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大阪地方裁判所 昭和33年(ワ)1722号 判決 1962年1月27日

主文

一、被告両名は連帯して別紙目録記載の選定者に対し金五五万円とこれに対する昭和三三年四月二四日から右支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二、訴訟費用は被告両名の連帯負担とする。

三、この判決は被告両名に対し共同して金一八万円の担保を供するときは仮に執行することができる。

事実

(当事者双方の申立)

原告は、主文第一同旨と「訴訟費用は被告等の負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求め、

被告両名は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求めた。

(原告の主張)

原告及び当事者選定者並びに被告等二八名は昭和三〇年七月から二四日会という名称で口数二八毎月二四日開会一回掛金三万円の頼母子講を始め毎月二四日に入札の方法により給付を受ける金員を決定し給付を受けた会員はその後返掛金をなしてきた。ところが講員の中には当時特殊風俗営業を営むものが多かつたので売春禁止法の実施による収入激減を見越し落札希望者が多く又返掛金を怠る者も出て未落札者は極度の不安に陥り円満な講の運営ができなくなり昭和三一年一一月二四日以降は入札を行わず未落札者に平等に給付する方法をとり昭和三二年一〇月二四日終講となつた。

被告武友は昭和三一年九月二四日、被告宮陰は昭和三一年一月二四日にそれぞれ落札し、被告宮陰は被告武友の返掛金債務金三九万円の支払につき、被告武友は被告宮陰の返掛金債務金六三万円の支払につきそれぞれ連帯保証人となつたが、被告武友は昭和三二年一月分の内金一五、〇〇〇円を返掛したがその後の支払をなさず又被告宮陰は昭和三二年一月分まで返掛金を支払つたがその後支払わないので被告等は連帯して金五五五、〇〇〇円の支払義務がある。

しかして本件頼母子講は訴外沢岻安正が最初の講金を受領し講の運営の世話係をしていたが、右訴外人が死亡したので、未落札者全員が原告を選定当事者に選定して被告等に対し右金五五五、〇〇〇円の内金五五万円とこれに対する昭和三三年四月二四日から右支払済に至るまで年五分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める。

(被告等の主張)

被告両名の講金未払がいずれも五回分合計金一五万円宛あることは認めるが、右金員は講主沢岻安正に支払うべきであつて原告に支払う義務はない。原告その余の主張事実は全部争う。

証拠関係(省略)

理由

成立に争いない甲第二号証の一、二・証人仲栄真盛広・同与儀貞子・原告被告両名各本人の各供述によつて成立が認められる甲第一号証の一、二並びに証人仲栄真盛広・同与儀貞子の各証言及び原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すると、原告及び当事者選定者並びに被告等二八名は昭和三〇年七月から二四日会という名称で口数二八毎月二四日開会一回掛金三万円の頼母子講を始め、毎月二四日に入札の方法により給付を受ける会員を決定し給付を受けた会員はその後返掛金をなすべきことを約したこと、被告武友は昭和三一年九月二四日(第一五回)被告宮陰は昭和三一年一月二四日(第七回)にそれぞれ落札し、被告宮陰は被告武友の返掛金債務金三九万円の支払につき、被告武友は被告宮陰の返掛金債務金六三万円の支払につきそれぞれ連帯保証人となつたことが認められる。

しかして被告等はいずれも右返掛金債務の内金一五万円を除き弁済したと抗弁するが、原告がその弁済を認める返掛金を除いた被告武友につき昭和三二年一月分の返掛金の内金一五、〇〇〇円同年二月分以降の返掛金被告宮陰につき昭和三二年二月以降の返掛金を支払つたと認めるに足る的確な証拠はない。被告等の抗弁に副うところのある証人小沢留子の証言並びに被告両名本人尋問の結果は甲第一号証の一、二並びに証人仲栄真盛広・同与儀貞子の各証言及び原告本人尋問の結果と対比するときはたやすく信用することができない。そうすると被告武友は金二八五、〇〇〇円被告宮陰は金二七万円の返掛金残債務を負担しているわけである。しかして甲第一号証の一、二並びに証人仲栄真盛広・同与儀貞子の各証言及び原告本人尋問の結果を総合すると、本件頼母子講は最初訴外沢岻安正が講元であつたが右訴外人が病気となり訴外与儀貞子が便宜講元の事務を手伝つていたこと、頼母子講はその後既職者が返掛金をしないので運営困難となり昭和三一年一二月から入札を中止し清算手続に入つたこと、訴外沢岻はその後死亡したこと、原告及び当事者選定者一二名が未取者全員である事実が認められ、右認定を左右する証拠はない。

してみると本件頼母子講は昭和三一年一二月事業の不成功によりて解散し、右清算業務たる既取者に対する返掛金の請求権は未取者全員に帰属しその請求は共同にてこれをなすことができるから、被告等は選定者等に対し右未返掛金を支払うべき義務があるので、被告等に対し未返掛金五五万円とこれに対する弁済期後である昭和三三年四月二四日から右支払済に至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める原告の請求を正当として認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九三条、仮執行の宣言につき同法第一九六条を適用して主文のとおり判決する。

(別紙選定者目録は省略する。)

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