大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和38年(ワ)4829号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一 被告山田海運に対する請求について

(一) まづ、被告山田海運に対する訴の適否について判断する。

本件記録によると、原告は、訴状に被告を「大阪市港区弁天町三丁目七山田海運株式会社こと山田栄吉」と表示して山田海運株式会社取締役社長山田栄吉の振出人名義の約束手形四通の手形金(合計金一〇七万一、二〇〇円)の支払を訴求し右訴状が昭和三八年一一月二二日山田栄吉個人に送達されたところ、右山田栄吉は山田海運株式会社代表取締役山田栄吉として弁護士小林劼を訴訟代理人に委任して応訴し、山田海運株式会社は、徳島県阿南市に本店を有する登記ずみの会社であると主張し、その登記簿抄本を提出したので、原告は、右会社が本店を徳島県阿南市黒津地町末広六八番地に有する登記ずみの会社であることを知り、当事者の表示訂正申立書をもつて、被告の表示を前記「山田海運株式会社こと山田栄吉」から「山田海運株式会社代表取締役山田栄吉」と訂正申立てたものであることが認められる。ところが、被告山田海運は、本訴の被告は、山田栄吉個人であるから、右訂正は、当事者の変更に該当し許されないものであると主張する、およそ、民事訴訟における当事者の確定には争いがあるが、もつぱら訴状の記載内容を全体として客観的合理的に観察して判定すべきものであるから、訴状に記載の当事者の表示のみからただちに当事者を判定すべきではなく、請求の趣旨および原因をも斟酌した訴状の全趣旨からこれを判定すべきであると解されるところ、原告の訴状の当事者の表示には、前記のとおり、被告として、「山田海運株式会社こと山田栄吉」と表示してあるので、これだけでは被告がはたして山田海運株式会社か山田栄吉であるかは必ずしも明瞭であるともいえないのであるが、しかし、さらにその請求の原因の記載をみると、原告は、約束手形の振出人に対して手形金の支払を訴求するものであることが明らかであり、ただその手形は「大阪市港区市岡元町二丁目四三番地(鳴門ビル三階)山田海運株式会社取締役社長山田栄吉」の振出にかかるものなるも、右会社の肩書住所地には右会社の設立登記がなされていなかつたので、右会社と山田栄吉とは同一人格であるとして前記の表示をしたものにすぎず、したがつて、右会社が設立登記ずみの会社である限り、右会社が被告であることは、その表示からしても明らかであると解するのを相当とする。もとより訴状の記載だけからは被告が右会社か山田栄吉個人かいちがいに判定し難いのであるが、本訴では山田は、右会社の代表取締役として訴訟代理人を委任して応訴し、原告も右会社が徳島県阿南市の本店所在地で設立登記ずみであることを知つたので、被告の「山田海運株式会社こと山田栄吉」という表示を「山田海運株式会社(代表取締役山田栄吉)」と訂正し、被告が右会社であることを明確に補正したものというべきである。

してみると、右は当事者の変更と目すべきものではなく、被告の表示の訂正と認むべきものであり、かような訂正は許されるべきことであるから、被告山田海運に対する本訴は適法であるということができる。(坂詰幸次郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!