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大阪地方裁判所 昭和40年(ワ)1257号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕第三、争いない事実

一、傷害自動車事故発生

発生時 昭和三九年九月八日午後二時三〇分頃

発生地 大阪市阿倍野区阿倍野筋八丁目七六番地先三差路附近北行第一区分帯路上

事故車 小型貨物自動車プリンス、大四む七七〇九号

直接の操縦者 訴外池田幸之助

受傷者 原告(小型乗用車運転中)

態様 原告車が北行して右路上で東行路に右折しようとした際、後続してきた事故車が追突し、ために原告車は一部損傷し、原告は受傷した。

二、責任原因について

(一) 被告正治は本件事故車をその経営する精肉販売業のために運行の用に供している者である。

(二) 当日被告五月は被告正治の被用者として事故車を運転していたが、身体の不快のため同乗していた無免許の訴外幸之助に運転を委ねて走行中、本件事故に遭遇した。

第四、争点および判断

一争点

(一) 責任原因

1 原告の主張

被告五月は事故当時専ら運転者の責を負つていた者で、訴外幸之助に運転を委ねていた間も助手席にあつたから運転者の地位を離脱していない。従つて前方注視義務を怠つた訴外幸之助の過失はすなわち被告五月の不法行為であり、被告正治もまた運行者責任を免がれない。

2 被告の主張

本件事故は原告が事前の事故車追抜が不適当であつたこと、右折の合図が遅れるなどの過失によるものである。

仮に訴外幸之助に過失があつても被告五月は事故時運転者の地位になかつたし、また被告正治は訴外幸之助を雇用していたものでなく、運転を許容していたものでもないから、何れも責を負うべくもない。

(二) 損害(原告主張)

1 傷害の内容

外傷性頸椎障害(ウイツプラツシユ障害)、外傷性大後頭神経症候群

2 損害の数額

(1) 休業による逸失利益 金二二一、五九一円

原告は都島交通株式会社運転手、同労組役員であるが、事故のため、現在まで休業を余儀なくされその間給与、組合手当などの収入を失つた。

平在給与月二〇、六九四円

二裁判所の認定

(一) 責任原因について

被告五月は当日被告正治の畜肉運搬のため、事故車の運転者として運転中、途中で遊びに行く親類の訴外幸之助に同乗を許したが、たまたま気分が悪くなつたため、幸之助が当時一六才の若年でしかも無免許であることを知りながら敢て同人に運転を委ねた。そして自らはその傍らの助手席に同乗していたが、幸之助は約三〇〇メートル前から先行原告車の存在を知り、時速四〇キロで約五メートルの危険な車間距離しかないのに、前方注視が十分でなかつたので、右折のため停止にかかつた原告車の指示器、信号灯の点滅に気付くのが遅れ、追突するにいたつた。被告五月も原告車を認めていた。

右状況下では、被告五月は気分が悪くなつた時、直ちに運転を中止するか適当な運転有資格者にのみ運転を委ねるべきであつて、若年の無資格者に操縦をまかせて運転の継続をはかつたこと自体、現今の交通状況のもとでは看過できない不注意といえるが、さらに、下車、もしくは事前から失神しているとか、強制力で運転者の地位を奪われているとかいう事情がない限り、同乗走行中運転者の地位を離脱していないものというべく、無資格で委ねられた幸之助の操縦上の不注意は直ちに被告五月の責となるものであり、被告五月の不法行為責任、従つてまた被告正治は自賠法第三条の免責事由の立証がないというべく、運行者責任はまぬがれないところである。<証拠略>

(二) 傷害について

1 傷害

原告主張のとおり認められる。<証拠略>

2 数額

(1)逸失利益 金一五一、二四八円

別紙一、「計算書」のとおり右金額の限度で認められる。

原告は上記会社運転手として平均月収二〇、六九四円を得ていたが事故後四〇年一〇月現在にいたるまで運転手として復帰できず休業を続け一二ケ月間右給与を失つたが、その間毎日四〇七円あての労災保険を受給しているからその差額が原告から請求し得る損害といえる。また休業のため三九年度末ならびに四〇年夏の各期末手当は計算書のとおり減少した。

なお、また原告は上記会社の労組委員長として月平均五、〇〇〇円の組合手当を得ていたが三九年九月から一一月まで三ケ月間は受傷のため組合事務にも参加できず、右手当を失つた。

ちなみに組合手当は通常の稼働能力による労働の対価たる給与そのものとはやや性質を異にする報酬であるけれども、組合役員の専従的な組合活動時間中は会社の給与は受け得ず、従つて原告のように委員長としてある期間継続的に組合活動に従事し定期的に手当を受けていた場合には、その期間の手当の平均は、役員として通常の会社業務に従事できないことに対する補償の性質を持ち、さきに認定した平均給与もその分だけ運転手としての平均月収を下まわつているものと考えられるから、右組合手当の喪失も逸失利益にふくめるのが相当である。<証拠略>(舟本信光)

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