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大阪地方裁判所 昭和40年(わ)1730号 判決 1969年11月04日

本店所在地

大阪府吹田市泉町五丁目一番一八号

太陽鉄工株式会社

右代表者代表取締役

北浦富太郎

本籍

大阪府吹田市泉町五丁目一番一八号

住居

右同所

太陽鉄工株式会社代表取締役

北浦富太郎

明治三三年一月四日生

右両名に対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官生駒啓出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告会社太陽鉄工株式会社に対し判示第一の罪につき罰金一五〇万円に、判示第二の罪につき罰金一二〇万円に処する。

被告人北浦富太郎に対し判示第一の罪につき罰金八〇万円に、判示第二の罪につき罰金七〇万円に処する。

被告人北浦富太郎においてその罰金を完納することができないときは、金三、〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社は、大阪府吹田市泉町五丁目一番一八号に本店を置き、機械器具の製造販売および修理を営むもの、被告人北浦富太郎は、同会社の代表取締役として会社業務を統轄するものであるが、被告人北浦は被告会社の業務に関し法人税を免れることを企て、被告会社取締役総務部長桜井保と共謀の上、

第一、昭和三六年四月一日より昭和三七年三月三一日までの事業年度において、同社の所得金額が三三、三六三、三三七円、これに対する法人税額が一二、二一五、六八〇円であるのに拘わらず、公表経理上架空材料仕入および架空経費の計上等の不正手段により、所得金額中一七、六七四、九一三円を秘匿した上、昭和三七年五月三一日大阪府茨木市茨木税務署において、同署長に対し、右事業年度分の所得金額が一五、六八八、四二四円、これに対する法人税額が五、五〇一、四六〇円である旨過少に記載した法人税確定申告書を提出し、同年度分の法人税六、七一四、二二〇円を免れ、

第二、昭和三七年四月一日より昭和三八年三月三一日までの事業年度において、同社の所得金額が二九、六七〇、〇四四円、これに対する法人税額が一〇、七六九、八二〇円であるのに拘わらず、公表経理上架空材料仕入および架空経費の計上等の不正手段により、所得金額中一三、三九八、五二一円を秘匿した上、昭和三八年五月三〇日大阪府茨木市茨木税務署において、同署長に対し、右事業年度分の所得金額が一六、二七一、五二三円、これに対する法人税額が五、六八〇、五七〇円である旨過少に記載した法人税確定申告書を提出し、同年度分の法人税五、〇八九、二五〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一、第一、五回公判調書中の被告人北浦富太郎(以下単に被告人という)の各供述部分

一、被告人の検察官に対する各供述調書

一、収税官吏作成の被告人に対する昭和三八年九月二〇日付、同月二五日付、同年一一月一九日付各質問てん末書

一、桜井康正こと桜井保、河江敏明、金城武八の検察官に対する各供述調書

一、収税官吏作成の桜井康正こと桜井保(昭和三八年九月二〇日付、同年一一月一三日付)、河江敏明(同年九月二〇日付、同年一一月六日付)、古田英一、梅田実、光田豊吉、浜崎正二、森岡隆、金城武八に対する各質問てん末書

一、第四回公判調書中の証人河江敏明の供述部分

一、河江敏明作成の表二〇枚(但昭和四三年一一月一一日付弁護人意見陳述書末尾添付のもの)

一、収税官吏武田寿郎作成の昭和三九年一月三〇日付調査書(金融機関関係)および同月三一日付各調査書(金融機関関係)および同月三一日付各調査書(四通、修正総勘定元帳)

一、収税官吏中山明一(四通)、同内藤修二、同武田寿郎(昭和三八年一二月二八日付)作成の各調査書

一、収税官吏作成の各現金預金有価証券等現在高検査てん末書

一、中村文利、山田ちづ(二通)作成の各確認書

一、岡本徳太郎作成の登記簿謄本

一、検査事務官作成の電話聴取書

一、押収してある資産負債元帳四冊(昭和四〇年押第一一六二号の一)、金銭出納帳七冊(同号の二、二二、二五)、銀行勘定帳四冊(同号の三)、手形受払帳五冊(同号の四、七)、経費明細帳四冊(同号の五)、買掛帳五冊(同号の六)、手形支払控綴二綴(同号の八、九)、架空経費伝票綴一綴(同号の一〇)、鋼材架空仕入明細表一綴(同号の一一)、個人収支関係メモ綴一綴(同号の一二)、銀行関係雑書綴一綴(同号の一三)、三六年個人収支計算書綴一綴(同号の一四)、三七年個人収支計算書綴一綴(同号の一五)、普通預金通帳一冊(同号の一六)、印鑑八五個(同号の一七、一八)、銀行メモ六枚(同号の一九)、ノート六冊(同号の二〇、二一、二三、二四)

判示第一の事実につき

一、茨木税務署長平岡喜志雄作成の証明書(添付の被告人会社の昭和三六年度分法人税申告書類写共)

一、収税官吏武田寿郎作成の脱税額計算書(但昭和三六年度分)

一、収税官吏作成の被告人に対する昭和三八年一一月二一日付質問てん末書

一、石原敏男の検察官に対する供述調書

一、収税官吏作成の桜井康正こと桜井保(昭和三八年一一月一八日付)、石原敏男に対する各質問てん末書

判示第二の事実につき

一、茨木税務署長平岡喜志雄作成の証明書(添付の被告人会社の昭和三七年度分法人税申告書類写共)

一、収税官吏武田寿郎作成の脱税額計算書(但昭和三七年度分)

一、収税官吏作成の桜井康正こと桜井保(昭和三八年一一月二〇日付)、河江敏明(同月一三日付)に対する各質問てん末書

一、佐藤充次作成の確認書

(法令の適用)

被告人北浦の判示各所為は、いずれも昭和四〇年法律三四号法人税法附則一九条により改正前の法人税法(昭和二五年法律七二号)四八条一項刑法六〇条に該当するので所定刑中いずれも罰金刑を選択し、被告会社については、その代表取締役である被告人北浦が会社の業務に関し前記法人税法四八条一項の各違反行為をしたものであるから、同法五一条一項により同法四八条一項所定の罰金刑を課すべきところ、被告人両名の判示第一、第二の各罪はそれぞれ刑法四五条前段により併合罪となるところ、罰金刑については、被告人両名の判示第一の罪に関し、いずれも昭和四〇年法律三四号法人税法附則一九条により昭和三七年法律四五号(法人税法の一部を改正する法律)によつて削除される前の法人税法五二条の適用をうけて刑法四八条二項の適用が排除され、この罪だけの罰金刑を科することになるので、被告人両名につきそれぞれ判示第一、第二の各罪ごとに、その所定罰金額の範囲内で、処断することとし、被告人北浦については、判示第一の罪につき罰金八〇万円、判示第二の罪につき罰金七〇万円に、被告会社については判示第一の罪につき罰金一五〇万円に、判示第二の罰につき罰金一二〇万円に各処し、被告人北浦については、刑法一八条を適用して、右罰金を完納することができないときは、金三〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

(被告人北浦富太郎に対して罰金刑をもつて処断した理由)

被告人北浦の本件犯行は、その動機を見るに、私腹を肥やす意図に出でたものではなく、自己が永年苦労して築き上げてきた事業を愛するあまり、将来の不況時、或いは設備の拡張に備えて資金を蓄積し、もつてその基盤を確立しようと考えたものと認められる上、本件の各事業年度における総所得に対する隠匿所得の割合はいずれも他の法人税法違反事件に比すれば低く、また本件につき査察を受けた後は、深く反省し、昭和四一年までに更生決定どおりの追加税および重加算税、延滞金等を完納し、爾来現在に至る迄他から役員二名を入れて会社の体質改善を図るとともに、相談役として、公認会計士、弁護士を迎え、その指導の下に健全明朗な経理を期しており、将来再びかかる犯罪を繰り返す虞れもないものと認められるし、同被告人が過去になんらの前科前歴なく、これまでひたすら事業の発展に打ち込んできたこと等の事実も併せ考えて、同被告人に対して罰金刑をもつて処断することとした。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 下村幸雄 裁判官 荒木恒平 裁判官 棚橋健二)

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