大判例

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大阪地方裁判所 昭和35年(タ)117号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判旨の要点〕一、法例第一六条は、離婚はその原因たる事実の発生した時における夫の本国法による旨を規定しているが、その立法趣旨は、夫婦間の身分関係を律するには当事者の身につけている風俗、習慣、宗教、倫理感情等の文化的要素をもつとも強く反映する属人法を以てするのが妥当である、との考慮のもとに、離婚の準拠法として属人法主義をとり、ただ夫の本国法を以て右夫婦関係を律すべき属人法とするとともに、離婚原因発生後の夫の国籍変更によつて離婚が困難または容易となり妻の予期しない結果が生じるのを避けるため、離婚原因が発生した時に夫が所属していた国の現行身分法(時際法を含む)により離婚の効力ないしその許否等を判決すべき旨を規定したところにある、と考えることができる。

本件では、前記で認定したところによれば、原告および被告は、離婚原因が発生したと主張される昭和二五年末当時においてはいずれも日本国籍を有したところ、昭和二七年四月二八日の日本国との平和条約の発効にともなつて日本国籍を失い、朝鮮の国籍を持つにいたつたものと解され、離婚原因発生後夫たる被告の国籍に変動をきたしているものといわなければならない。

しかしながら、右国籍の変動は、被告がみずからの行為により自分の国籍を変更したからではなく、わが国が平和条約において朝鮮の独立を承認し、朝鮮に属すべき領土に対する主権を放棄し、ひいては朝鮮に属すべき人に対する主権を放棄した結果にほかならず、しかも、朝鮮は、日韓併合条約により日本の領域とされたのちにおいても、日本国の統治機構上一個の異法地域とされ、それが右平和条約の発効にともない再びそのまま本国から分離して独立したものであつて、この間被告は、朝鮮に属す者として、朝鮮独自の身分法の適用をうけていたのであり、ことに現在被告が所属する韓国においては、独立後も、従来日本が朝鮮で実施していた諸法令に原則として法源たるの効力をみとめ、これを自国における法規範として引継いでいることが認められのである。

このようなばあい、前記法例第一六条の立法趣旨よりすれば、離婚原因発生当時夫たる被告の国籍が日本であつたこと、ないしその後それが変更したことに固執するのは妥当でなく、たとえ韓国が独立後、従来日本が朝鮮で実施していた身分法に法源としての効力を認めることを拒否し、あるいはその具体的内容を変更したばあいであつても、夫たる被告の離婚原因発生当時の本国法、すなわち当時被告に対し属人的に適用されていた全体としての身分法秩序と、現在の被告の本国法、すなわち現在被告が所属する韓国が自国において実施している全体としての身分法秩序との間には、むしろ同一性があるものとみなし、現行の韓国法令(時際法を含む)こそが本件離婚の準拠法である、と解するのが相当である。

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