大判例

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大阪地方裁判所 昭和39年(ワ)1133号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕被告が訴外乾旬子の承継人として訴外灰田茂生に対する大阪地方裁判所昭和三五年(レ)第二四五号建物収去土地明渡等請求控訴事件の判決に承継執行文の付与を受け、本件家屋を収去して、その敷地の明渡を求めるため、大阪簡易裁判所へ代替執行の申立をし、同裁判所が昭和三九年(サ)第二二三号事件として、「被告は、灰田茂生の費用をもつて本件家屋を第三者に収去させることができる」旨の決定を発したことは、当事者間に争がない。

ところで原告は、右債務名義たる判決の口頭弁論終結の日以前から本件家屋を独立に占有していると主張するのに対して、被告は、その事実を否認し、且つかかる主張をすること自体が不当であり、許されないと抗争するので、先ず原告の主張の許否につき判断する。

被告の前主乾旬子と灰田茂生間の右債務名義の形成された事件を本案として乾旬子の申立により灰田茂生所有の本件家屋につき占有移転禁止の仮処分執行がなされ、昭和三三年九月一日執行吏岡本照雄が本件家屋の点検執行をした際に、原告は同執行吏に対し「ここは灰田病院の看護婦宿舎で、止宿者数は一定しないが、七、八名が最高で常に四、五名は止宿している。食事は病院でするので、炊事はしてない。従業員の外には誰もいない。この整理簟司(四畳半の間に存在)も病院の物である」と説明していることは、当事者間に争がなく、原告本人は、右説明の動機につき「本案訴訟において灰田茂生が有利になることを願い事実に反して右の如く説明した。」と供述するのである。そして<証拠>によると、原告は、灰田茂生の雇人として右点検執行に立会つたものであり、当時の本件家屋の状況は、原告の説明を首肯させうる状況にあつたことが認められ、この認定に反する証拠はなく、更に<証拠>を綜合すると、右本案訴訟において灰田茂生側では、「本件家屋を灰田病院の看護婦宿舎として使用している」と原告の右説明に符合する主張をしていることが認められるのであつて、この認定に反する証拠もない。

以上の諸情況からして、仮に原告がその主張の如く本件家屋の自己占有者であつたとしても、被告の前主乾旬子がその点全く考慮を払うことなく本案訴訟を追行したのは当然と言うべく、原告の右言動がそのことに重要な一因を与えていることは、前記仮処分そして点検執行の趣旨からも断定しうるところである。即ち原告としては点検執行に際し、積極的に真実を述べる義務はなかつたとしても、作為的に虚偽の申告をなすことが許される筈はなくその虚構の事実が重要な前提となつて本件の債務名義が形成されるに至つたのであるから、乾旬子そしてその承継者である被告との関係において自らの言動により招いた不利益を甘受すべきであり、被告に対し不測の損害を蒙らしめる前記主張を異議事由として、本件債務名義にもとずく執行の排除を求めることは、信義則上許されないと言うべきである。(石田真)

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