大阪地方裁判所 昭和32年(ワ)3846号 判決 1957年11月22日
東京都千代田区霞ケ関一丁目一番地
原告
国
右代表者法務大臣
唐沢俊樹
右指定代理人大阪法務局訟務部長
今井文雄
同
法務事務官 綴喜米次
同
大蔵事務官 葛野俊一
同
同 矢野義彦
大阪市西成区旭南通八丁目五番地
被告
山野アルミ工業株式会社
右代表者代表取締役
山野正一
同市同区松田町一丁目二十三番地
被告
井上勝
尼崎市金楽寺字西福寺十七番地
被告
井上駒造
右当事者間の昭和三十二年(ワ)第三八四六号詐害行為取消等請求事件につき当裁判所は左の通り判決する。
主文
一 訴外山野正一が昭和三十一年六月十五日訴外山野ナツ子に対してなした別紙第一目録記載の電話加入権の譲渡はこれを取消す。
二 被告山野アルミ工業株式会社は、訴外山野正一に対し前項の電話加入権につき移転登録手続をせよ。
三 訴外山野正一が昭和三十一年六月二十一日被告井上勝に対し別紙目録記載の建物を売渡した行為はこれを取消す。
四 被告井上駒造は前項の建物につき、大阪法務局今宮出張所昭和三十二年五月二十二日受付第一二五七四号売買による所有権移転登記の抹消手続をせよ。
五 被告井上勝は第三項の建物につき大阪法務局今宮出張所昭和三十一年七月二十三日受付第五八五九号売買による所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。
六 訴訟費用は被告等の負担とする。
事実並びに理由
原告の指定代理人等は、主文と同旨の判決を求め、その請求の原因として、訴外山野正一は、別紙一の通り既に納期の経過した昭和二十九年ないし三十二年分の所得税及びこれに対する過少申告加算税、利子税、延滞加算税の合計金五十七万九千八百五十八円を滞納している者であるが、別紙二の通り当時の租税債務合計金百二十三万四千七百三十円に充てるべき十分な資産を有しないのに、滞納処分を免れるため、故意に、(一)昭和三十一年六月十五日訴外山野ナツ子に対し別紙第一目録記載の電話加入権を譲渡し、(二)同年同月二十一日被告井上勝に対し別紙第二目録記載の建物を売渡し、それぞれの移転登録及び移転登記を経由した。そして昭和三十一年七月十七日山野ナツ子は右(一)の電話加入権を被告山野アルミ工業株式会社(当時の称号は双葉アルミ工業株式会社)に譲渡し、同日その移転登録を経由し、被告井上勝は昭和三十二年五月七日右(二)の建物を被告井上駒造に売渡し、その所有権移転登記を経由した。そこで原告は国税徴収法第十五条に基き、訴外山野正一の訴外山野ナツ子に対する右電話加入権の譲渡及び山野正一の被告井上勝に対する右建物の売渡を取消し、その各転得者から権利の取戻しを求めると陳述した。
被告等はいずれも適式の呼出を受けながら本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しなかつたから、原告の右主張事実はこれを自白したものと看做すべきであり、その事実によれば、原告の本訴請求は正当であるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条第九十三条を適用して主文の通り判決する。
(裁判官 東民夫)