大判例

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大阪地方裁判所 昭和34年(ワ)5900号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実と判断〕まず、次の各事実が確定された。(1)原告は大正六年設立以来「株式会社島津製作所」なる商号を使用し、同年一〇月一六日以降現在まで商品類別第一八類(理化学、測定用の器械器具を含む)を指定商品とする「」なる商標権者である。(2)原告の商号と商標はわが国内において広く認識されている。(3)原告は昭和一〇年ごろから、高温温度計なる名称で、右指定商品たる指示熱電温度計を製造、販売している。(4)被告は、故意または過失により、自己の製品である指示熱電温度計(パイロメーター)に原告の前記商号と商標を使用し、かつ右商品の試験成績表に原告の商号を使用した上、昭和三四年七月ごろ、大阪府布施市内近畿大学に対し、右温度計一個を代金一三、〇〇〇円で販売した。

被告は、右のごとき事実があつても、原告が製造する同温度計の販売価額は約二万四千円であつて、被告の販売価額が金一三、〇〇〇円の低価格であるところから、販売先の近畿大学においても、被告の販売した製品が原告の製品ではないだろうとの知識があつたと考えられる、等と述べ、被告の右(4)の行為によつてもいまだ原告の製品と混同を生じさせるには至らない、と争つた。

これに対し、判決は、「不正競争防止法第一条第一号にいわゆる『他人の商品と混同を生ぜしむる行為』とは必ずしも実際に混同を生じた事実を必要とせず、そのおそれがあればたり、かつ、行為者に取引上実際に混同を生じることについての認識を必要とするものでない。」と述べた上、被告の右(4)の行為は、原告の商品と混同を生じさせるおそれのあることが明らかであるから、同法第一条第一号の不正競争行為に該当する、と断定した。

さらに、判決は、(5)原告は、その製造販売する理化学器械の品質及び数量において、わが国理化学器械製造販売業界中有数な業者である。(6)原告の製品である指示熱電温度計は日本工業規格に適合するが、被告が近畿大学に販売した製品は、右規格に合格せず、その構造、機能、外観、耐久度において原告の製品に比し各種の欠陥を有し、そのため、納入後十日ぐらいして大学から原告に検査、修理の苦情の申入れがあり、被告の前記不正競争行為が発覚したとの各事実を確定し、これによれば、被告が前記不正競争行為をすることにより、実際に原告の商品と混同を生じさせ、原告の営業上の信用を害したことを推認できるから、被告はその信用回復に必要な措置をとる義務がある、とした。

被告は、価額一三、〇〇〇円程度の製品を近畿大学に一個販売しただけであるから、被害の程度が少い上に原告の被害の範囲が不特定多数人に及んでいないことをあげ、信用回復の方法として、新聞紙上に謝罪広告をするに及ばない、と争つた。

これに対し、判決は、「被告は本件指示熱電温度計一個を代金一三、〇〇〇円で近畿大学一軒に販売したものであつて、他に多数を販売したものではないことが認められ、しかも販売後十日ぐらいで発覚したのであるから、原告の営業上の信用が害された程度範囲は必ずしも甚大とはいえないが、その範囲は単に特定人たる近畿大学に限られるというものでなく、大学という特殊性から、教授、学生その他の関係者に拡大せられることは当然予想されるところである」とし、以上の諸般の事情を参酌した上、被告に対し、原告の信用回復のための措置として、次のごとき謝罪広告を、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の各大阪地方版及び日刊工業新聞に六号活字で各一回あて掲載することを命じた。

謝罪広告の内容

当会社は昭和三四年七月頃近畿大学に指示熱電温度計を販売するに当り、擅に貴社の商号ならびに商標を右商品に使用し、貴社の商号を右商品の試験成績表に使用しましたことは誠に申訳なく、ここに陳謝いたします。

昭和 年 月 日

被告住所商号

株式会社島津製作所 殿

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