大阪地方裁判所 昭和35年(ワ)5066号 判決
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〔判決要旨〕一、居住用建物と事務所用建物とが併設している場合でも、両者が各別の出入口を有し、構造上も分離している別個の建物であつて、前者を住居とし、後者を歯科診療所として使用しているときは、併用住宅にあたらない。
二、右両建物を一括して既定賃料が約定されていても、両建物の標準賃料額の比率によつて既定賃料を按分して各建物ごとの賃料額を推算するのが、約定当事者の合理的な意思とみるべきである。
三、賃借人の増築部分は適正賃料算定の基礎に考慮すべきでない。
〔判決理由〕一、本件家屋中別紙図面ニ、ホ、ヘ、ト、チの部分は、被告が、原告から同イ、ロ、ハの部分を賃借したのち、原告の承諾を得て増築したものであることが認められ、これに反する証拠はない。そうすると、以下本件家屋につき、地代家賃統制令二三条の適用上あるいは適正賃料の算出上、賃借建物の面積を算定するにあたつては、当事者間に右増築部分をも賃貸借の範囲に含ませる旨の合意が成立するなど格別の事情の認められない以上、右増築部分の所有権の帰属いかんにかかわりなく、その部分の面積を除外して判断するのが相当である。
二、本件家屋のうち、前記イ、ロの部分は原告所有の二階建居宅一棟の一部であり、ハの部分は右居宅敷地の一部に公道に面して建てられた店舗または事務所用建物一棟であり、両者は各別の出入口を有し、構造上も分離している別個の建物であつて、被告は前者を住居として、後者を主として歯科診療所として使用しており、賃借当初においては、各別に家賃を定め、家賃通帳も各別に作成されていたことを認めることができる。そうすると、本件家屋は、居住用部分と事業用部分とが結合した一箇の建物ということはできないから、この点で併用住宅としての要件を欠いており、本件賃貸借は、住宅一戸と店舗一戸とを目的とする契約であつて、その賃料は、住宅については統制令の適用があり、店舗についてはその適用がないものというべきである。
三、したがつて、前記一ケ月金三、五〇〇円の既定賃料が、前記増額の意思表示の当時不相当となつたかどうかを考えるにあたつても、右住宅と店舗とを区別して考えなければならない。そして、右既定賃料は両建物を一括して約定されたものであるけれども、約定当事者の合理的な意思を推測して各建物ごとの賃料額を推算することは必ずしも困難ではない。すなわち、鑑定人石橋一男の鑑定の結果によると、本件家屋中、住宅(イ、ロの部分)の建物評価およびその敷地(二五坪二合五勺)の評価を基礎として算出される標準賃料額と、店舗(ハの部分)の建物評価およびその敷地(一四坪二合二勺)の評価を基礎として算出される標準賃料額との比率は、おおよそ前者二に対し後者一の割合であることが認められる。そこで、前記既定賃料三、五〇〇円についても、その建物ごとの内訳は、住宅部分がその三分の二すなわち二、三三三円、店舗部分がその三分の一すなわち一、一六七円であると推測することが、約定当事者の通常の意思に副うものと解される。
四、つぎに、店舗部分の賃料は統制令の適用を受けないものであり、前掲甲二号証、検証ならびに各鑑定の結果を総合すると、昭和三五年九月当時における本件家屋(家屋全体が統制令の適用を受けないものと仮定した場合)の適正賃料は、一ケ月一万一一五〇円(鑑定人石橋一男の鑑定による算出方法のうち、借家人の有する権利の評価六割とあるのを四割と修正したほかは、同鑑定に示すのと同一の評価および計算を採用した。)であると認めるのが相当であり、このうち店舗部分の適正賃料を前記比率により按分すると一ケ月三七一七円となる。したがつて、店舗部分については、原告の賃料増額の意思表示により、一ケ月金一、一六七円から金三、七一七円に増額の効力を生じたということができる。(杉山克彦)