大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和39年(タ)19号 判決 1965年12月08日

主文

原告と被告の被後見人大橋章子とを離婚する。

原告と右大橋章子との間の長女大橋和子の親権者を原告に指定する。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告代理人は主文同旨の判決を求め、請求原因として、つぎのとおり述べた。

一、原告と大橋章子は、昭和二九年一二月一日結婚し、同三〇年五月二一日婚姻届をした夫婦で、同年一〇月一五日長女和子をもうけた。右章子については、昭和三九年一月八日大阪家庭裁判所の禁治産宣告の裁判が確定し、被告はその後見人に選任されている。

二、章子は結婚当初より異常な挙動があり、早朝より掃除と称して玄関の壁を水洗いしたり、人に会うのを嫌がつたり、原告と先妻寿子との間の昭和二四年一二月一日生れの幼い秀夫を放置して竹棒で突き合うこともあつた。昭和三二年秋頃より章子の精神障害はいよいよ顕在化し、前記和子(当時二才)に対し、泣いたり小便するといつて、馬乗りになつて首を締めたり、燃え残りの灰をゴミ箱に捨てて発火させるような挙動が続き、昭和三三年二月頃から実父の被告方に帰り、その後同年四月頃から精神病で入院している。章子の病状は強度のもので回復の見込みがないから、本訴に及ぶ。

被告代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、答弁として、請求原因の第一項の事実を認め、同第二項の事実中、章子が昭和三三年四月頃精神に一時的異常を来たして、同月六日茨木病院に入院したことは認めるが、その他の事実を争い、つぎのとおり述べた。原告は章子と結婚後間もなく新聞販売店の事務員を情婦として営業所に囲い、夜帰宅しないことが多く、又章子の妊娠五カ月の頃むりやりに中絶させ、そのため章子が身体の不調を訴えると、原告は殴る蹴るの暴行を加えて章子を虐待し、さらに原告は章子の早期治療を怠つた。これらの原告の行為が章子の精神病を誘発させたものである。章子は現在強度の精神病ではなく、回復の見込みのないものでもない。民法七七〇条一項四号は、精神病にかかつた配偶者の将来の療養生活などについてできる限りの具体的方法を講じ、ある程度において前途にその見込みのついた上でなければ、婚姻関係を解消させない趣旨と解すべきであるが、原告は章子の茨木病院の入院費を一切負担していない状態である。これら一切の事情を考慮するとき、原告の離婚請求は不当である。

証拠関係(省略)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例