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大阪地方裁判所 昭和40年(保モ)851号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕二、そこで、本件仮処分決定後に申立人ら主張のような事情の変更があつたかどうかについて以下考察する。

(一)、<証拠>を総合すると、次の事実を認めることができる。

(1)、本件本件仮処分決定により申立会社の代表取締役職務代行者に選任された木村正雄は、その取締役である柴田忠親、麻野一郎、邑上修一郎、及び申立人杉谷らの任期が満了することになつたので、右仮処分決定後の昭和四〇年二月二日に右取締役らの出席を求めて取締役会を開催し、右任期満了に伴う新取締役選任の件等について討議した。しかして、右取締役会の招集決議に基づいて、甲総会が同月二〇日午前一〇時申立会社金岡工場において開催された結果、株主三三名(株式総数二万八、〇〇〇株)のうち、出席株主二八名(株式数二万二、一〇〇株)の全員一致をもつて申立会社の新取締役に右邑上、木村、及び申立人杉谷のほか、吉村準一、吉原忠重、及び松井啓三を、監査役に柳井嘉孝をそれぞれ選任する旨の決議がなされ、右邑上らにおいて就任を承諾した。その後同年三月一日に開催された取締役会において右木村を申立会社の代表取締役に選定し、それぞれその旨の登記を経由した(右登記の事実は当事者間に争いがない)。

(2)、ついで、右取締役である右邑上らの任期が満了することになつたので、前同様新取締役の選任等のため昭和四二年一〇月二〇日午前一〇時前同所において乙総会が開催された結果、株主三〇名(株式総数前に同じ)が全員出席し、二万九〇〇株の絶対多数をもつて、申立会社の新取締役に、右吉村、木村、吉原、松井、及び申立人杉谷を、監査役に右柳井をそれぞれ選任する旨の決議がなされ、同人らにおいて就任を承諾した。しかして、右同日開催された取締役会において、再度右木村を申立会社の代表取締役に選定し、それぞれその旨の登記を経由した(右登記の事実は当事者間に争いがない)。

(3)、その後さらに右取締役である右吉村らの任期が満了することになつたので、前同様新取締役の選任等のため昭和四四年一〇月二一日午前一〇時前同所において丙総会が開催された結果、株主二九名(株式総数前に同じ)のうち出席株主二一名(株式数二万六〇〇株)の全員一致をもつて、前同様右吉村ら取締役五名、及び監査役一名をそれぞれ再任する旨の決議がなされ、同人らにおいて就任を承諾した。しかして、右同日開催された取締役会において、引続き前記木村を申立会社の代表取締役に選定し、それぞれその旨の登記を経由した(右登記の事実は当事者間に争いがない)。もつとも、この間甲総会の前記取締役ら選任決議が、後記のとおり裁判所の許可なく右総会の招集がなされたという理由で、大阪地方裁判所の判決により取り消されたため、右木村は申立会社の代表取締役職務代行者という肩書で、本件仮処分決定の本案の管轄裁判所である大阪高等裁判所(大阪地方裁判所昭和三九年(ワ)第四四七四号株主総会決議不存在確認請求事件、昭和四〇年(ワ)第一五二八号株主総会決議取消請求事件判決の控訴審)に対し、あらかじめ丙総会招集手続の許可申請方をなし、同月一四日右許可を得たうえ、右総会を開催したものである。

以上の各事実を認めることができる。右認定に反する証拠はない。

以上の認定事実によると、申立会社の取締役兼代表取締役であつた申立人杉谷は本件仮処分決定により右代表取締役の職務の執行を停止せられ、前記木村正雄がその職務代行者に選任されたものであるところ、申立会社は、右仮処分決定後に三回にわたり甲ないし丙総会を開催し、申立人杉谷ら申立会社の取締役らの任期満了を理由として、その都度前段(1)ないし(8)記載の各取締役らの選任ないし再任決議をなし、かつ、これら取締役においてそれぞれ取締役会を開催し、引続き右木村を申立会社の代表取締役に選定して今日に至つているものであることが認められるから、本件の場合右仮処分決定後にいわゆる事情の変更があつたものと解するのが相当である。

もつとも、被申立人は、甲ないし丙総会の右各決議はいずれも招集手続違反等の瑕疵により取消を免れないものであるから、本件仮処分決定後に右各決議に基づく右認定のような事由が生じても、右にいわゆる事情の変更があつたものというを得ない旨主張するので、以下考察する。なるほど、<証拠>によると、甲総会の右決議については、被申立人において申立会社を被告として大阪地方裁判所に対し、これが取消の訴を提起し(同裁判所昭和四〇年(ワ)第一、五二八号事件)、係属中のところ(ただし同裁判所昭和三九年(ワ)第四四七四号株主総会決議不存在確認請求事件と併合審理)、同裁判所は昭和四二年九月二〇日、甲総会を招集することは、申立会社の前記代表取締役職務代行者である前記木村の常務外の行為であるから、右招集をなすについては、商法二七一条により本案管轄裁判所の許可を得ることを要するものであるにもかかわらず、右木村が右許可を得ることなく右総会を招集開催し、右決議をなしたのは違法であるとの理由で、右決議を取り消す旨の判決を言い渡し、なお右判決については、申立会社から控訴の提起がなされ、現に該訴訟は大阪高等裁判所に係属審理中であることを認めることができる。しかるところ、被申立人は右判決を根拠に、乙、丙各総会の前記各決議は、いずれもその前提となる適法な取締役会の招集決議を欠く等の瑕疵があるとの理由で、前同様申立会社を被告として大阪地方裁判所に対し、乙、丙各総会の前記各決議取消の各訴をそれぞれ提起し(同裁判所昭和四三年(ワ)第一三三号事件、及び昭和四五年(ワ)第二九号事件)右各訴訟が現に係属中であることは、当裁判所に顕著な事実である。のみならず本件においてはそもそも乙、丙各総会を招集する旨の各取締役会決議の存在自体証拠上これを認め得ないところである。しかしながら、およそ取締役会による株主総会招集決議が欠缺しているからといつて、これにより株主総会決議の不存在あるいは当然無効を招来するわけではもとよりなく、右欠缺は単に右総会決議を取り消し得べき手続上の瑕疵となるにすぎないのである。しかしてかかる総会決議取消の訴はいわゆる形成訴訟に属するものというべきであるから、当該決議の取消を宣言する判決の確定をまつて初めて形成力を生じ、右決議の効力が一般的に遡つて無効となるが、反面右取消判決が確定する以前においては、右決議はこれを一応適法有効なものとして取り扱うべきものと解するのが相当である。そうすると、右説示に照らし、甲総会の前記決議につき右取消判決がいまだ確定しておらず、また乙、丙各総会の前記各決議については、これが各取消訴訟が前記のとおり現に係属中である本件においては、単にこれらの各決議に被申立人主張の取消事由に該当する瑕疵がそれぞれ存するというだけでは、もとよりその効力を否定するに由ないものといわざるを得ない。従つて、本件仮処分決定は、前記事情の変更によりもはやこれを維持すべきではなくなつたものというべきであるから、これに反する被申立人の前記主張は採用することができない。

(二)、右の次第であるから、右仮処分決定は前記事情の変更により取り消すべきである。

(日高敏夫 藤浦照生 菅納一郎)

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