大判例

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大阪地方裁判所 昭和39年(わ)4852号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕罪となるべき事実

被告人は南海電気鉄道株式会社所有にかかる大阪市西成区海道町六四番地軌道用地の東側に隣接する同区今池町七番地所在木造二階建店舗一棟に居住占有していたが、これを増築するに際し、昭和三九年五月七日頃までの間にわたり、情を知らない大工柏木正次等をして新築の同店舗二階部分を幅約2.5米長さ約0.45米にわたつて右軌道用地上に突出して建築させ、もつて前記軌道用地を侵奪したものである。<中略>

よつて検討するに

一、被告人はその妻吉本幸子コト辛三連と共に本件家屋を居住占有している。同家屋は従来一部二階の居宅と店舗とになつており、店舗の部分(平家部分)に洗濯場、炊事場、その西北側に便所があつたが、昭和三九年三月頃から同家屋の改造をはじめ、従来の居宅部分の下の西北部に便所を造り、店舗の部分に二階を新設して新増改築を行つた。従来の居宅の西北側壁面は南海電気鉄道株式会社軌道敷地の上に出張つているが、新築された右二階部分は西北側壁において従来のそれより約0.45米右軌道敷地上に出張つており、その屋根は更に0.39米出張つている。そして右二階の長さは約2.7米である。

右二階の新築は昭和三九年四月中旬頃から始められていたところ、未だ完成しない同年五月七日頃から南海電気鉄道株式会社より前記の出張つた部分の工事中止とその収去方を要求されたにも拘らず、被告人及びその妻は敢て右工事を遂行し同六月一五日頃には既に完成させていた。

一、不動産の侵奪はその占有を妨げることによつて行なわれ、本件客体の不動産は土地であるところ、その占有はそれにもとづく権利行使不能な範囲に及ぶものであるからその上下に及ぶものというべく、従つて上下の妨害も土地の占有を妨げるものといわなければならない。

前記二階部分は本件家屋と一体をなしているが、他人の土地の占有を妨げるのは部分的でも可能であるから、前記軌道敷地との境界を超えて出張つている本件新築二階部分は少なくとも右土地の占有を妨げているものといわなければならない。そして被告人等は昭和三九年五月七日頃からは明らかにその事実を知りながら前記のとおり工事を完成させたものであるから、実質的にも右軌道敷地の占有を妨げているものといわなければならない。右妨害は所有権行使に対する侵害ともなり適法に処理されるべきものであるから法律上当然に規制の対象となるもので社会的加罰性も存するものといわなければならない。

一、犯罪の主体については、占有権の侵奪は事実上の問題であるから、侵害の方法も事実上の問題であり、侵害方法(行為)の現実の(事実上の)支配者が主体でなければならない。本件の侵害方法(行為)は二階の突出しによるものであるが、右二階は本件家屋の一部として家屋を占有居住してその経済的使用にもとづき利益を享受している被告人等の支配に属しているものであるから、被告人は犯罪の主体といわなければならない。家屋所有権又はその使用収益権の存否ならびに帰属のみによつて定まるものではない。(井上武次)

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