大阪地方裁判所 昭和39年(ワ)2859号 判決 1964年8月04日
原告 長谷栄
被告 東和工業株式会社
主文
I 被告は、原告に対し、
(1) 金四三、七二〇円とこれに対する昭和三九年六月二七日以降完済に至るまで年六分の率による金員
(2) 金八五、一一二円
(3) 同年八月二六日の到来次第金四一、四八八円
(4) 同年九月二六日の到来次第金四〇、七二〇円
を支払え。
II 原告のその余の請求を棄却する。
III 訴訟費用は、被告の負担とする。
IV この判決は、I、III 項につき仮に執行することができる。
事実
原告は、昭和三九年六月二六日被告に送達された訴状に基き、
「被告は、原告に対し、金二一一、〇四〇円とこれに対する昭和三九年六月二七日以降完済に至るまで年六分の率による金員を支払え。」
との判決と仮執行の宣言を求める旨申し立て、
請求の原因として、
「原告は、別紙表示(イ)ないし(ホ)の各記載がある約束手形一通ずつを所持しており、被告は、これらの手形を振り出したものである。しかるに、被告にはこれらの手形につき任意支払の意思がなく、原告において右(イ)の約束手形の所持人としてこれを満期日に支払場所で支払のため呈示したが、支払を拒絶され、その後の再三にわたる請求も、効を奏しない。そこで、本訴により被告に対し、前示五通の約束手形に表示された金額の合計金とこれに対する訴状送達の日の翌日以降完済に至るまで商法所定の年六分の率による遅延損害金の支払を請求する。」
と述べた。
被告は、口頭弁論の期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しない。
理由
原告の主張事実は、民事訴訟法第一四〇条により、被告においてこれを自白したものとみなすべきである。右当事者間に争のない事実によれば、被告は、原告に対し、本件の口頭弁論終結の当時既に満期が到来していた別紙表示(イ)及び(ロ)の各約束手形に表示の各金額を支払う義務を負うことが、まず明らかである。また、原告が被告から右(イ)の手形の支払を得られぬ事情に徴し、本件の口頭弁論終結当時未だ満期が到来していない(ハ)ないし(ホ)の各約束手形に表示してある金額についても、原告において被告に対しあらかじめその支払を求める必要があると認むべきであり、かつ、その請求債権の存在は、当事者間に争のない事実からこれを肯認することができる。但し、その支払は、もとより各手形につき満期が到来しなければこれを受けることができない筋合であるから、原告が本判決言渡当時満期未到来の前示(ニ)及び(ホ)の各手形に表示の金額の即時支払を求めているのは、そのまま認容することができず、該請求中同金額の満期前の支払を求めている部分は、理由がないものである。
次に、本件の訴状が被告に送達された当時既に呈示期間が経過している別紙表示(イ)の約束手形については、被告において原告に対し、同手形に表示の金額に対する右送達の日の翌日以降完済に至るまで商法所定の年六分の率による遅延損害金を支払う義務を負うことが明らかである。しかし、右訴状送達の当時未だ呈示期間が経過していない別紙表示(ロ)ないし(ホ)の各約束手形に表示されている金額については、原告において被告を遅滞に付したことを肯認し得る具体的事実を主張するところがない。同(ロ)の約束手形については、その満期日に訴状の送達をみたのであるが、同手形には支払場所として第三者方払の記載がなされているのであるから、呈示期間内にあつて被告を遅滞に付するには、右記載の第三者方において手形を呈示することが必要であり、訴状の送達をもつてこれに代えることができないものと解すべきである。それ故、原告の本訴請求中、前示(ロ)ないし(ホ)の各約束手形表示の金額に対する遅延損害金の支払を求めている部分は、失当といわなければならない。
以上の理由により、原告の請求中、被告に対し、
(1) 別紙表示(イ)の約束手形に表示の金四三、七二〇円とこれに対する訴状送達の日の翌日にあたる昭和三九年六月二七日以降完済に至るまで商法所定の年六分の率による損害金
(2) 別紙表示(ロ)及び(ハ)の各約束手形に表示の合計金八五、一一二円
(3) 別紙表示(ニ)の約束手形の満期である同年八月二六日の到来次第同手形に表示の金四一、四八八円
(4) 別紙表示(ホ)の約束手形の満期である同年九月二六日の到来次第同手形に表示の金四〇、七二〇円
の支払を求めている部分を相当として認容し、これをこえる部分を失当として棄却することとし、なお、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九二条但書、仮執行の宣言につき同法第一九六条をそれぞれ適用し、主文のとおり判決するる。
(裁判官 戸根住夫)
別紙
約束手形の表示
(イ) 金額・四三、七二〇円、満期・昭和三九年五月二六日、支払地・大阪市、支払場所・株式会社神戸銀行関日支店、受取人・山本治子、振出日・昭和三八年二月二八日、振出地・大阪市、振出人・被告。なお、右受取人にかかる白地式裏書の記載がある。
(ロ) 金額・四二、八八〇円、満期・昭和三九年六月二六日。その他・(イ)の手形と同じ。
(ハ) 金額・四二、二三二円、満期・昭和三九年七月二六日。その他・(イ)の手形と同じ。
(ニ) 金額・四一、四八八円、満期・昭和三九年八月二六日。その他・(イ)の手形と同じ。
(ホ) 金額・四〇、七二〇円、満期・昭和三九年九月二六日。その他・(イ)の手形と同じ。