大判例

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大阪地方裁判所 昭和37年(タ)10号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実と判旨〕原告(男)は、大正一四以降、被告(女)は、おそくとも昭和一五年以降いずれもわが国(当時の内地)に居住の韓国人で、檀紀四二七六年(昭和一八年)三月婚姻してその届出をすませ、当初大阪に、その後岡山県内で婚姻生活をしているうち、被告は、昭和二三年六月、近所の男とともに家出して行方をくらまし、一且はその所在をつきとめられ右原告方に連れ戻されたが、その後再び家出し、以後所在不明となつている。原告は、現在大阪市内で、未成年の三男と同居し、メリヤス加工業を営み、近くわが国に帰化して引きつづきわが国内で生活する意思を持つている。本訴は、この夫が行方不明の妻を相手方として、自己の住所地を管轄する大阪地方裁判所に、離婚の裁判と原告を右未成年の三男の親権者として指定する旨の裁判を求めたものである。

裁判所は、本訴につきわが国に裁判権のあることを肯定したうえ、その土地管轄の点につき原告の住所地を管轄する大阪地裁が管轄権を有すること、裁判上の離婚の準拠法の点につき原告の本国である朝鮮の現行法によることを判定したうえ、南鮮と北鮮が一国内の異法地域とみる見解を排してこれを二国としてとらえ、合理的基準を按じてその一方の国の法律(大韓民国法)を選択適用して、離婚の請求を認めた。

「当裁判所の管轄権の存否につき考えると、本件においては人事訴訟法第一条の適用はないが、(同条が外国人相互間の訴訟に適用されるかどうかは問題があるが、これを積極に解しても本件夫婦の氏〔姓〕は異なるから結局同条は本件に適用されない)、被告が行方不明である本件のような場合においては、身分訴訟に関する同法条が管轄権の決定につき被告の住居地の如何をとくに考慮してはいないこと(その点で、民事訴訟法が被告の普通裁判籍所在地の裁判所に通常の管轄権を認め被告の応訴の便を重点的に考慮しているのと異なる)や、人事訴訟法の専属管轄の規定が当該事件の管轄裁判所を一律に特定して管轄の法的安定明確を期する必要に重点をおき、とくに他の重要な実質的理由にもとづいているとは解せられないこと(その点で、記録所在庁とか関連事件の係属庁などとくに他の事項と結びつけて専属管轄を定めている場合すなわち特定裁判所に審理判断させることが事案の適正かつ迅速経済的な処理に役立つという実質的理由にもとづく場合と異なる)などを考えると、常に民事訴訟の原則に従つた被告の普通裁判籍所在地を管轄する裁判所に専属管轄権を認めるべきではなく、原告のわが国法上の住所地である大阪市を管轄する当裁判所も管轄権を有するものというべきである。」「本件についての準拠法は、法例第一六条により決すべきであるが、同条は、第一に、夫の本国法を適用すべきこと、第二に、もし夫の国籍が変動してその本国が変動したときには、本国決定の連結点として離婚原因発生時をとることの二点を明らかにしたものと解すべきところ、本国内の一地域が分離独立したため、本国国籍を有していた者が分離独立した新らしい国の国籍を有するに至つたような場合は、前記法条の法意の第二として示した本国の移動があつた場合には当らず、たとえ独立前の本国の法と分離独立した国の法とが異なるに至つても、それは同一本国法内における法の変動とみてよいものと考えられる。従つて、右のような場合は、前記法条の法意第一の点のみに従い、夫の本国法である分離独立した国の現行法を適用すべきである。そうだとすると、本件の原告(夫)は、日本国籍を有していたところ、戦後わが国から朝鮮が分離独立したことにより朝鮮国籍を取得したことが明らかであるから、本件については原告の本国である朝鮮の現行法を適用すべきである。ところで、現在の朝鮮では政治権力を全く異にする南鮮(大韓民国)と北鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の両政府が互いに朝鮮全領域につき領土主権を主張していることは明らかであるが、このような場合は南鮮と北鮮を一国内の異法地域とみて法例第二七条第三項によるべきではなく、むしろ素直に二国とみた上、国際私法の本旨に従い、主観的要素及び客観的要素をあわせた合理的基準によつて、いずれか一方の政府により定められた法律を選択し、これを適用するのが正当である。そうすると、原告は、前出の証拠によれば、右二国のうち大韓民国政府の支配下にある済州島で出生し、同地に本籍を有しており、戦前わが内地に渡来する前の朝鮮における最終の生活の根拠地も済州島であつたのみならず、現在みずから大韓民国国民として外人登録もしていることが認められるから、本件については大韓民国の現行法を適用すべきである。」

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