大阪地方裁判所 昭和39年(わ)400号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決要旨〕運転免許証を携帯せず、道路交通法一〇九条の保管証を携帯して自動車を運転した場合、その保管証の有効期間が既に経過していても、運転免許証不携帯罪は成立しない。
(一部無罪の判断) 本件公訴事実の内、「被告人が昭和三九年二月八日午前一一時一〇分頃大阪市北区南森町一九番地先道路において、運転免許証を携帯しないで貨物用軽四輪自動車を運転した」との訴因については、被告人がその際運転免許証自体は携帯していなかつたけれども道路交通法一〇九条にいわゆる保管証を携帯していたこと、唯その保管証の有効期間が既に経過していたことが証拠によつて認められる。
右保管証は右法条により道路交通法九五条の適用について免許証とみなされていることは明らかであるが、有効期間経過後の保管証に果して右規定の適用に干し免許証にかわる効力が認められるかは問題である。
そこで此の点について考えて見るに、そもそも法が免許を受けた自動車運転者が自動車を運転する際、免許証を携帯することを義務づけ、これが違反に対し罰則を以て臨んでいるのは道路交通の安全を脅かす無免許者による自動車運転を抑制するため、免許を有することを立証する証明文書を携帯することによつて、運転免許制度の実効を確保することに在ると解せられる。従つて右規定は免許証の不携帯につき自動車運転者に存する主観的事由の如何を問わない形式犯的な側面を有することを否定できないが、保管証が、免許を有することの証明力の点において免許証と何等異ならないところから免許証とみなされていることにかんがみると、有効期間を経過したことにより右証明力の点にいささかも劣るところはないと考えられる本件保管証を携帯していた被告人に免許証不携帯の刑責を負わせることは相当でないと考えられる。従つて右訴因は結局罪とならないものと考えられるから刑事訴訟法三三六条によつて無罪の言渡をする。(原田修)