大阪地方裁判所 昭和41年(ワ)2642号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
<参考>小学校二年生の児童が道路上で遊ぶことについて親権者に監督上の過失ないとされた例として最高裁昭和四二年一月三一日判決・本誌二〇四号一一五頁参照
〔判決理由〕<証拠略>によれば、被告篠原正治は、本件事故発生当日軽四輪自動車を運転して塩草小学校に集金に行き、同校正門前の車寄せに同自動車を駐車させ、所用を済ませて、右車寄せまで来たとき、同自動車の後方で座り込んで遊んでいる原告乾準一郎(当六才)および同西田武季(当五才)両名の姿を認めたので、同人らに対し、「当るから退けよ」と声をかけ、同人らが直ちに立退くものと考え、そのまま同自動車に乗り込みエンジンを始動して後退を開始した途端、なおもその場にいた原告らに同自動車後部を接触させて傷害を負わせた事実を認めることができ、被告篠原正治本人尋問の結果中、右認定に反する部分は、前掲各証拠に照らしてたやすく信用できない。右認定の事実によれば、被告篠原は、原告らを安全な場所に立退かせるか、少くとも同人らが安全な場所に立退いたのを確認してから後退を開始すべきであつたのにこれを怠り、単に「退けよ」と声をかけたのみで漫然車に乗り込み後退し、本件事故を発生せしめたものであるから、過失の責を免れず、本件事故より生じた損害を賠償する義務がある。
<中略>五、最後に被告らの過失相殺の主張について判断する。
(一) 原告らの過失の有無について
被告らは、原告両名は被告篠原より「退けよ」と声をかけられ一旦退避したにもかかわらず再び遊びに熱中した過失がある旨主張するが、本件事故の態様は前認定のとおりであり、右主張のような事実は認められない。又全証拠によつても、他に原告らに過失のあつた事実を認めることはできない。
(二) 親権者らの過失の有無について
被告らは、原告両名が本件事故現場まで遊びに行くのを放置したのは親権者らの過失である旨主張する。
そして、原告乾準一郎法定代理人および同西田武季法定代理人西田晴美各本人尋問の結果によれば、本件事故発生地と原告らの住宅の間は約五〇〇メートル程あり、その間交通量の多い大通りがある事実、事故当日、原告らは親の不知の間に本件事故現場まで遊びに行つたものである事実を認めることができる。
しかしながら原告らは当時六才と五才の幼児であり、交通の危険を弁識する能力は或る程度そなえていたものというべく、同年令の幼児の行動範囲等から考えると、その親において常に幼児の行動を監視しなければならないということはできないから、原告らが本件事故現場まで遊びに行くことをその親権者らが知らなかつたからといつて、直ちに親権者らに監護義務をつくさなかつた過失ありということはできない。
(三) よつて、被告らの過失相殺の主張は、排斥を免れない。(谷水央)