大判例

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大阪地方裁判所 昭和41年(ワ)2394号 判決

原告

中野あさの

ほか四名

以上五名代理人

香川文雄

被告

南守

他一名

右両名代理人

津室休弌

第一、主   文

一、被告南守は、

原告中野あさのに対し九五二、五八二円、

原告中野住男に対し六二四、一六五円、

原告以頭うめのに対し五二四、一六五円、

原告橋本恵に対し五二四、一六五円、

原告中野平一に対し二〇〇、〇〇〇円、

および右各金員に対する昭和四一年五月二七日から各支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二、原告中野平一を除く原告四名の被告南守に対するその請求および原告五名の被告南兼松に対する請求を棄却する。

三、訴訟費用中、原告五名と被告南守間に生じた分は同被告の負担とし、原告五名と被告南兼松間に生じた分は原告五告の負担とする。

四、この判決一項は、かりに執行することができる。

第二、原告らの申立て

被告両名は、各自、原告あさのに対し一、三〇五、二九一円、原告住男に対し八五八、一七〇円、原告うめの、同恵に対し各七五八、一七〇円、原告平一に対し二〇〇、〇〇〇円、およびこれらに対する昭和四一年五月二七日(本訴状送達後)から各支払いずみまで年五分の割合による金員(遅延損害金)を支払え。

との判決ならびに仮執行の宣言。

第三、争いのない事実

一、交通事故発生

と き 昭和四一年三月一三日午後一時四〇分ごろ

ところ 池田市木部町一四七番地先国道一七六号線

事故車 軽四輪貨物自動車(六大阪あ六〇四一号)

運転者 被告守

死亡者 中野哲郎(当時五八才)

態 様 被告守が事故車を運転して北進中、道路外に駐車していた亡哲郎所有の軽四輪貨物自動車後部とその前方で佇立していた同人に対し、事故車左前部をそれぞれ接触させ、同人を前方にはねとばし即日死亡させた。

二、亡哲郎と原告らの身分関係

原告あさのは妻、原告住男・同うめの・同恵子は嫡出子、原告平一は実父であり、原告平一を除く原告四名が法定相続分により亡哲郎の権利を承継した。

第四ないし第五<省略>

第六、争点に対する判断

一、被告守の責任原因(民法七〇九条)

<証拠>によると、つぎの事実が認められる。

(1)本件事故現場は、ほぼ南北に通ずる府道池田亀岡線からほぼ北西に折れて分かれる幅員約六メートルの二級国道池田瑞穂線上であり、府道と国道の分岐点にあたる三差路の西側道路沿いに高さ約二メートルの樹木が植えられていたため、府道から左方に折れる国道に対する見通しは十分でなかつた。

(2)被告守は、飲酒のうえ呼気一リツトルにつき〇・五ミリグラム以上のアルコールを体内に保有していたのに拘らず、事故車を運転して時速約五〇キロメートルで府道を北進し前記三差路にさしかかつた際、時速約四〇キロメートルに減速して府道の左側中央寄りから国道中央部に向け左折したところ、直前に対向車を発見し衝突の危険を感じ、あわててハンドルを左に大きく切りかろうじて衝突を避けたが、ハンドル操作の自由を失つて左斜めに約三〇メートル暴走し、道路外に駐車中の自動車右後部およびその前に立つていた亡哲郎に事故車左前部を接触させたまま、救護措置等をとることなく逃げ去つた。以上の認定によると、被告守には、酒気運転のほか、左方の見通しが十分でない場所を左折するにあたりあらかじめ徐行せず、かつ道路の左側に寄らなかつた過失のあることが明らかであり、これらの過失により本件事故が発生したと認められる。被告らは緊急避難を主張するが、その理由のないことは前認定の事実に照らし明白である。

二、被告兼松の責任原因(無責)<略>

三、損害

(1) 亡哲郎の逸失利益  二、五九八、七四三円

原告あさの、同平一各本人尋問の結果によると、亡哲郎は、原告ら主張のモータープール経営および軽飲食店手伝いにより、一カ月五五、〇〇〇円の利益を得ていたことが認められ、反対の証拠はない。そして、同人の消費支出が原告ら主張の右利益の三分の一をこえるとは認められないので、同人の純利益は一カ月三六、六六六円を下らないところ、同人は死亡当時健康な五八才の男性であつた(原告あさの本人尋問の結果等)から、本件事故にあわなければ六五才ごろまで七年間は右の利益をあげることができたと認めるのが相当である。

ところで、原告らは、亡哲郎の逸失利益総現価の算定につき、いわゆる月ごと式ホフマン法を採用しているけれども、ホフマン法は貨幣資本額が一定期間単利法で利殖されることを前提として、現在から一定期間後の貨幣資本額の現価を求める方法であるから、現代におけるように貨幣資本額が六カ月または一年を一期とする複利で利殖されることが最も普通である時代に、なお単利割引法たるホフマン法を採用する合理性に乏しいといわねばならない。そこで、本件のように一カ月ごとの純利益が確定できる場合には逸失利益の賠償金が六カ月を一期とする複利(ただしその間は単利)預金で利殖されることを前提とし、その元利の中から毎月末三六、六六六円を七年間にわたり引き出していつたとき、七年末に預金元利の残額が零になるように逸失利益現価を算定するのが相当である(ジュリスト三六三号五六ページ以下、判例タイムズ二〇二号四九ページ以下参照)。

(算式)

三六、六六六円×七〇・八七六一=二、五九八、七四三円

(2)原告あさの 合計四六六、三三五円

(イ)葬祭費 計一五九、三三五円

内訳同原告主張のとおり(甲七、八、九の一・二、一〇、一一、一二の一・二)。

(ロ)慰藉料 三〇〇、〇〇〇円

(ハ)亡哲郎所有自動車破損修理費 七、〇〇〇円

(甲二、三号証、原告あさの本人尋問の結果)

(3)原告住男 合計三〇〇、〇〇〇円

(イ)弁護士費用 一〇〇、〇〇〇円

(原告住男本人尋問の結果)

(ロ)慰藉料 二〇〇、〇〇〇円

(4)原告うめの、同恵、同平一(慰藉料)各二〇〇、〇〇〇円

(5)慰藉料算定の根拠は原告ら主張のとおり(前出すべての事実および甲一号証ならびに原告あさの、同住男、同平一各本人尋問の結果)。被告守が本訴提起を受けたのち一〇〇、〇〇〇円を原告らに支払つた事実(原告あさの、被告守各本人尋問の結果)を考慮しても、前記各金額を下らない。

四、損害のてん補

原告らの自認する一、〇五〇、〇〇〇円のほかに自賠責保険金九〇、〇〇〇円(原告住男本人尋問の結果)を前記亡哲郎の逸失利益から控除するのが相当である(残額一、四五八、七四三円となる)。被告らはそのほかにも供花、菓子を提供し、治療費を支払つたと主張するが、これらは前出損害から控除すべきものではない。

五、結論

(1)被告守は左記損害を賠償する義務がある。

(イ)原告あさのに対し、合計九五二、五八二円

A固有分 四六六、三三五円

B相続分(逸失利益残額の三分の一)四八六、二四七円

(ロ)原告住男に対し、合計六二四、一六五円

A固有分 三〇〇、〇〇〇円

B相続分(逸失利益残額の九分の二)三二四、一六五円

(ハ)原告うめの、同恵に対し、各合計五二四、一六五円

A固有分 二〇〇、〇〇〇円

B相続分(原告住男に同じ)三二四、一六五円

(ニ)原告平一に対し、二〇〇、〇〇〇円(固有分)

および右各金員に対する昭和四一年五月二七日から各支払いずみまで年五分の割合による遅延損害金。

(2)被告兼松は本件事故の損害を賠償する義務はない。

(3)よつて、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条、仮執行宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。(谷水央)

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