大判例

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大阪地方裁判所 昭和40年(わ)2982号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一、弁護人らは、第一に、「被告人両名に対する本件公訴の提起は日本共産党の正当な選挙運動、政治活動の抑圧を意図してのものであるから公訴権を濫用したものとして無効である。即ち、本件公訴事実によると、被告人両名は九軒の戸別訪問と六人の選挙人らに対し公選法違反の文書を頒布したことになつているが、仮にこの事実があつたとしても、本件参議院議員通常選挙における昭和四〇年一二月三一日現在の違反別終局処理人員とその率を法務省刑事局調査による犯罪白書によつてみると、違反者は一七、五一〇人、うち買収が九、九六二人で約五九パーセントを占め、文書違反が三、七七〇人、戸別訪問は一、七八三人となつていて、買収で公判請求したのが一、〇二五人で10.3パーセント、略式請求が二、〇五五人で20.66パーセント、起訴猶予は六、〇四七人で60.7パーセントとなつているのに対し、戸別訪問で公判請求したのは六六人で3.7パーセント、略式請求が一、〇三二人で57.9パーセント、起訴猶予は六四七人で36.3パーセントとなつている。そして買収は殆んど自民党か保守系であるのに対し日本共産党は全くないのが実状であると共に、右戸別訪問で公判請求された六六人の中には被告人両名が含まれていることも明白であるところ、検察官はこの六六人の公判請求の具体的根拠を明らかにしていない。したがつて、被告人両名に対する公判請求が、公職選挙法違反事件の公判請求その他の手続が通常投票日後において行なわれている実情にあるのに対し、右投票日前に敏速に行なわれていることと、右事情からするならば、被告人両名に対する本件公訴の提起は被告人両名が日本共産党の候補者のために活動したことを決定的理由にしているものということができる。よつて本件公訴の提起は公訴権を濫用したものとして無効であるから公訴棄却されるべきである。」。

旨主張する。

二、そこで以下右主張について判断することにする。

まず、第一の公訴権濫用の主張であるが、なるほど弁護人らの主張のとおり公訴の提起が合法な特定政党の正当な選挙運動、政治活動の抑圧を意図してなされるときは公訴権の濫用としてその公訴は無効となることがあるというべきであるが、これは刑事訴訟法二四八条(起訴便宜主義)の立法趣旨および訴訟行為理論からするならば右意図が明白である場合に限ると解すべきである。ところが、被告人両名に対する本件公訴の提起については、全証拠によるも右意図を認めるに足る証拠がなく、また弁護人らの主張するような事情が仮にあつたとしても同事実をもつて直ちに右意図が明白に存在するということはできない。

(藤枝忠了)

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