大阪地方裁判所 昭和33年(わ)3520号 判決 1959年4月17日
被告人 亀崎憲一
明二七・八・三〇生 農業(元岬町長)
川島省吾
明四三・一一・二四生 元岬町総務課長
主文
被告人両名を各懲役六月に処する。
但し、被告人両名に対しこの裁判確定の日から各二年間右各刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人亀崎は昭和三十年四月三十日より同三十三年五月一日まで大阪府泉南郡岬町長の職に、被告人川島は同三十年四月一日より同三十三年十二月頃まで同町総務課長の職にあつたものであるが、同町幹線道路淡輪・畠山線道路拡張改修工事は南海電気鉄道株式会社が自費をもつて昭和三十二年二月十二日頃着工し同年三月十八日竣工していて更に改修の必要がないのにかかわらず、当時同町は昭和三十年四月一日より旧深日・多奈川の両町及び淡輪・孝子の両村計四ヶ町村の合併により新町として発足したものの赤字財政に悩んだ末翌三十一年三月には財政再建団体としての指定を受けるに至り、ために新財源を得ない限り新規事業は一切行い得ず、しかも早急に新財源を得られるわけもないので、右合併に際し被告人等が計画しかつ実現し得ると考え町民に対し公約していた新町における建設事業計画は殆んど全て実施し得ないこととなり、ここに被告人等は町民から強い不満の声を受けるに至り、特に、被告人亀崎は区長会議の席において土木工事もできないのは同被告人が大阪府或は同府泉南地方事務所に対し手腕がないからだとの旨の、また被告人川島は右合併に反対気運のあつた淡輪村民を説得して合併に運んだいきさつもあつてこれ等村民からその公約との相違を難詰される等夫々苦しい立場にあつたため、被告人両名は同道路拡張改修事業に名を藉り偽つて補助金の交付を受け、これを利用し幾分でも公約の責を果そうと考え、被告人両名は共謀の上、昭和三十二年六月十三日頃情を知らない同府泉南地方事務所を通じ大阪府知事に対して、同町において同年度に事業費五百六十五万円で前記淡輪・畠山線道路拡張改修工事を施行するので同事業に対し新市町村建設促進法にもとづく施設整備費補助金二百二十万円を交付されたいと偽つて申請し、因つて同年十二月十七日頃同知事をして前記事業に対し施設整備費補助金二百二十万円の交付指令をさせた上、同月二十七日及び同三十三年一月二十九日の二回に同府泉南郡南海町尾崎六十八番地の一株式会社泉州銀行尾崎支店を通じ大阪府から同府が国から交付を受けこれを直接にその財源の全部とした新市町村建設促進法にもとづく施設整備費補助金のうちから前記補助金の前渡金として合計百九十八万円の交付を受け、以て間接補助金等の交付を受けたものである。
(証拠の標目)<省略>
(法令の適用)
法律に照すと、被告人両名の所為は各補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第三十三条第二項第二十九条第一項刑法第六十条に該当する(包括一罪)から、所定刑中各懲役刑を選択し、その刑期範囲内で被告人等を各懲役六月に処し、刑法第二十五条第一項により被告人両名に対しこの裁判確定の日から各二年間右刑の執行を猶予することとし、主文の通り判決する。
(裁判官 大野千里)