大阪地方裁判所 昭和38年(ワ)3674号 判決
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〔判決理由〕そこで原告主張の再抗弁事実について判断するに、≪証拠略≫によれば原告がその主張のように昭和三二年五月一七日及び昭和三四年一〇月一七日の二回に訴外会社の代表取締役たる被告に対して右主たる債務につき催告をなした事実が認められるものの、原告においてその後六ケ月以内に裁判上の請求その他民法第一五三条所定の手続を履践したことについては何ら主張立証がないので、右各催告によつては前記時効中断の効力を生ぜず、したがつて右の昭和三七年一月三〇日の経過によつて右債務(但し遅延損害金を除く)の消滅時効は完成したというべきである。しかしながらまた右各証拠によれば被告が昭和三八年三月二〇日原告の使用人上田某から右債務につき更に請求をうけた際、右債務はみとめるが、遅延損害金を二分の一か三分の一程度まで減額してほしい旨申し立て、これに対し原告は応ぜず話がまとまらないまま終つた事実が認められ、右認定に反する≪証拠略≫はこれを措信し難く、他に右認定を左右するに足る証拠がない。ところで凡そ債務者が既に時効の完成している債務を承認したときは、反証のない限り時効完成の事実を知りながらこれをしたもので、時効の利益を暗黙に放棄したものと推定すべく、本件において被告が右時効完成の事実を知らなかつたと認むべき反証はなんら見当らないのであるから、被告は右承認によつて少くとも元本金三八万円については時効の利益を暗黙に放棄したものと推定すべきである。これに反し本件遅延損害金債権は日毎に発生し、日毎に時効完成をみるべきもので、右昭和三八年三月二〇日から五年を遡る昭和三三年三月二〇日以前の遅延損害金は既に時効が完成しているものというべきところ、前叙遅延損害金減額の申出は、それが原告に容れらなない場合にはその支払をしないという意図を含むものと解するに難くなく、したがつて原告において右申出を容れなかつたこと前認定のとおりである以上、被告において遅延損害金を支払うべき意思は認められないというべく、しからば被告が右減額申出の前提として本件債務を承認した事実があるからといつて、直ちに右の既に時効が完成している遅延損害金債務についてまで、その時効の利益を放棄したものとすることはできないといわななけれならない。そうすると右昭和三三年三月二〇日以前に発生した遅延損害金債権は既に時効完成により消滅しているものというの外はないが、昭和三三年三月二一日以降の遅延損害金債権については、原告が昭和三八年三月二〇日被告に請求したこと前認定のとおりであり、その後六カ月以内である昭和三八年八月二三日に支払命令の申立があつたこと記録上明白であるから右請求により中断されて時効消滅を免れているというべきである。なお、原告は昭和三八年一月二七日被告に対して催告した旨主張するが、その後六カ月以内に前記民法第一五三条所定の手続を履践したことの主張立証がないので採るに足りない。(新田圭一)