大阪地方裁判所 昭和41年(ワ)2331号 判決
原告
荒井一雄
右代理人
高村文敏
被告
合同炉工業株式会社
右代表取締役
松川宝蔵
被告
才出勉
被告両名代理人
松本健男
山上益朗
第一 主 文
一、被告両名は各自原告に対し、一四六、四九二円およびこれに対する昭和四一年五月二四日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。
二、原告のその余の請求を棄却する。
三、訴訟費用は被告両名の連帯負担とする。
四、この判決一項はかりに執行することができる。
第二 原告の申立て
被告両名は各自原告に対し、三一七、六一四円およびこれに対する昭和四一年五月二四日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。
との判決ならびに仮執行の宣言。
第三 争いのない事実
一、交通事故発生
と き 昭和四〇年一二月一七日午前七時三〇分ごろ(晴れ)
ところ 大阪市西区京町堀三丁目交差点(道路中央部にグリーンベルトがあり既舗装)
事故車 トヨペツトスタウト(大四ぬ五七六〇号)
運転者 被告才田
受傷者 原告(軽自動車―原告車という―運転中)
二、事故車の運行供用
被告会社は事故車を所有し(以下これを被告車という)、被告才田はその従業員としてこれを運転中本件事故の発生をみた。
第四 争 点
(原告の主張)
一、被告両名の責任原因
(1) 被告会社(自賠法三条、予備的に民法七一五条)
(2) 被告才田(民法七〇九条)
原告は南から北に向けて進行中、本件交差点にさしかかつたとき、信号が赤であつたので一たん停車し、ついで青信号に変つたので発進したところ、被告才田は信号を無視し前方左右不注視のまま東から西に向け交差点に突入してきて、被告車の左前部を原告車前部に衝突させた。
二、原告の損害
(1) 受傷部位、程度
脳挫傷、左膝および右足部挫傷等により、事故当日から翌四一年一月八日まで入院治療し、翌九日から二月五日まで通院治療を受けたが、なお現在にいたるも頭痛がとれず、日常の起居にも不自由を感じている。
(2) 数額
(イ) 療養費 計五八、六九四円
入院治療費 四三、九四八円
通院治療費 二、九九六円
入院雑費 五、七五〇円
(内訳)
氷代一、五〇〇円、ガス代五〇〇円、やかん代八〇〇円、洗面具二五〇円、毛布代一、八〇〇円、パジヤマ代九〇〇円
通院交通費 二、〇〇〇円
医師看護婦への謝礼 四、〇〇〇円
(ロ) 逸失利益 二八、九二〇円
昭和四〇年一二月一八日から翌四一年一月九日までの二三日分
(ハ) 慰謝料 二〇〇、〇〇〇円
(ニ) 弁護士費用(着手金) 三〇、〇〇〇円
(ホ) 遅延損害金
本件訴状送達の翌日たる昭和四一年五月二四日から支払いずみまで年五分。
(被告らの主張)
一、被告才田の無過失と原告の過失
本件事故は赤信号にも拘らず交差点前の停止点で一たん停止をしないで相当な速度で直進してきた原告の過失により発生した。被告才田は青信号のさい交差点に入り、交差点の横断をほとんどおえたころに赤信号に変つたが、そのさいはすでに横断をほとんどおえ進行についての優先順位が確保されていると判断し進行を続けたところ、原告車が左方から直進してくるのを認め、ただちに右にハンドルを切り衝突を回避しようとしたがおよばず接触したものである。
二、過失相殺さるべき事案である。
第五 証 拠≪省略≫
第六 争点に対する判断
一、被告両名の責任原因
(1) 被告会社(自賠法三条)
(2) 被告才田(民法七〇九条)
原告、被告才田本人尋問の結果によると、つぎの事実が認められる。
(イ) 本件交差点は幅員約二〇メートルの南北車道と幅員約一〇メートルの東西車道が直角に交差する場所であり、南北車道のうち北行車道は西から幅員約四メートルの低速車道、約一メートルのグリーンベルト、約六メートルの高速車道に分れており、東西、南北車道とも左右の見通しはよく、信号機により交通整理がなされていた。
(ロ) 被告才田は東西車道の中心線よりやや左寄りを西進して右交差点にさしかかり、対面信号が青点滅であるのを認めて進入したが、交差点の中心に達する前に信号が黄となり、まもなく赤に変つた瞬間、左方から北進してきた原告車を発見して危険を感じ、急ブレーキをかけつつ右にハンドルを切つたがおよばず、東西車道中心線よりやや左寄りで被告車左前部が原告車右前部に衝突した。
(ハ) 原告は南北車道の低速車道を北進中、右交差点の手前で対面信号が赤から青に変つたのを認め、そのまま交差点内に進入した瞬間西進してきた被告車を発見して危険を感じ、急ブレーキをかけたがおよばなかつた。
(ニ) 原告が交差点に進入する直前、右側の高速車道にトラツクが一台停車していたため、右方の見通しは悪かつた。
以上の認定にもとづき、被告才田に運転上の過失があつたかどうかを判断するに、被告才田が本件交差点に進入しようとしたころは、対面信号が青点滅から黄に変わる直前であつたのであるから、同被告としては交差点の広さから判断してこれを通過する前に信号が赤に変り、南北車道から車輛が進入してくるおそれがあることに思いをいたし、あえて交差点に進入することなく、その手前で一たん停車し、信号がふたたび青に変るのを待つて安全な状態で発進すべき注意義務があつたというべきであり、この義務を尽くさなかつた点において運転上の過失が認められる。
二、原告の損害
(1) 受傷部位、程度
原告主張のとおり(原告本人尋問の結果、同結果により成立を認める甲一号証)。
(2) 数額
(イ) 療養費 計五四、六九四円
入院治療費(首藤病院) 四三、九四八円(甲三の一)
通院治療費(右同) 二、九九六円(甲三の二)
入院雑費 五、七五〇円
内訳は原告主張のとおり(いずれも一時的消耗品またはこれに準じて取り扱うのが相当である)。
通院交通費 二、〇〇〇円
以上の各金額は原告本人尋問の結果と同結果により成立を認める右各書証により認めた。なお医師看護婦への謝礼は原告が感謝の意を表するためになしたものであるから、原告自身がその費用を負担すべきものと解する。
(ロ) 逸失利益 二八、二九〇円
原告は事故当時株式会社高井製作所に勤務し、本給一ケ月三六、九〇〇円を得ていたが、事故翌日から翌年一月九日まで欠勤したため二八、二九〇円の給料減収となつた(原告本人尋問の結果、同結果により成立を認める甲四号証)。
(ハ) 精神的損害一五〇、〇〇〇円
(ニ) 弁護士費用(着手金) 三〇、〇〇〇円
(原告本人尋問の結果)
三、原告の過失(過失相殺)
さきに認定した事故の態様から判断すると、原告は本件交差点に進入するにさいし、右側に停車中のトラツクのため右方がじゆうぶん見通せなかつたのに、対面信号が赤から青に変つた直後相当速い速度で進入したものと推認される。しかして、南北車道の幅員が約二〇メートルもあれば、北行信号が赤から青に変わつた時点においては、いまだ交差点を通過しおえていない西進車両がおうおうにしてあるわけであるから、原告としては西進車両の有無を確認しつつじゆうぶん減速して進入すべき注意義務があつたというべく、この義務を尽くさなかつた点において運転上の過失が認められ、この過失は本件賠償額の算定にあたりしんしやくしなければならない。両者の過失の程度その他諸般の事情を勘案すると、被告両名の賠償額は、前出各損害のうち(イ)、(ロ)、(ハ)については半額、(ニ)については全額と認めるのが相当である。
四、結論
そうすると、被告両名は不真正連帯債務の関係で原告に対し、一四六、四九二円およびこれに対する昭和四一年五月二四日から支払いずみまで年五分の割合による遅延損害金を支払うべき義務があるので、原告の本訴請求を右の限度で認容し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用して主文のとおり判決する。(谷水 央)