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大阪地方裁判所 昭和40年(わ)5444号 判決 1968年4月22日

本店所在地

大阪市南区河原町一丁目一、五三七番地

利源企業株式会社

右代表者代表取締役

劉道明

本籍

台湾台北市大原路三号

住居

豊中市春日町四丁目一七七番地の四

会社役員

劉道明

大正二年一月一五日生

右利源企業株式会社および劉道明に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官丸尾芳郎出席のうえ審理し、つぎのとおり判決する。

主文

被告人利源企業株式会社を罰金一六〇万円に処する。

被告人劉道明を懲役五月に処する。

被告人劉道明に対し、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

訴訟費用中証人林来、同坂田泰および同斉藤昭に支給した分は、被告人両名の連帯負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人利源企業株式会社(以下単に被告会社という。)は、大阪市南区河原町一丁目一、五三七番地に本店を置き、各種自動販売機および電視器具の製造、販売、不動産の売買およびビルディング、共同住宅等の賃貸、清涼飲料水の製造販売ならびに遊技場経営などを営業目的とするものであり、被告人劉道明(以下単に被告人という。)は、被告会社の代表取締役として、右会社業務の一切を統括しているものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、昭和三八年四月一日から昭和三九年三月三一日までの事業年度において、被告会社の所得金額が二八、七〇八、七八九円、これに対する法人税額が一〇、六八二、四五〇円であるのに、売上の一部を除外する不正な方法により、所得金額中二一、四六九、一四九円を秘匿したうえ、昭和三九年五月二七日、所轄の南税務署において、同署長に対し、右事業年度の所得金額が七、二三九、六四〇円、これに対する法人税額が二、六一七、二〇〇円である旨虚偽の法人税額確定申告書を提出し、もつて、被告会社の同事業年度の法人税額中八、〇六五、二五〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

一、被告会社の登記簿謄本

一、被告会社の昭和三八年度法人税額確定申告書謄本

一、収税官吏作成の法人税決議書写

一、銀行調査書類(収税官吏作成の調査てん末書一〇通)

一、株式会社住友銀行日本一支店長植村登作成の報告書

一、山一証券株式会社難波支店中瀬嘉夫作成の「確認書」

一、収税官吏荒木賢三ほか二名作成の昭和三九年九月二一日付調査てん末書

一、収税官吏藪一雄ほか一名作成の同月二五日付調査てん末書

一、林正之助作成の上申書

一、株式会社協和組長谷川和重作成の「確認書」および同前田末夫の「供述書」

一、収税官吏大黒隆幸作成の調査書

一、株式会社関西相互銀行梅田支店作成の定期預金元帳写

一、株式会社住友銀行難波支店作成の証明書

一、押収してある貸出極秘申請書等綴一冊(昭和四一年押第二二七の1)のうち、山田健司作成の昭和三八年二月一日付「相互掛金及び定期積金明細表」

一、同貸出申請書綴一冊(同押号の2)のうち、山田健司作成の同日付「相互掛金及び定期積金明細表」

一、同有価証券担保記入帳一冊(同押号の3)

一、同特利付定期預金記入帳一冊(同押号の4)

一、同定期預金残高表一綴(同押号の5)

一、同定期預金カード一綴(同押号の6)

一、同加入者カード一綴(同押号の7)

一、同預り証一通(同押号の8)

一、同被告会社の元帳三冊(同押号の9.10および11)

一、同借用証一通(同押号の12)

一、同株式会社常盤会館の元帳二冊(同押号の14および15)

一、同給与台帳三冊(同押号の16.17および18)

一、第三回公判調書中証人平井隆三の供述部分

一、第六回および第七回公判調書中証人山田健司の各供述部分

一、第八回公判調書中証人斉藤昭の供述部分

一、第九回公判調書中証人謝坤蘭の供述部分

一、斉藤昭の検察官に対する供述調書

一、謝坤蘭の検察官に対する供述調書

一、収税官吏の奥川敬三に対する質問てん末書二通

一、収税官吏の豊村美智子に対する質問てん末書二通

一、収税官吏の被告人に対する質問てん末書一〇通

一、被告人の検察官に対する昭和四〇年六月一六日付供述調書

一、被告人の上申書(ただし後記のとおり措信しない部分を除く。)

(被告会社の所得金額の算定について)

一、検察官は、本件事業年度における被告会社の売上除外による簿外資産を、被告会社の簿外銀行預金と被告人の個人資産と混合しているものに区分し、後者の算出については「まず被告人個人の収入、支出の金額を確定し、この金額を期中における被告人の個人財産としている被告会社の簿外財産額より差引いて、これにより求められた金額を被告人への貸付金(社長貸付金)として処理」すべきものとしている。しかし、第三回公判調書中証人平井隆三の供述部分、第八回公判調書中証人斉藤昭の供述部分、収税官吏の被告人に対する昭和三九年九月一六日付質問てん末書および被告人の検察官に対する昭和四〇年六月一六日付供述調書によると、右の銀行預金(近畿相互銀行難波支店における鈴木弘一および吉村史郎名義の各普通預金ならびに関西相互銀行梅田支店における吉川玲子および山川勝名義の各積立預金)には、被告会社の売上除外の金員のほか被告人個人の資金も混入しており、検察官主張の「社長貸付金」の預貯金と区別できないものであることが認められる。

そうして、前掲証拠によると、被告会社の売上除外による簿外財産は別表(一)のとおりであり、これによつて算出される所得金額および法人税額は別表(二)のとおりであることを認めることができる。

二、ところで、検察官主張の売上除外による秘匿所得額は三〇、八九七、九五〇円であり、これと判示認定額との差額の内訳は別表(一)に表示するとおりであるが、以下この内訳について説明する。

(一)  銀行預金について

1 近畿相互銀行難波支店における劉道明名義、昭和三八年四月一五日預入、金額一五〇万円、証書番号三五四八三号の定期預金(検察官冒頭陳述書三2(一)<48>

検察官は、右預金は被告人に属するものとして、前記「社長貸付金」中の預貯金に計上し、期中増加分として処理している。しかし、右預金は、株式会社常盤会館が同銀行から借入れた一、三〇〇万円の一部を預入れたもので、右常盤会館の預金であることは、銀行調査書類中収税官吏大黒隆幸ほか二名作成の調査てん末書、押収してある同会社の昭和三八年度元帳(前同押号の15)および第八回公判調書中証人斉藤昭の供述部分によつて明白である。

したがつて、右一五〇万円は検察官主張の右期中増加分から減額すべきものである。

2 関西相互銀行梅田支店における大森昌行名義、昭和三八年二月二八日預入、金額四〇〇万円、証書番号四七五七の定期預金(「被告人の主張」と題する書面第二2)

右預金が存在していたことおよび同年九月五日これが解約され、右大森名義による同銀行からの四〇〇万円の借入金の返済にあてられていることは、収税官吏大黒隆幸作成の調査書、同銀行の定期預金元帳写および第八回公判調書中証人斉藤昭の供述部分によつて明らかである。

そうして、第六回および第七回公判調書中証人山田健司の各供述部分、第九回公判調書中証人謝坤蘭の供述部分ならびに押収してある貸出極秘申請書綴一冊(前同押号の1)のうち、昭和三八年二月二六日付「明光商事(株)取引残高推移表」(控)および同月二五日付「三八年二月現在謝坤蘭及び劉道明関連取引明細表」(控)によれば、明光商事株式会社取締役謝坤蘭は、同会社のため、関西相互銀行梅田支店から金三、〇〇〇万円の融資を受けるに際し、同銀行の要請によりいわゆる協力預金をする必要があつたため、被告人に対し、金四〇〇万円を同銀行に預金することを依頼し、その承諾を得て被告人から右同額の現金を預かり、同月二八日同銀行に対し、これを大森昌行(架空)名義で定期預金したものであることが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

また、以上の証拠によれば、被告人は、同年七月三一日、同銀行から大森昌行名義で金四〇〇万円を借り受け、そのうち、二五〇万円は謝に貸与したが、同年末までに返済を受けており、前記四〇〇万円の定期預金の利息九〇、四二四円も、同年九月六日ごろ、被告人に支払われていることが明らかである。

検察官は、右大森名義の定期預金について、被告人はその資金の出所を明らかにせず、その後結局被告人の手中に帰した金四〇〇万円が、被告会社の預金に混入されて期末に存在したとの証拠もないから、右四〇〇万円は本件犯則所得の算定に影響がない旨主張する。

第九回公判調書中被告人の供述部分によれば、右定期預金の四〇〇万円は、銀行預金から一〇〇万円か一五〇万円出し、その余は手もとにあつた個人の金を出したというのであり、被告人の当公判における供述によれば、大森名義で借り受けた金四〇〇万円のうち、謝に貸与した残りの一五〇万円および同年末までに謝から返済を受けた二五〇万円の使途は記憶がないというのである。しかし、さらに同供述内容を検討すると、右一五〇万円については「手もとに三〇〇万か四〇〇万の金があるので、それと混じつて会社で使つたかどうしたかわからない。」のであり、手もとにおいてあつた三〇〇万円か四〇〇万円というのは「自分の会社に対する今までの回転資金として銀行に預金したり出したりした金である。」というのである。また、謝から同年末までに返済を受けた二五〇万円については「返してくれた金はいずれも自分の手もとの金と混じつて何かに使うときもあり、あるいはまとめて預金する場合もあり、」「会社の普通預金に預金したり、各方面に渡している。」というのである。これらの供述は、収税官吏の被告人に対する昭和三九年九月一六日付質問てん末書および第九回公判調書中証人斉藤昭の供述部分に照らし措信することができる。

さらに、平井隆三および被告人の検察官に対する各供述調書によれば、被告人は被告会社のパチンコ部門の経理事務担当者である平井隆三に対し、被告会社の売上除外のほか毎月三〇〇万円ないし五〇〇万円位の現金を交付し、近畿相互銀行難波支店の架空名義の普通預金口座に預入れさせていたこと、この普通預金は一か月毎に解約し、その払戻金員は被告人が受領していたことが明らかである。

以上の事実に徴すると、前記大森名義の定期預金四〇〇万円は、「法人、個人のいずれに帰属するか区別できない」ものに該当すると認めるのが相当であるから、別表(一)の銀行預金の三八、三、三一現在高に計上し、期中消滅分として処理すべきものである。

したがつて、右1.2の預金額の合計五五〇万円が、検察官主張の簿外財産から減額さるべきものである。

(二)  個人収入残について

右(一)の2の認定によれば、大森昌行名義の定期預金の利息九〇、四二四円は、これを期中における被告人の個人収入として計上すべきものであることは明らかである。

また、第三回公判調書中証人平井隆三の供述部分、第八回公判調書中証人斉藤昭の供述部分、被告人の検察官に対する供述調書および銀行調査書類中収税官吏大黒隆幸ほか二名作成の調査てん末書によれば、近畿相互銀行難波支店における鈴木弘一、本田林一、永田信一、豊田元一、木村一郎、吉田岳夫、石川一夫、関口英二、松本宏、永田耕三、浅岡竜男、米川義明、吉村史郎(以上いずれも架空人)名義の各普通預金は、鈴木弘一および吉村史郎(両名については前に認定したとおり)以外の預金も、被告会社の売上除外の金員と被告人個人の資金が混合して預入れられたもので、両者が区別し難いものであることおよび右鈴木弘一ほか一二名名義の期中における預金利息の合計は五五、三七七円であることを認めることができる。このように、右普通預金には、いずれも、被告人個人の資金が混入しているものと認められる以上、検察官が「社長貸付金」として処理すべきものとしている「預貯金」の利息と同様、期中における被告人の個人収入として計上するのが相当である。

したがつて、前記大森名義の定期預金利息九〇、四二四円と右普通預金利息五五、三七七円の合計一四五、八〇一円が、検察官主張の個人収入残額に加算さるべきである。

(三)  台湾における外貨

銀行調査書類中収税官吏堅田泰博ほか一名作成の調査てん末書によれば、住友銀行難波支店の劉道明名義の普通預金口座に、台湾からの送金としてつぎのとおり入金されていることが明らかである。

<省略>

ところで、第八回公判調書中証人斉藤昭の供述部分によれば、本件犯則事件の調査を担当した同人は、調査当時、右台湾からの送金については被告人の方から主張がなく、その入金後の払戻の状況からみて、右普通預金をいわゆるトンネル預金である判断し、犯則所得額の算定には考慮しなかつたことが認められる。しかし、右調査てん末書の記載自体からは、「台湾から送金された直後に送金額と同額かまたは同額に近い金額を引出している」(右供述部分)事実を認めることはできず、検察官が主張するように「単なる送金の取次」とみることもできない。

また、台湾からの右各送金の名宛人に異同のあることは、検察官の指摘するとおりであるが、以上の各証拠および被告会社の登記簿謄本によると、名宛人李樹全は、かつて被告会社の取締役をしていたものであるが、被告人宛の場合と同様、いずれも「トキワ会館内」とされていること、同人に対する送金人となつている黄政旺は検察官主張の「被告人が台湾から送金を受けた預かり金」の送金人名(収税官吏藪一雄ほか一名作成の昭和三九年九月二五日付調査てん末書)と同一であること、他の送金人名しんたにおよび沈家栄は被告人宛と同一であることおよび右各送金分はその都度被告人の前記普通預金口座に振込まれた後、その他の預入金とともに払戻されていることが明らかであり、これらの事実を綜合すると、前記外貨は、いずれも被告人に対して送金されたものと推認することができる。

被告人の上申書によれば、被告人は、台湾において外貨を保有し、台湾に居住する 学泉に預託してあり、必要に応じて送金させているものであり、前記普通預金口座に振込まれたものも、被告人の台湾における外貨を送金させたものであることが一応認められ、これに反する証拠はない。

以上の事実によると、右外貨を含む住友銀行難波支店の前記普通預金は、被告人の他の銀行預金と混合しており、当期末においては、被告人の台湾における外貨は三、七八三、〇〇〇円減少しているものと認められるから、被告会社の簿外財産算出にあたつては、これを期中における被告人の資産減少として計上すべきものである。

(弁護人の主張に対する判断)

一、李秀萬に対する貸付金について

弁護人は、被告人は三友興業株式会社代表取締役李秀萬に対し、昭和三五、六年ごろから融資し、昭和三八年三月三一日現在六〇〇万円の貸付金があり、同年四月一九日二七〇万円、四月二四日一五〇万円、五月二四日一八〇万円合計六〇〇万円をいずれも保証小切手で返済を受け、これを住友銀行難波支店の被告人名義の通知預金に入金したが、この預金は他の銀行預金と混合して当期の被告人の資産に加わつており、貸付金としては当期末において消滅しているものである旨主張し、被告人も上申書において同旨のことを述べている。

銀行調査書類中収税官吏堅田泰博ほか一名作成の調査てん末書によると、同銀行の被告人名義の普通預金口座に、弁護人主張の日時に、主張のとおりの金額の保証小切手が入金されていることが明らかであるが、これが李秀萬から支払われたものであることを認むべき証拠はない。

また、当裁判所の証人林来、同坂田泰に対する各尋問調書および三友興業株式会社の登記簿謄本(昭和三五年四月二五日付)によつても、被告人が同会社代表取締役李秀萬(なお、被告会社の登記簿謄本によると同人は被告会社の設立当初の取締役であつた。)に対し、昭和三五、六年ごろ「何百万円か」を貸与していたことおよび昭和三八年五、六月ごろ李秀萬が被告人にそれまでの債務を弁済したことが認められるに止まり、昭和三八年三月三一日現在における被告人の李秀萬に対する貸付金が六〇〇万円あつたことを認むべき証拠はない。

したがつて、被告人の上申書中この点に関する記載は、これを措信するに由なきものというほかなく、弁護人の前記主張は採用できない。

二、借入金について

弁護人は、被告人は、謝坤蘭から昭和三八年四月二〇〇万円、同年五月一〇〇万円、同年六月四〇〇万円の合計七〇〇万円を借入れ、昭和三九年七月これを謝に返済したから、本件犯則所得から右七〇〇万円を減額すべきである旨主張する。

この点について、被告人は、収税官吏斉藤昭に対しては「昭和三七年七月、ときわホールへの保証金、株式会社常盤会館の幸福相互銀行に対する債務の一部立替払、その他の資金の金策に困り、謝坤蘭から七〇〇万円の現金を借入れ、昭和三九年七月静境観光株式会社増資の際、関西相互銀行梅田支店に対する通知預金(架空名義)六〇〇万円を解約した分と他の預金から返済した」旨供述していたが、(昭和三九年一一月二〇日付質問てん末書)、検察官に対しては「昭和三七年六月ときわ会館からときわホールを借りるについて三、〇〇〇万円の保証金を入れる際、謝坤蘭から七〇〇万円借受けたが、同年末返済し、さらに三八年六月株式会社常盤会館が近畿相互銀行から五、〇〇〇万円借入れる際、二、五〇〇万円の裏預金をする必要があつたため、謝から七〇〇万円借受け、三九年七月これを返済した。」旨供述していた。(四〇年六月一六日付供述調書)。謝坤蘭も、同年六月一七日付検察官調書において、「三七年夏ごろ、劉道明がときわ会館に三、〇〇〇万円の保証金を入れる際、同人に現金で七〇〇万円貸し、同年末までに返済を受けた。つぎに三八年五月末か六月初ごろ、劉道明が社長をしている株式会社常盤会館が近畿相互銀行から五、〇〇〇万円借入れる際、同銀行にその半額位の協力預金をするのに足りないというので、七〇〇万円貸し、三九年七月同人から返済を受けた。」と述べている。

しかし、昭和三八年六月一〇日株式会社常盤会館が同銀行から五、〇〇〇万円借受けるについて、二、五〇〇万円の協力預金(または裏預金)をした事実のないことは銀行調査書類中収税官吏大黒隆幸ほか二名作成の調査てん末書および収税官吏荒木賢三ほか一名作成の昭和三九年一一月一四日付調査てん末書によつて明らかであり、被告人も、その後供述を変え(昭和四〇年九月二二日付検察官調書)、結局「謝から借りた七〇〇万円が近畿相互銀行に対する二、五〇〇万の預金に含まれていると述べたのは勘違いであり、当時一、〇〇〇万円位の金が必要であつたように思うが、七〇〇万円を何に使つたか記憶がなく、これを一たん銀行に預金したかどうかもはつきりしない。」と前記供述を訂正するに至つている(同月二八日付検察官調書)。

以上のとおり、被告人の右七〇〇万円の貸借に関する記憶はあいまいであり、謝坤蘭の供述も事実に符合しないのであり、右七〇〇万円の貸借およびその返済に関する以上の各供述を裏付ける事実としては、収税官吏荒木賢三ほか一名作成の昭和三九年一一月一八日付調査てん末書によつて、関西相互銀行梅田支店における若林恵介ほか二名名義の通知預金合計六〇〇万円が、同年七月九日解約されていることを認め得るにすぎない。被告人の上申書には、弁護人の主張と同旨の記載があるが、ほかに右七〇〇万円の貸借およびその返済の事実を認むべき証拠はなく、被告人の右供述経過および謝坤蘭の右供述に照らし、右上申書を措信することは困難である。

したがつて、この点に関する弁護人の主張も採用できない。

(法令の適用)

被告人の判示所為は法人税法(昭和四〇年法律三四号、新法)附則一九条、同法による改正前の法人税法(昭和二二年法律二八号、旧法)四八条一項に該当するので、所定刑中懲役刑を選択し、その刑期範囲内で被告人を懲役五月に処し、情状により刑法二五条一項を適用し、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

被告人の判示所為は被告会社の業務に関してなされたものであるから右新法附則一九条、右旧法五一条一項、四八条一項により、所定罰金額の範囲内で被告会社を罰金一六〇万円に処する。

訴訟費用中、証人林来、同坂田泰および同斉藤昭に支給した分は、刑事訴訟法一八一条一項本文、一八二条を適用し、被告会社および被告人の連帯負担とする。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 伊沢行夫)

(別表)

(一) 被告会社の売上除外による簿外財産 (単位円)

(検察官の冒頭陳述書における「銀行預金」および「社長貸付金」)

<省略>

秘匿所得額(イ)-(ロ) 21,469,149

(二) 所得額および法人税額

<省略>

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