大判例

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大阪地方裁判所 昭和41年(わ)2890号・昭41年(わ)2482号・昭41年(わ)2422号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(罪となるべき事実)

被告人富田幸夫は八興建材株式会社に、被告人森居幸雄および同赤間睦雄はいずれも井上運輸株式会社に、それぞれトラツク運転手として勤務していたものであるが、たまたま右八興建材株式会社の事務所と右井上運輸株式会社の事務所とが同じ建物内にあつたところから、被告人三名は、互いに顔見知りとなつて親しく交際するうち、小遣銭を稼ぐためトラツクを利用して鉄板等を窃取しようと企て、共謀のうえ、

昭和四一年三月三日午後一〇時三〇分ごろ、被告人富田の運転する中型四輪三菱ジユピター型トラツクに同乗して大阪市城東区放出町西二丁目四六番地附近路上の株式会社水間組工事現場に赴き、鋼材を窃取するについて、同現場附近に数名の作業員が作業をしていたので、これらの者に発見されたときは直ちに逃走できるように被告人富田が右トラツクの運転席に残つて附近を見張り、被告人森居、同赤間の両名が下車して、同工事現場に置いてあつた同会社所有の鋼矢板(約三六キログラム)九枚(時価約三万円相当)を右トラツクの荷台に積み込んで窃取したが、その際同工事現場で作業をしていた同会社従業員小西闘忘(当時二二年)に発見、追跡されたので、被告人森居、同赤間の両名が被告人富田の鳴らしたクラクシヨンの合図に応じて順次右トラツクの助手席に慌てて飛び乗ると同時に、被告人富田が右トラツクを発進させて逃走しようとしたところ、一足早く、右小西が被告人らに追いつき、右トラツク運転席右側の窓枠をつかんでぶらさがり、「止まれ、止まれ」と停車を命じたので、被告人富田が逮捕を免れるため右小西を右トラツクから振り落してもあくまで逃走しようと企て、そのまま右トラツクを発進し続け、時速約四〇キロメートルの速さで約一〇〇メートル疾走させたが、右小西が右トラツクにぶらさがつたまま放れなかつたので、これを見ていた被告人赤間が同富田に対し「ブレーキを踏め」といつて急停車するよう指示し、被告人富田もこれに応え、また被告人森居も暗黙のうちにこれら右両名の言動に賛同し、ここに被告人三名が逮捕を免れるため右小西を右トラツクから振り落して逃走することについて互いに意思を通じたうえ、被告人富田が急ブレーキを踏み、或いは急発進するなどして、さらに右トラツクを疾走し続け、なおも右小西を振り落せないと見るや、右トラツクの窓枠をつかんでいる同人の左手指を右手で引き起こしながら再度急ブレーキを踏んで同人を前記工事現場から約三〇〇メートル北上した大阪府道新庄大和川線路上に転落させ、よつて同人に対し治療約三週間を要する左膝部および右手関節部挫創の傷害を負わせたものである。(弁護人の主張に対する判断)

被告人森居の弁護人は、被告人森居が判示罪につき強盗の共謀なく、窃盗の責任しか負わない旨を主張するが、右主張の前提となる事実そのものが前記当裁判所の認定した事実と異なる同被告人の当公判廷における供述を基礎とするものであるから、右の主張は採用できない。

前掲関係証拠により当裁判所が認定したところによると、被告人森居は、被告人富田が本件トラツクを発進させてまもなく、小西闘志が右トラツク運転席の右側車外に右手でバツクミラーの柄を、左手で窓枠をつかんでぶらさがつているのに気付いたにもかかわらず、被告人富田がそのまま右トラツクを疾走させるのを黙認し、さらには、被告人赤間が同富田に対し「ブレーキを踏め」と指示し、被告人富田がこれに応えて急ブレーキを踏んだことに対しても何ら制止しようとしなかつた等その危険性を十分に認識しながら終始窃盗の共犯者である被告人富田の運転行為その他の暴行を黙認し、そのなすに委せ、右運転行為を中止させる措置をとらなかつたことにより右小西に対する傷害の結果を惹起するに至らしめたものであるから、被告人森居も、他の被告人らと同様に判示刑責を免れることはできない。

抑も本件のように窃盗の共犯者がその中の一人の運転する自動車を使つて逃走しようとする場合においては、運転役の共犯者は他の共犯者から逃走の経路、方法についての判断を委ねられているものとみるのが妥当であり、他の共犯者が特に反対の意思を表明しない限り、運転役の共犯者としては自己の判断に従つてすべての共犯者を逃走させるものであるから、本件において、被告人森居が何ら明示的な行為に出なかつたことは、すなわち、運転役である被告人富田の行為に対し暗黙のうちに賛同の意を示したものとみられ、一方、被告人富田としても、被告人森居が何ら反対の意を表明しない限り同被告人も被告人富田の行為を是認しているものと受けとつて、そのまま自己の行為を続けることにより、被告人森居に対し、その意思を表明したものとみられ、この理は被告人赤間との関係においても全く同様である。結局、本件においては、被告人赤間が同富田に対し「ブレーキを踏め」と指示したことによつて、被告人三名が前記小西をトラツクから振り落すことについて互いの意思を確認し合つて共謀したものと認めるべきである。(石原武夫 安達 敬 白井万久)

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