大阪地方裁判所 昭和31年(ワ)4831号 判決 1958年12月10日
原告 岩城薬品株式会社
右代表者 河野寿
原告 富山県薬壜工業株式会社
右代表者 高田喜一
右原告等代理人弁護士 白井源喜
被告 京谷政治郎
右代理人弁護士 植田完治
主文
原告等の請求を棄却する。
訴訟費用は原告等の負担とする。
事実
≪省略≫
理由
原告等主張の(一)の事実は被告の認めるところである。
原告等は、本件手形振出人欄の日産製薬株式会社取締役会長京谷政治郎という表示は日産製薬株式会社の代理の表示とは認められない、と主張する。
なるほど、取締役会長というのは、株式会社の業務執行機関である取締役会という会議体の首長を意味し、取締役会長は、当然には、会社の代表権も代理権も与えられているものではない。
しかし手形の記載の趣旨は一般取引界における通念によつて判断すべきである。一般取引界における通念より判断すれば、約束手形振出人欄に甲株式会社取締役会長乙と記載された場合、甲株式会社取締役会長なる表示は、単に乙の地位を説明したにすすぎないものではなく、甲株式会社の代理の表示であると認めるのが相当である。
従つて本件手形の振出人は日産製薬株式会社である。
次に、被告の本件手形振出の代理権限の有無について判断する。
成立に争ない甲第七号証、乙第三号証、証人吉浦誠三の証言により成立を認め得る乙第一、第三、第四号証、被告本人の供述によれば、被告は、日産製薬株式会社代表取締役鳥辺健二より、日産製薬株式会社取締役会長名義の本件手形振出の代理権限を与えられていた事実を認めることができる。
よつて進んで原因関係に基く請求について判断する。
原告等主張の(四)の事実は被告の認めるところである。
原告等主張の(五)の保証契約成立に関する証人三井義正、同矢部良平、同石立石太郎の各証言はいずれも信用し難く、他に右事実を認めるに足る証拠はない。
よつて、原告等の本訴請求はすべて正当でないから、これを棄却し民事訴訟法第八九条第九三条を適用し、主文の通り判決する。
(裁判官 小西勝)