大阪地方裁判所 昭和37年(ワ)4269号 命令 1963年3月07日
原告 勝浦美満
被告 芝本磐夫
主文
本件訴状を却下する。
理由
当裁判官は、昭和三七年一二月一九日原告に対し、昭和三八年一月三一日までに本件訴状中被告の正当な住所を補正するよう命じたが、原告はこれを補正しなかつたものである。
なお、原告は昭和三八年二月一二日、被告の表示を「東京都千代田区霞ケ関一丁目一番地、被告国、右代表者法務大臣」と訂正した「訴状訂正の申立」と題する書面を提出したのであるが、これは、単に被告の表示の誤りを訂正したものでなく被告を変更したものであることが明らかである。一般に、訴状が被告に送達せられて訴訟係属を生じたのちは、当事者を任意に変更することは許されないと解すべきであるが、本件のように訴状が送達不能となつたばあいには、被告の応訴の利害関係はまだ発生するにいたらないけれども、原告と裁判所との間に生じた訴状受理の訴訟関係は、訴状に記載された当事者のために、または当事者に対して存在し、裁判所はこれら当事者の関係で所定の手続を進行させるものであるから、そのご任意に原告または被告の交替を許すことは、訴状受理にともなう手続の安定と経済を害し、ひいては不充分な調査に基く濫訴をゆるす結果となる。したがつて、このばあいにも任意に当事者を変更することは許されないと解すべきであり、当裁判官の前記訴状補正命令に応じて原告が右のような被告を変更する趣旨の訴状訂正の申立書を提出しても、訴状の欠缺を補正したことにはならないのである。
よつて、民訴二二九条、二二八条を適用して、主文のとおり命令する。
(裁判官 杉山克彦)