大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和39年(ワ)956号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕<証拠>を総合すると、被告会社の代理人と称する福本政徳と原告との間に原告主張のような内容の売買契約が成立し、原告は右福本に契約締結当日手附金として金一五〇、〇〇〇円を支払つたこと、原告は残金支払期日である昭和三八年三月一〇日までに、残金を調達できる見込がなかつたので、福本に期限の猶予を申入れ、同月八日に福本に金二〇〇、〇〇〇円を支払つて同人から残金支払期日を同年四月一〇日まで猶予してもらつたこと、さらに原告はなお右期日にも残金を支払える見込がなかつたので、同月九日に福本にさらに金二〇〇、〇〇〇円を支払つて再び残金の支払期日を同月末日まで猶予してもらつたことを認定することができ他に右認定を覆すに足る証拠はない。

原告は、右売買契約は被告の代理人たる福本政徳と締結したものであると主張し、被告は福本に代理権を授与したことなしと争うので、この点について考えるに、<証拠>を綜合すると、被告は本件物件を昭和三五年六月頃不動産売買仲介人である福本政徳を通じて買入れ、これを社宅として使用していたが、同三八年二月初頃これを他に売却しようとして、再び右福本にその売却方を依頼したこと、その際被告は、福本に被告会社の手には、代金として金一、五〇〇、〇〇〇万円が入れば、それ以上は福本の収入としていい旨を告げたこと、さらに被告会社としては、売却代金として右金額さえ入手できれば、その買主は誰でもかまわないとして、その買主の個性には全然重きを置いていなかつたこと、福本が原告から本件物件の売買手附金として金一五〇、〇〇〇円を受領して、これを被告に手交した際にも被告はなおその買主が誰であるかを福本に確かめても見なかつたこと、福本が前記認定のように原告から二回にわけて合計金四〇〇、〇〇〇円を内金として受領し、そのうち合計金二〇〇。〇〇〇円を二回に分けて被告に手交した際にも被告はなお買主が誰であるかを確かめてもみなかつたこと、以上のような事実を認定することができ、他に右認定を覆すに足る証拠はない。右認定のような事実にかんがみるときは、被告は本件物件の売却につき福本に代理権を授与したものと認めるのを至当とし、<証拠>中、被告会社は福本に本件物件売却の代理権を与えていなかつたとの部分はこれを措信せず、他に右認定を覆すに足る証拠はない。

以上説明のとおり、原告と被告代理人たる福本政徳との間に昭和三八年二月二二日に代金を一、五〇〇、〇〇〇円とする本件物件の売買契約が成立し、原告は同日手附金として金一五〇、〇〇〇円を右福本に支払い、なおその後二回にわたつて金四〇〇、〇〇〇円を内金として支払つたものである。

ところで、右売買代金の支払期日が昭和三八年四月末日まで延期されたことは前認定のとおりであるが、原告が右延期された残金支払期日までに被告に残金を支払い、またはその弁済の提供をしたとの点についての立証は全然ない。

本件物件が被告から水村政雄に売収され、同年五月六日その所有権移転登記手続を経由したことは<証拠>を綜合してこれを認めることができ、したがつて原告と被告との間の前記本件物件売買契約は被告の責に帰すべき事由によつて履行不能となつたものであるといい得るが、原告もまたその残代金支払期日までにこれを支払つていないこと前認定のとおりであるから、右のような場合には、原告は被告にのみその債務不履の責を問い、前記認定の約定による手附金一五〇、〇〇〇円の倍額を損害賠償として請求し得べき限りではないといわなければならない。しかし、その反面、被告にも債務不履行があるのであるから、被告は原告に対し、その受領した手附金一五〇、〇〇〇円を、約定により返還するを要しないということもできない。結局原告は、被告に対し、その交付した手附金と同額の金一五〇、〇〇〇円の返還を請求し得るというべきである。(高林克己)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!