大判例

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大阪地方裁判所 昭和42年(わ)2145号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判決理由】(弁護人の主張について)

弁護人は、本件事故は被害者松田弘が道路交通法第五三条所定の合図を行わず、かつ、同法第三四条第三項に規定する右折の方法を遵守せずに交差点入口付近から右折しようとした過失により発生したものであつて、被告人には自動車運転上の過失はない旨主張するので考察するに、被害者松田弘に弁護人指摘のような過失のあつたことは明白であるが、元来自転車は自動車、原動機付自転車等と異なり、その性質上比較的不安定で、ただでさえ動揺し易いばかりか、自転車を操縦するには法定の資格を要しないだけに、その操従者は一般に交通法規の知識を欠き、また自動車の運転者ほど注意深くなく、従つていつ方向を変えるかも図りがたいのが通例であるから、自動車の運転者がなんらの合図をせずに追抜きまたは追越そうとすると自転車の操縦者がこれに気付かず、その方向、特に右に進出するため自動車と接触し、あるいは自動車を見て狼狽の余り操縦を誤つて転倒する危険のあることは常に予見し得るところである。右予見の可能性がある以上、自動車運転者には予め警音器を鳴らして自転車操縦者を警戒避譲させ、安全にその側方を通過できるよう動静注視に意を用い、間隔に留意しつつ速度を調節すべき業務上の注意義務があるといわなければならない(東京高等裁判所昭和三五年一〇月一七日判決下級裁刑集二巻九、一〇号、一、二〇五頁参照)。右各義務を尽したのに拘らず自転車操縦者の義務違反により死傷事故が発生したとすれば、その結果は被害者に帰責すべきである。しかるに本件においては判示のとおり被告人も前記各義務を懈怠し、警音器を鳴らして警告を与えないばかりか、動静注視を欠くまま時速五五粁という高速度で自転車の側方僅か一米余の地点を漫然追抜こうとしたことが認められるから、被害者松田弘に過失があつても被告人の過失責任を否定することはできない。以上の理由により弁護人の主張は採らない。(太田実)

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