大阪地方裁判所 昭和41年(ワ)390号 判決
第一 主文
一 被告両名は各自原告に対し、二、八九五、七五一円およびこれに対する昭和四一年二月一一日(被告山口については同月一四日)から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告の被告両名に対するその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は被告両名の連帯負担とする。
四 この判決一項はかりに執行することができる。
第二 原告の申立て
被告両名は各自原告に対し、四、〇〇〇、〇〇〇円およびこれに対する昭和四一年二月一一日(被告山口については同月一四日)から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。
との判決ならびに仮執行の宣言。
第三争いのない事実
一 交通事故発生
とき 昭和三八年七月二二日午前二時一〇分ごろ
ところ 大阪市東区平野町五丁目一番地先交差点
事故車 (1)自家用小型四輪乗用車(和五ぬ五六〇五号)
(2)営業用小型四輪乗用車(大五う九七六六号)
運転者 (1)被告山口
(2)訴外猪川進
受傷者 原告((2)の自動車乗客)
態様 被告山口の運転する(1)の自動車が西から東に向けて進行中、南から北に進行してきた訴外猪川の運転する(2)の自動車と衝突し、ために原告は受傷した。
二 前記(2)の自動車は被告会社がタクシー営業に供していたものである。
第四争点
(原告の主張)
一 原告の受傷部位程度
顔面打撲挫創、頭部打撲傷、腰部打撲傷、外傷性神経症により大野病院に事故当日から同年一一月二四日まで入院し、また右頭部外傷による後遺症のため翌三九年二月一八日から現在まで北野病院に通院治療中である。
二 被告両名の責任原因
(1) 被告山口は本件交差点において東行信号機が赤を示しているのにこれにしたがわないで進行した過失により本件事故を起こした。よつて民法七〇九条により後記損害を賠償しなければならない。
(2) 被告会社は自賠法三条により後記損害を賠償しなければならない。
三 本件事故により原告の受けた損害
(1) 療養費
(イ) 大野病院入院治療費、氷代等 一三、七七五円
(内訳)別紙のとおり
(ロ) 北野病院通院治療費 一九八、二三〇円
昭和三九年二月一八日から昭和四一年七月一二日までの間二八五日
(ハ) 北野病院への通院交通費 二九、八六〇円(違算)
(内訳)阪急電車能勢口―梅田間
A 昭和三九年二月一八日から昭和四一年一月三一日までの間二五三日(一日往復一〇〇円)
B 昭和四一年二月一四日から同年七月一二日までの間三二日(一日往復一二〇円)
(ニ) 妻の付添費 一二六、〇〇〇円
大野病院入院一二六日間(一日一、〇〇〇円)
(2) 見込み利益の喪失
(イ) 昭和三八年八月一日から昭和四〇年一二月末日まで 七二五、〇〇〇円
(ロ) 昭和四一年一月一日から昭和四八年一二月末日まで 一、七一四、二八五円
原告は事故当時二五才で大阪市北区フジ産業株式会社の社員として一ケ月二五、〇〇〇円の給料を受けていたが、前記傷害および後遺症のため失職し、(イ)の期間はもちろん、なお将来も相当長期に亘つて労働能力を喪失している。とりあえず(イ)および(ロ)の期間中の損害((ロ)はホフマン式)を請求する。
(3) 慰謝料 二、〇〇〇、〇〇〇円
原告は甲南大学を卒業した前途有為の青年であるが、前記後遺症のため通院治療中であるが完治の見込みたたず、現在は新聞を一面ほど読むと、またテレビを一〇分くらい見ていると頭が痛くなつてあとを続けることができないし、痛さを辛棒していると吐き気を催してくる。かような症状のため結局働くことができず労働能力が消失している。
四 本訴請求
以上のうち四、〇〇〇、〇〇〇円およびこれに対する本件訴状送達日の翌日(被告山口につき昭和四一年二月一四日、被告会社につき同月一一日)から支払いずみまで年五分の割合による遅延損害金。
(被告会社の主張)
一 訴外猪川の無過失
本件事故は、被告会社運転手猪川が原告ほか三人の客を乗せ国道二六号線御堂筋の自動車路を北進中、本件交差点手前で青信号を確認し制限内の速度で北進を続けていた際東進してきた被告山口の後記無謀運転により発生したものであつて、訴外猪川に運転上の過失はなかつた。
かりに訴外猪川が速度違反をしていたとしても、それは本件事故の発生となんら因果関係がない。けだし本件の場合たとえ制限内の速度で進行していても事故の発生を回避することは不可能であるばかりでなく、極端に減速した場合事故は猪川運転の車が被告山口運転の車に衝突する逆の結果を惹起することとなり、さらに急速度で違反運転をした場合かえつて事故を免れ得たことになるからである。
二 被告山口の過失
被告山口は飲酒のうえ停止信号を無視し、かつ無燈火のまま制限速度をこえ暴走して訴外猪川の運転する車の左側中央に激突したものである。本件事故の責任は挙げて同被告にある。
第五証拠〔略〕
第六争点に対する判断
一 被告両名の責任原因
(1) 被告山口、訴外猪川の過失について
〔証拠略〕によるとつぎの事実が認められ、反対の証拠は信用しない。
(イ) 本件交差点は幅員三二・八メートルの南北道路と幅員七・六メートルの東西道路が直角に交差する場所で全面アスフアルト舗装がなされており、南北道路のうち北行車道は西から第三区分帯(緩行車道、幅員五・五メートル)、緑地帯(幅員四・五メートル)、第二区分帯(幅員三・二メートル)、第一区分帯(幅員三・二メートル)となつていた。
(ロ) 右交差点では信号機により交通整理が行なわれていたが、夜間は暗く左右の見通しはやや悪く、自動車の最高速度は四〇キロメートル毎時と指定されていた。
(ハ) 訴外猪川は自動車に原告ら四人の客を乗せ毎時約六〇キロメートルの速度で第二区分帯を北進中、右交差点の手前約七〇メートルの地点で対面信号が青に変つたので従前の速度のまま進行し交差点に進入した瞬間、西方から東進してきて交差点内に進入した被告山口の運転する自動車を左斜め直前に認め、避譲措置をとるいとまもなく同車に衝突された。
(ニ) 被告山口は交差点の手前で対面信号が赤となつていたのにこれにしたがわず交差点内に進入し、猪川の運転する自動車左側面に自車正面を衝突させた。
以上の認定によると、被告山口には停止信号に違反して進行した過失が認められ、また訴外猪川には指定最高速度をこえて運転した過失が認められる。被告会社は右の速度超過と本件事故との間には因果関係がないと主張するが、速度超過が事故の一因をなしていることは以上の認定から明らかである。
(2) したがつて、被告山口は民法七〇九条により、被告会社は自賠法三条により、原告が本件事故のため受けた後記損害を賠償しなければならない。
二 損害
〔証拠略〕を総合すると、原告は本件事故のため頭部外傷第二型等の傷害を受け、事故当日から昭和三八年一一月二四日まで大野病院に入院治療したのち自宅療養に移つたが、頭痛、吐き気などの症状が残つていたので昭和三九年二月一八日から北野病院脳神経外科に通院し治療を受け現在におよんでいること、現在では頭部外傷後遺症として右上肢の不全麻痺と頭痛等の症状があるが徐々に軽快していること、甲南大学を卒業し事故当時二五才でフジ産業株式会社に勤務し月給二五、〇〇〇円を得るかたわら夜間バンドマンをしていたが、受傷入院のためいずれも失職したこと、昭和四一年四、五月ごろ近畿マホー瓶株式会社の営業課に勤務するようになつたが右後遺症のため仕事を続けることができず一ケ月で退社し、同年九月一六日から夜間バンドマンをしていること、かようにしてつぎのような損害を受けたことが認められる。
(1) 療養費 計三六四、六四五円
(イ) 大野病院入院中雑費(氷代等) 一一、二七五円
(内訳) 原告主張のとおり(ただし、サクロン、リポビタンD、アスパラ、ウチミ薬計二、五〇〇円は医師の指示にもとづいて使用したものでないから除外した。)
(ロ) 北野病院通院治療費 一九八、二三〇円
原告主張のとおり
(ハ) 北野病院への通院交通費 二九、一四〇円
(内訳)原告主張のとおり
(ニ) 妻の付添費 一二六、〇〇〇円
原告主張のとおり
(2) 見込み利益の喪失 計一、五三一、一〇六円
(イ) 昭和三八年八月一日から昭和四〇年一二月末日まで一ケ月二五、〇〇〇円の割合による利益喪失合計七二五、〇〇〇円
(ロ) 昭和四一年一月一日から昭和四八年一二月末日まで一ケ月一〇、〇〇〇円の割合による利益喪失合計八〇六、一〇六円(ホフマン複式月ごと)
(イ)の期間は原告主張のとおり労働能力を全部喪失したものと認められるが(ロ)の期間はそのように認めがたく前認定のような状態から判断して、一ケ月一〇、〇〇〇円程度の利益を喪失するものと認めた。
(3) 慰謝料 一、〇〇〇、〇〇〇円
三 結論
そうすると被告両名は連帯して原告に対し、前記損害合計二、八九五、七五一円およびこれに対する昭和四一年二月一一日(被告山口については同月一四日)から支払いずみまで年五分の割合による遅延損害金を支払うべき義務があるので、原告の本訴請求を右の限度で認容する。
訴訟費用の負担につき民訴法第八九条、九二条、九三条、仮執行宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 谷水央)
大野病院治療費、氷代等
<省略>