大阪地方裁判所 昭和38年(レ)239号 判決
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〔判決理由〕以上認定の各事実からすると、控訴人としては、昭和三六年三月二六日当時、すでに元利金合計四三二、四一〇円(うち元本充当分は三九七、〇五一円)の支払をなし、元本の半額以上の弁済を了えていたこと、本件予約完結権の行使が、残存元利金三五九、四六四円の弁済に代えて、その約七倍の価値を有する本件不動産の所有権を取得することを目的とするものであることは、いずれも明らかなところである。他方、本件代物弁済の予約が、右貸金債権を担保する目的で締結されたものであることは、本件証拠調の結果ならびに弁論の全趣旨に徴して疑いのないところであり、しかも、前記甲第一、二および第五号証によると、右債権を担保するため本件代物弁済の予約のほかに、さらに本件不動産について被控訴人のために抵当権が設定されていることが認められるのである。もちろん、かような場合においても、期限に貸金債務の弁済がないときは、抵当権を実行するか、または代物弁済の予約を完結させるかは、原則として債権者の選択するところに委されているといわなければならないであろう。しかしながら、本件のごとく、貸金債務の相当部分について内入弁済がなされ、その結果、不動産の価格の高騰ともあいまつて、代物弁済によつて消滅すべき残存債務額と代物弁済の目的物の価格が著しく均衡を失するにいたつたような場合には、債権者としては、特段の事情のない限り、先ず抵当権を実行してその債権の満足を図るべきであつて、右特段の事情がないのに拘らず、抵当権の実行をなすことなく敢て代物弁済予的を完結させようとすることは、徒らに債務者の利益を害するとともに、債権者債務者間の信義に反し、誠実にもとることとなるといわなければならない。しかるに被控訴人が、なんら特段の事情の認められない本件において、抵当権の実行をなすことなく代物弁済の予約を完結させようとしたことは前記のとおりであるから、被控訴人による本件予約完結権の行使は信義則に反して無効であるといわざるを得ない。(石崎甚八 藤原弘道 福井厚士)