大阪地方裁判所 昭和40年(行ウ)21号の2 判決 1974年3月07日
原告 玉村忠雄
被告 城東税務署長
訴訟代理人 高橋欣一 外五名
主文
被告が昭和三九年二月一八日付でした、原告の昭和三七年分所得税の総所得金額を金一、九七六、三二九円とする更正処分のうち、金一、五五三、五六七円を超える部分を取消す。
原告のその余の請求を棄却する。
訴訟費用はこれを一〇分し、その七を原告の、その余を被告の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 原告
1 被告が昭和三九年二月一八日付でした原告の昭和三七年度分の所得税額を金三四八、九三〇円とする更正処分のうち、金一二、二〇〇円を超える部分を取消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 被告
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二当事者の主張
一 請求原因
1 原告は鋳造業を営んでいる者であるが、昭和三七年度分所得税につき、昭和三八年三月一五日、被告に対し総所得金額を金五一七、一二八円とする確定申告をしたところ、被告は、昭和三九年二月一八日付で右総所得金額を金一、九七六、三二九円とする更正処分をした。
2 原告は同年三月一五日、被告に対し右処分につき異議申立をしたが同年六月一三日棄却されたので、同年六月三〇日、大阪国税局長に対し審査請求をしたところ、同年一二月二三日棄却された。
3 しかしながら本件処分には次のような違法事由がある。
(一) 本件処分には、所得税に関して歴史的に形成され、すでに実定法上も納税者の権利として確定している次の諸権利を侵害する違法がある。
(1) 平等の原則違反、営業権の侵害
本件処分の根拠となつた現行税制は、次の二点において、著しく憲法一四条に定める平等原則に違反している。
(イ) 駐留米軍ならびにその関係機関、軍人、軍属およびその家族等に対して広範な免税が行われている。
(ロ) 巨大独占資本に対して、利子、利潤等の所得に関して不合理な免税をしている(例えば、利子所得の分離課税と税率の軽減、配当所得に対する源泉徴収税率の軽減、法人の受取配当非課税、特別償却等)。
税収は、各年度毎に国家予算の歳入として徴収目標が設定され、本件処分も、当該年度目標に照して行われたものであり、原告はこれにより営業に大きな打撃を受けた。そして右の税制上の平等原則違反がなければ本件処分はなかつたのであるから、この間に相当因果関係がある。
(2) 資本の原則違反、勤労権の侵害
所得税の本質的要素の一つは再生産の確保であり、これを資本の原則という。この資本の原則は、所得税について歴史的に確立されたものであり、かつ本質的な原則として、不変資本は財産権(憲法二九条)として、可変資本は勤労権(憲法二七条)として憲法上保障されている。原告の営む企業は零細であり、自己の労働力が資本の大部分を占めているのであるから、原告も当然、自己ならびに親族の可変資本の再生産を権利として保障されるべきであり、所得税においていわゆる自家労賃分が控除されなければならない。これを制度上認めない旧所得税法(昭和四〇年法律第三三号による改正前のもの)一一条の二は、憲法二七条に違反し、これにもとづく本件処分は、原告の自家労賃分を認めないから、資本の原則に違反し、原告の勤労権を侵害するものである。
(3) 文化の原則違反、生存権侵害
所得税には歴史的に最低限度の所得に対する非課税の原則があり、これは憲法一四条に「健康で文化的な生活の保障」として規定されているので、文化の原則ということもできる。
ところで戦前(昭和九年-同一一年)における課税最低限は、平均所得の一九一パーセントであつたが、昭和二九年ではこれが四五・九パーセントと激減している。本件処分は、この文化の原則に違反した基礎控除によつており、原告の生存権を侵害するものである。
(4) 平和の原則違反 幸福権の侵害
憲法は平和の原則を採用し、幸福追求の権利を保障している。しかるに現在の政府の予算は対米従属、独占資本奉仕のインフレ収奪予算であり、軍国主義復活の予算である。これは明らかに憲法に定めた平和の原則に違反した予算であり、しかもかかる原則違反がなければ本件処分はないから、この間に相当因果関係があるといわなければならない。
(5) 民主の原則違反、申告権の侵害
現行の所得税制度は憲法の民主主義の原則に従い、申告納税制度をとつており、国と納税者との租税法律関係は、納税者の申告によつて形成され(国税通則法一六条)、しかも納税者は申告以前には何らの具体的義務も負わない。このことは次のような具体的効果を持つ。
(イ) 申告以前に課税庁が調査することは許されない。したがつて、いわゆる事前調査は違法である。
(ロ) 申告によつて形成された法律関係は、具体的な法律関係であるから、それを否認して調査するには、その必要性が要求され、それなくしてした調査は違法である。
(ハ) 申告を否認するためには、質問検査権を行使して、納税者の説明を充分徴することが要求され、それを経ない処分は違法である。
(ニ) 一旦申告によつて成立した法律関係を変更するには理由の明示が必要である。旧所得税法四五条一項は、青色申告についてそれを例示したものにほかならず、それを備えない処分は違法である。
ところが、被告は、本件処分をするにあたり、違法な事前調査をし、必要性がないのに各種の事後調査(銀行、納入先、仕入先等の調査)をして原告の営業上の信用を毀損する等の営業妨害を行つた。
また原告が、被告に対し、調査の際には必ず事前に通知されたい旨上申し、かつ被告の調査に際しては、原告の帳簿は商工会にあるからそこで調査してほしいと要望したにもかかわらず、被告はいずれもこれを理由なく無視して原告の説明を聴取しなかつたうえ、原告が昭和三八年一〇月頃、被告職員の求めに応じて原告が保管中の帳簿を被告側に持参し、昭和三九年二月ごろまで預けて充分に調査できるように協力した際にも、原告に質問等をせず、弁解の機会を与えないで一方的に本件処分に及んだものである。
更に本件処分後に、原告は被告に対し、本件処分の根拠および調査の結果得られた資料を見せてほしいと要求したが容れられなかつた。
したがつて本件処分は、民主の原則に違反し、原告の申告権を侵害するものであり違法である。
(6) 推計の原則違反、計算権の侵害
被告は本件処分を推計課税によつて行つているが、推計課税には、次の原則がある。
(イ) 推計の根拠は公開されなければならない。
a 租税法律主義は、具体的課税処分についても妥当し、納税者は自ら課税処分について検算しうる機会が与えられなければならないから、推計課税の根拠は公開されなければならない。
b 推計課税は、国の行う統計計算の一種であり、統計については、真実性を担保するために、公開の原則が定められている(統計法一六条)。
c 原告の申告によつて租税法律関係が成立したのであるから、それを否認するには、理由開示が必要である。
ところが被告は、推計の根拠を示さないで本件処分をした。
(ロ) 推計は補充的に適用されなければならない。
推計課税は、その性質上、納税者の申告に合理的な疑いがあり、かつ課税庁が納税者の所得実額をどうしても補捉できない場合に限つて補充的に利用されるべきものである。
ところが被告は本件処分をなすにあたり、かかる補充使用の考慮をなさず、当初から推計によつたものである。
(ハ) 推計の内容は合理的なものでなければならない。
被告は、本件処分につき未だ推計の数字的根拠を明確にしないから、被告の推計は合理性を欠いている。
以上のとおり本件処分は、推計の原則に違反し、原告の計算権を侵害するものである。
(7) 団結の原則違反、団結権侵害
原告は自己の営業と生活、権利を守るため、中小企業者の民主的組織である城東商工会に加入しているが、被告は、上級官庁の方針を受けて、城東商工会をいわゆる特殊団体扱いし、その団結を侵害して組織を破壊しようと種々の攻撃をかけている。本件処分もその一環としてなされ、城東商工会の組織破壊を狙つたものであるから、原告ら会員の結社の自由権-実質は団結権-を侵害する違法がある。
(8) 適法手続の違反
右(5) 、(7) の各事実によれば、本件処分は、憲法三一条に保障されている原告の行政手続上における権利、利益を侵害した違法があるといわなければならない。
(二) 原告の昭和三七年分の総所得金額は金一、一一七、一二八円であるから、本件処分のうち右金額を超える部分については、原告の所得を過大に認定した違法がある。
二 請求原因に対する被告の答弁
請求原因1、2の事実を認め、3の主張を争う。
三 被告の主張
1 請求原因3(一)の主張に対する反論
(一) 平等原則違反の主張について
(1) 原告が平等原則違反としてあげる駐留アメリカ軍ならびにその関係機関に対する特例は、国際間の条約にもとづいてなされているものであり、憲法九八条二項からいつて憲法上の平等原則違反の問題となしえない。
(2) 利子所得の分離課税と税率の軽減、配当所得に対する源泉徴収税率の軽減は、法人、個人を通ずる課税の調整、二重課税の回避の理由から認められ、合理化機械および重要な機械の特別償却等は、設備の近代化促進その地の理由から認められているものであつて、これらは何ら平等原則に反するものではない。
(二) 資本の原則違反の主張について
原告が主張する原告本人ならびにその親族の可変資本の再生産の確保は、基礎控除、事業専従者控除、その他の諸控除および税率によつて考慮されている。
(三) 文化の原則違反の主張について
憲法二五条は、国の社会的使命を表明しているのにすぎないし、原告主張の最低限度の生活権は、前記諸控除および税率によつて保障されているから、有所得者よりの徴税はなんら生存権の侵害とはならない。
(四) 平和の原則違反の主張について
原告のいわゆる軍事費とは何を指すかは明らかでないが、それがいわゆる防衛関係費をさすものとすれば、それは平和維持のためのものであり、平和原則に違友するものではない。
(五) 民主の原則違反の主張について
原告は、申告が租税法律関係を形成させる効力をもつと主張するが、申告にかかる税額の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつた場合その他当該税額が税務署長の調査と異なつた場合には税務署長が更正しうるものであり、これは課税を実質に即した適正なものたらしめようとする理念にもとづくものであつてなんら申告納税方式と対立するものではない(国税通則法一六条、二四条。)
(イ) 原告は事前調査を問題としているが、後に詳述するように税務訴訟の審理の対象は課税標準等の存否であるから、事前調査の適法性等の手続的事項は、本件訴訟の審理の対象となしえない。しかも本件では事前調査は行われていない。
(ロ) 原告は、被告が必要性がないのに各種の事後調査をしたと主張するが、前記のとおり、このような手続事項は本件訴訟の審理の対象外である。ちなみに、本件では、原告の前年の修正確定申告にかかる所得金額が、金一、二三〇、一〇〇円であるにかかわらず、係争年分の本人作成の決算書においては半分以下の金五一七、一二八円の確定申告をなし、さらに申告にかかる交際費の支出が、金一、一七四、二四二円と異常に大きく、係争年分申告所得の二倍を上廻つたことから調査を行なつたものであつて、まさに調査の必要性が存在したのである。
(ハ) 原告は被告が本件処分をなすにあたり、原告の説明を聴取しなかつたと主張するが、更正処分に際し、本人の説明を徴すべきことは当然であり、本件でも被告は原告に対し、説明の機会を与えかつ求めたにもかかわらず、原告がこれに応じなかつたものである。
(ニ) 原告は本件処分の理由の明示がないことを問題とするが、所得税の更正処分について理由付記を要するのは青色申告にかかる更正の場合だけである。本件は白色申告であつて、その更正にあたつて理由付記を要するとの規定は存しない。
したがつて本件処分にあたつて理由を付記しなかつたことはなんら違法ではない。
(六) 推計の原則違反の主張について
原告は本件処分が推計の原則に違反すると主張するが、被告は本件において推計課税をしていないから、右主張はその前提を欠くものである。
(七) 団結の原則違反の主張について
原告は本件処分が城東商工会の組織破壊を狙つたものであると主張するが、本件においては前記(五)(ロ)のような事情から調査のうえ更正したものであつて、そこには原告の結社の自由や団結権を侵害せんとする意図は全く存しない。
(八) 適法手続違反の主張について
原告は、被告の調査には数々の違法があるから被告のした本件処分はその点からも取消されるべきである旨主張する。しかし課税処分取消の訴における審判の対象は、その課税処分が内容(実体)において違法であるかどうかにあり、それ以外に課税処分を違法ならしめる法律要件は存しない。したがつて原処分庁が処分時に、どのような調査をし、どのような資料にもとづき、どのような認識、判断をしたかというようなことは、一つの歴史的事実であつて、それによつて直ちに課税処分の適否が左右される訳ではない。
2 原告の所得金額<省略>
四 被告の主張2(原告の所得金額)に対する原告の答弁<省略>
第三証拠<省略>
理由
一 請求原因1、2(本件処分の経過)の事実は当事者間に争いがない。
二 そこでまず、本件処分に原告が請求原因3(一)で主張するような違法事由が存在するかどうかについて判断する。
1 平等原則違反の主張について。
(一) 駐留米国軍人等に対する免税について。
これらは、外国人に対する二重課税を防止するための措置の一環をなすものと考えられ、これをもつて平等原則に違反するとはいえないうえ、これが本件処分と直接の関連性を有するとは認められない。
(二) 利子所得等に対する免税について。
これらの点についても、本件処分と直接の関連性があるとは認められない。
2 資本の原則違反の主張について。
原告が主張する原告本人ならびにその親族の可変資本の再生産の確保は、旧所得税法上、基礎控除、事業専従者控除、その他の諸控除および税率等によつて考慮されていると考えられるから、本件処分が直ちに資本の原則に違反し、労働権を侵害するということはできない。
3 文化の原則違反の主張について。
旧所得税法は、総所得金額から課税総所得金額を算出するに当り、基礎控除のほか、扶養控除その他の控除を行い、納税義務者の家族構成、生活状態等に即して担税力を考慮した後、課税総所得金額に対し累進税率を適用して所得税額を算出し、その所得の大小による担税力に配慮を加えている。そしてその最低担税力の評定が、憲法二五条に違反していると認めるべき根拠は存しない。
4 平和の原則違反の主張について。
所得税は目的税ではなく、その課税の趣旨が租税要件の一つとされることはありえないところであり、それがいかなる財政需要充足のための財源とされるかについては、税制ないしその運用の問題ではなく、もつばら財源配分ないし予算編成の問題であつて、所得税が財源的に防衛費に充当されているとしても、そのことと本件処分とは無関係であるというべきである。
5 民主の原則違反の主張について
(一) 事前調査について
<証拠省略>と原告本人尋問の結果(第一回)によれば、原告が、被告により本件係争年分の所得額の調査を受けたのは、昭和三八年六月一九日ころが最初であつたことが認められるが、更に遡つて、原告の右所得額の調査(反面調査等)を本件係争暦年終了前又は原告の申告以前に行つたことを認めるに足りる証拠は存しない。したがつて、被告が違法な事前調査を行つたとする主張はその前提を欠くといわなければならない。
(二) 調査の必要性について
国税通則法二四条に規定されている更正処分の前提としての調査は、納税者の適正な申告を確保し、公正な租税負担を実現するためになされるものであるところ、<証拠省略>、および弁論の全趣旨によれば、原告の昭和三六年分の修正確定申告にかかる総所得金額は、金一、二三〇、一〇〇円であつたにもかかわらず、昭和三七年分の確定申告では半分以下の金五一七、一二八円とされており、しかも同申告にかかる交際費の支出が金一、一七四、二四二円と申告所得額の約二倍を上回る高額であつたため、被告は、右申告内容に疑問を持ち調査に及んだことが認められるから、右に述べた税務調査の趣旨に鑑みると、本件においては、調査の必要性の点に関し、何ら違法とされるところはなかつといわなければならない。
(三) 質問検査権の行使について
収税官吏の行う質問検査権(旧所得税法六三条)行使については、その範囲、程度、時期、場所等に関し、実定法上特段の定めがないから、これらについては、適正公平な租税負担の実現という税務調査の目的から合理的範囲内のものである限り、収税官吏の裁量に委ねられていると解すべきである。
したがつて、被告において事前通知をせず、原告が指定した城東商工会で調査しなかつたとしても、右税務調査の目的に照せば、これをもつて直ちに本件処分自体を違法ならしめる事由になるとは解せられない。また国税通則法二四条によれば、更正処分の前提として、調査のなされることが必要であり、これを全く欠くか、形式的に行なわれても、実質的には行なわれていないのと同視しうる場合には、更正処分自体が違法となるというべきであるが、調査の一方法としての納税者からの弁解聴取については、これが充分に行われることが望ましいけれども、旧所得税法六三条による質問検査権は、収税官吏の義務として規定さていないから、これが全く行なわれなかつたとしても、他に何らかの実質的調査がなされているのであれば、更正処分自体が違法となることはない。これを本件についてみるに、<証拠省略>によれば、被告は、原告の本件係争年分の収入についての反面調査をしながら、その結果について、原告の弁解を徴さなかつたことが認められるが、右説示のとおり、このこと自体が本件処分を違法ならしめる事由となるものではない。
(四) 本件処分の理由の開示について
原告は後記のとおり、本件係争年について、青色申告の承認を取消され、それが確定したのであるから、本件処分の対象となつたのは白色申告であるところ、白色申告の更正処分にあたつて理由付記を要するとの規定は存しないし、また納税者の請求に応じてその理由を開示しなければならない根拠もない。したがつて本件処分において理由の付記がなくまた被告において処分の理由を開示しなかつたからといつて本件処分が違法となる訳ではない。
以上によれば、本件処分についての民主の原則違反の主張は失当である。
6 推計の原則違反の主張について
<証拠省略>によれば、本件処分は、原告の取引先の反面調査の結果等実額にもとづいて行なわれたことが明らかであるから、原告の右主張はその前提を欠くといわなければならない。
7 団結の原則違反の主張について
<証拠省略>に原告本人尋問の結果(第一回)を総合すると、原告は、零細商工業者が加入している城東商工会の会員であること、昭和三八年ごろから大阪商工団体連合会およびその傘下民主商工会と大阪国税局および所轄税務署との間において、税務調査の方法および民商会員の税務妨害の有無をめぐつて対立状態にあり、城東商工会と被告との間においても、会員に対する税務調査が従前に比して増加し、同様の対立状態が生じ、会員の中には脱会する者も出てきたこと、以上の事実を認めることができるけれども、これらの事実から直ちに、本件処分が城東商工会の組織破壊を目的としてなされたということはできない。
かえつて、本件処分の端緒が前記5(二)のとおりであることからすれば、本件処分に右のような他事考慮はなかつたということができる。したがつて原告のこの点に関する主張は採用できない。
8 適法手続違反の主張について
原告の右主張は、請求原因3(一)(5) (7) の各主張を角度を変えて主張したものであるが、前示5、7に説示したところと同様であるから、本件処分に原告の行政手続上における権利、利益を侵害した違法があるとはいえない(なお被告は、課税処分取消の訴における審判の対象は、課税処分が内容(実体)において違法であるかどうかだけであると主張するが、そのように限定しなければならない根拠はない)。
三 <省略>
四 よつて、原告の被告に対する本訴請求は、総所得金額一、五五三、五六七円を超える部分の取消を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の部分は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担にき、民事訴訟法九二条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 下出義明 藤井正雄 石井彦寿)
別紙(一)、(二)<省略>