式の名義抹消手続を求めるためには当該株式の名義人を相手として株主権確認の訴を提起し、勝訴判決を得て当該株券とともに会社に提出して株式の名義抹消を求めるべきであるのにこの手続を経由せず被告会社のみを相手として提起された原告の株式名義抹消手続を求める部分の訴は不適法として却下されるべき旨主張するところ、株主は一旦株主名簿に登載されると爾後会社に対し株主権を対抗しうるものであつて、その名義を不当に他の第三者名義に書換えられた場合には、現に当該株式の株主権者であることを証明すれば、会社に対し第三者のために書換えられた名義の抹消手続を請求し得るものであつて必ずしも被告主張の如き手続を要するものでもないから、この点に関する被告の主張も援用できない。もつとも本件の場合原告が株式名義の抹消を求める株式はいずれもいわゆる名義株であつて原告自身が被告会社の株主名簿に登載されたことがないのであるからに原告が被告会社に対し直接右株式の株主権者であることを本来対抗し得る立場にあるかどうかは問題であるが、このことは先に述べたとおりの実体法上の問題であつて、株式の名義抹消手続を請求するにあたり被告指摘の如き手続を要するか否かの問題とは別個のものというべきである。なお原告名義の株式につき被告は株主として待遇しているから株主権確認の利益がない旨主張するところに他面被告は右株式が原告から訴外西尾歳一に譲渡され、既に右株式の株主権者でない旨抗争しており、首尾一貫しないものがあるが弁論の全趣旨より推究すれば、被告は原告が実質上の株主権者でないことを主張するものとみとめられ、しかも記名株式の移転は取得者の氏名及び住所を株主名簿に記載しなければ会社には対抗できないが、会社からは右移転のあつたことを主張し得る訳でもあるから、右株式に関する株主権確認の利益がないとは言い難く、この点に関する被告の主張も理由がない。(亀井左取、高山健二、三宅純一)