大阪地方裁判所 昭和34年(ワ)875号 判決 1964年3月26日
主文
被告は原告に対し、別紙目録第一項記載の物件についての同第二項記載仮登記の抹消登記手続をせよ。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実
一、原告の申立
主文同旨。
(先順位仮登記に基き所有権移転本登記を経由した者からの後順位不動産仮登記抹消請求。)
二、争いない事実
別紙目録第一項記載の建物(以下本件建物という)は従来訴外田中重雄の所有であつたが、順次左の登記がなされている。
(い)、昭和三三年五月一二日
原告を権利者とする所有権移転請求権保全仮登記。
(ろ)、同日
原告を債権者、訴外田中被服株式会社、同田中重雄を連帯債務者とする債権額金二〇万円、弁済期同年七月一一日の抵当権設定登記。
(は)、同年八月六日、
被告を権利者とする所有権移転請求権保全仮登記。
(に)、翌三四年四月二〇日、
原告を取得者とし、代物弁済を原因とする所有権移転登記。
三、争点
(一) 原告の主張
原告は先順位仮登記(い)にもとづき、本登記(に)を経由した所有者である。よつて後順位で対抗できない被告の仮登記(は)(別紙目録第二項記載)は抹消されねばならない。
(二) 被告の答弁
右主張を否認する。
1、原告は本件建物の所有者でない。
後記のように、原告はその仮登記(い)が債務弁済により効力を失つてのち、所有者田中に全く貸付もしておらず、代物弁済の事実もないから、所有権を取得するいわれがなく、登記(に)、も無効なものである。
2、原告の仮登記は効力がない。
仮登記(い)は、原告の田中に対する金二〇万円の貸付につき(ろ)の抵当権設定とともになされた代物弁済予約に基くものである。ところで右田中の債務は同年六月二五日弁済によつて消滅したので、右代物弁済予約も約旨により当然解消した。従つて仮登記(い)は以後実体関係を欠き無効なものとなつた。
そうすると、よしんば原告の登記(に)が効力を有するとしても、これは被告の仮登記(は)、経由後の代物弁済契約により取得した所有権移転登記であるから、被告に対抗できる筋合のものではない。
四、証拠(省略)
別紙
目録
第一、本件物件
大阪市住吉区殿辻町六六番地の二、地上
家屋番号同町第六六番
一、木造瓦葺二階建作業場付居宅、
建坪 三三坪五合
二階坪 三三坪六合
第二、抹消すべき本件仮登記
「大阪法務局中野出張所昭和三三年八月六日受付第二一、六八七号の、同年同月五日付代物弁済予約を原因とする所有権移転請求権保全仮登記」