大阪地方裁判所 昭和37年(ワ)5167号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔事実と判断〕被告は訴外西出株式会社に対しウーステツト生地代金二四〇万八九五〇円分を註文これを買付け、そのうち金一三二万二〇二〇円は手形で支払い、残金一〇八万六九三〇円は被告が同会社に対して有する売掛金債権金二六二万九九六九円と対等額において相殺した。右西出株式会社に対する債権者である原告は、被告の右行為をとりあげ、これは西出株式会社が倒産寸前の状態であることを察知した被告が他の債権者を出しぬいて自己の債権の回収を企てあえて生地を註文し同社に対する金二四〇万八九五〇円の債務を生ずるや前記額について相殺したものであるから、民法四二四条にいう詐害行為にあたるとして、これが取消しを請求した事案につき、裁判所は詐害行為にはあたらないとして次のとおり判示した。
「原告は被告の為した相殺の意思表示が詐害行為に当るとして取消を求めるのであるが、民法四二四条は詐害の結果を生ぜしめた債務者自身の行為又はこれと同視すべき行為を対象とするものであつて、債権者のみの一方的意思表示により法律効果の生ずる債権者の為す相殺の意思表示は同条による取消の対象とならないものと解する。
原告が云わんとする如く、債務者が倒産寸前の状態にあるとき債権者の一人が自己の債権の回収を急ぎ、その方法として債務者より商品を買付けて債務を負い、通常の方法では回収が困難である自己の債権を以てこの債務を相殺するときは実質的には商品を以て代物弁済を受けるのと同様の結果を収めることができるのであるが、この場合でも民法四二四条に関する限りは債権者の相殺の意思表示自体を詐害行為として取消し得るのではなく、相殺適状を生ぜしめた債務者の行為が詐害行為として取消の要件を具備しているか否かを問題とすべきものである。
民法四二四条と同種規定の破産法七二条各号の否認権行使の場合に於ては解釈上債権者の為す相殺自体もそのいづれかに当り否認の対象となると解する余地もあるが、民法四二四条に於ては債務者の何らの行為によらず債権者のみの意思表示により為される相殺は詐害行為と云えない。」