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大阪地方裁判所 昭和38年(ワ)1279号 判決 1965年1月21日

理由

原告がもと有田村村長であつたが、やめて後竹ピッチ製造業を始めたこと、その後同事業を協同組合組織とすることを考えていたこと、山本マサノが紀南澱粉加工協同組合の経営に当つていたので、同女に対し原告が自己の事業を協同組合化すべく相談を持ちかけていたこと、その理由は別として原告が印章及び権利証をマサノに交付していたことは、原告において明らかに争わないところである。被告は、原告がマサノに対し右組織替することの外協同組合となつた場合に低利の金融を得ること即ちマサノが原告の為に金融を受けることを委任し、その旨の代理権をも与えて右印や権利証まで交付したのであると主張する。

(証拠)によると原告は、事業を協同組合とすれば税金対策その他で有利であるとマサノよりすすめられ、マサノ自身が協同組合でやつているので乗気となり、同女に対し同女の知合である組織替手続に詳しい人にその手続を依頼してくれるよう話を持かけていたにとどまり、金融方の依頼をしていたのではないことが認められる。(省略)

右の如く、原告はマサノに対し組合化すべく手続上必要として印及び権利証をマサノに渡していたのであつて、金融を同女に依頼しその代理権を与えていた事実は認められないから、被告の民法一一〇条の権限踰越による表見代理の主張は基本たる権限が認められないので失当とすべきである。

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