大阪地方裁判所 昭和42年(ワ)1658号 判決 1970年7月18日
原告
相互タクシー株式会社
代理人
平田奈良太郎
被告
株式会社石田組
代理人
押谷富三
田宮敏元
辺見陽一
被告
大阪市
指定代理人
平敷亮一
外二名
主文
一、被告両名は、原告に対し、各自、金八九四、三九一円および内金三〇四、八四〇円に対する昭和四二年四月二九日以降、内金五八九、五五一円に対する昭和四三年九月二二日以降、各完済まで年五分の割合による金員を支払え。
二、原告のその余の請求を棄却する。
三、訴訟費用はこれを二分し、その一を被告らの、その余を原告の負担とする。
四、この判決第一項に限り仮に執行することができる。
事実
第一、請求の趣旨
一、被告らは、各自、原告に対し、金一、八二四、〇九七円および内金六四四、九九五円に対する訴状送達の翌日以降、内金一、一七九、一〇二円に対する昭和四三年九月二二日以降、各完済まで年五分の割合による金員を支払え。
二、訴訟費用は被告らの連帯負担とする。
との判決ならびに仮執行の宣言を求める。
第二、請求の趣旨に対する被告両名の答弁
一、原告の請求を棄却する。
二、訴訟費用は原告の負担とする。
との判決を求める。
第三、請求の原因
一、事故発生
昭和四一年二月二〇日午後九時三〇分頃、原告会社の自動車運転手である訴外林輝男が原告会社所有の営業用普通乗用自動車(大五あ〇七一七号、以下事故車という)に訴外松井昭外二名の乗客を乗せて、大阪市城東区放出中一丁目二五番地先道路を通過しようとした際、同所道路の中央部分に道路を掘り起して工事をしたあとの工事穴が放置され、これが折からの降雨でできた水溜りの水面の下に隠されていたため、訴外林においてこれを避けえず、事故車の前輪を右工事穴に突込んで急停車し、その反動で、事故車の乗客で助手席に乗つていた訴外松井が頭を事故車の天井に打ちつけて受傷し、事故車が破損した。
二、責任原因
(一)、右事故現場道路は、幅員九メートルで、二〇余年前に舗装されたまま補修の行われていない悪路で、道路北側には排水の下水溝がなく、又南側には下水溝が設けられてはあるが、泥土で埋もれている状況で、本件事故前に、被告大阪市水道局工務部配水課の下請負業者である被告株式会社石田組(以下被告石田組という)が被告大阪市より水道漏水修繕工事を請負い、被告石田組において、前記水溜りのあつた場所のコンクリート舗装の部分を掘り起し穴をあけて水道漏水個所を修繕したのち、その工事跡の穴を復元せず、そのまま放置しておいたものである。
(二)、被告大阪市は地方公共団体で、前記道路の管理者であるが、およそ道路の管理者としては、所轄内道路を常時安全良好な状態に保つよう維持するとともに、道路工事を施行させ、道路を掘り起したような場合には、右の工事穴を復元させるか、或は右の工事穴の存在を明らかにするため、防柵を設置するなり、注意標識をつけるなりして、交通の制限又は禁止をなし、交通の危険を防止するための措置を講ずる義務のあるべきところ、これを怠つたものであり、又、被告石田組は、前記のとおり被告大阪市より請負つた水道漏水個所を修繕するため、道路を掘り起したのであるから、工事終了後直ちに工事跡を復元するか、さもなくば、工事穴の存在を明らかにするため、防柵を設置するなり、注意標識をつけるなりして該道路を通行する人又は車に注意、徐行、避譲を促がし、交通の危険を防止するための措置を講ずる注意義務があるのに、これを怠つたものであつて、従つて、被告大阪市は道路の管理者として、被告石田組は不法行為者として、本件事故によつて生じた損害を賠償する義務がある。
三、損害
(一) 車両修繕費<省略>
(二) 休車損害 金三五、三一四円
右破損のため、昭和四一年二月二一日より同年三月一一日までの一九日間、事故車を運行しえなかつたので、その間の得べかりし損害金
(三) 求償債権
1、訴外松井昭は、本件事故による損害賠償を求めるため、まず、大阪地方裁判所に原告を被申請人として仮処分申請をなしたところ、同裁判所昭和四一年(ヨ)第三三二四号、同(ヨ)第三八八一号、同(ヨ)第三二六七号各仮処分申請事件において、金四四七、二一五円の仮払いが認容され、これにより、原告は右金員および執行費用金八、九七六円を同訴外人に支払つた。続いて、本件原告および被告石田組を被告として、同裁判所に訴を提起したところ、同裁判所昭和四一年(ワ)第五七三六号損害賠償請求事件において、前記以外に金一、〇〇、九二一円およびこれに対する昭和四一年一一月一九日以降完済まで年五分の割合による金員の支払が認容された。このため原告は昭和四三年九月二一日、同訴外人に合計金一、一七九、一〇二円を支払つた。
2、その他に、原告は同訴外人に仮渡金二五、〇〇〇円、治療費金二三、〇〇〇円を支払つている。
3、これらはいずれも本件事故に関し責任を有する被告両名が支払義務を負担するところ、同訴外人が原告の営業車の乗客であつたことから、原告においてこれを立替え支払つたものである。
四、よつて、原告は被告両名に対し、各自、金一、八二四、〇九七円および内金六四四、九九五円に対する訴状送達の翌日以降、内金一、一七九、一〇二円に対する昭和四三年九月二二日以降完済まで年五分の割合による金員の支払を求める。
第三、被告らの主張
一、被告石田組
(一)、請求原因に対する認否
原告主張の交通事故が発生したとの点は不知、原告主張の場所に被告石田組施行中の工事穴があつたとの点、被告石田組に過失の存するとの点をいずれも否認する。
(二)、被告石田組は、昭和四一年初め頃、被告大阪市土木局より、城東区放出中一丁目二五番地先の寝屋川南岸線道路南側約三分の一の舗装新設工事を請負い、これを訴外協和道路株式会社に下請けさせたが、同年二月一四日、右舗装新設工事を完了し、同月一八日、被告大阪市に工事完工届を提出して、同月二二日、被告大阪市の検査を受けた。他方、被告大阪市水道局より、前記放出中一丁目二五番地先の水道漏水防止工事をも請負い、同月三日、右道路の旧舗装部分を約一平方メートル余り掘り起して漏水防止工事をなして仮復旧し、続いて同月七日と一〇日に同所近くの個所で漏水防止工事をなし、いずれもその翌朝までに仮復旧した。そして同年二月一四日には、前記の舗装新設工事のついでに右仮復旧場所の本舗装復旧工事をなし終えた。なお同月二四日に前記同月三日になした工事個所に再度漏水があつたため、被告大阪市水道局よりの指示により、翌二五日、本復旧した舗装部分をコンプレッサーを使用して割り道路を掘り起して防水工事をなしてその翌朝に同所の仮復旧工事を終えた。以上のとおり、被告石田組は原告主張の事故現場付近の舗装工事と漏水防止工事をなしたが、これらの工事をいずれも全部完了しその都度道路を旧に復しておいたものであるから、原告主張の同年二月二〇日に前記道路に工事穴なるものが存在するはずがなく、その他道路面の瑕疵は存在しなかつた。従つて、原告主張の本件現場で自動車が工事穴に落ち込む交通事故が発生するはずはなく(もし交通事故が発生したとしても、同所は原告主張の本件現場と異つた他の場所であろう)、工事を請負つた被告石田組に過失の存するはずはない。
(三)、仮りに原告主張の本件現場に工事穴が存在していたとすれば、被告石田組は予備的に過失相殺の主張をする。即ち、道路中央に深い工事穴が存在していたならば、自動車運転者としてはそこへ差しかかる前に十分その存在に気づき、適宜工事穴を避けるなど事故発生を防げえたのに、漫然と進行したため事故を発生させたもので、その過失は大きく、損害額の算定につき斟酌されなければならない。
(四)、原告は、損害額につき、仮処分命令によつて支払いを命ぜられた金額と、本案判決によつて支払を命ぜられた金額を各別に計上するが、前者は後者に当然含まれるものであるから、本訴において、前者につき求償を求めるのは失当である。
二、被告大阪市
(一)、請求原因に対する認否
被告大阪市が大阪市城東区放出中一丁目二五番地先の寝屋川南岸線の道路の管理をなしていること、被告石田組に右道路の下に埋設してある水道管の漏水個所の復旧工事を施行させたこと、はいずれも認めるが、右道路に工事穴が存在していたとの点および右道路が通常備えていなければならない安全性を欠いていたとの点を争い、その余の点はいずれも不知。
(二)、被告大阪市は、昭和四〇年五月一三日、被告石田組との間で、前記寝屋川南岸線道路の舗装新設工事請負契約を締結し、被告石田組は右契約に基き、大阪市城東区放出中一丁目六九一番地先から同町二七番地先までの区間の道路舗装工事に着手し、昭和四一年二月九日、原告主張の本件事故現場付近を除き、その余の部分の舗装を完了した。本件事故現場付近は、道路中央部に埋設されていた直径五ミリの水道管から漏水があり、地盤が濡れてアスファルト舗装ができなかつたのであるが、同月一〇日、漏水個所の修理がなされて、同月一四日に舗装に着手し、即日完了した。被告大阪市は同月一八日に被告石田組より寝屋川南岸線の道路舗装が完了した旨の報告を受け、その出来高を査定するため、同月二二日、被告大阪市の係員が被告石田組の係員の立会いのもとに検査を行つたところ、その際には、原告主張の個所に工事穴なるものは存在しなかつた。もし原告主張どおりとすれば、同月二〇日午後九時三〇分頃から同月二二日の間に急拠舗装をなしたことになるが、同月二〇日は雨で地盤がぬれたのであるから、二二日までに舗装工事をなすことは不可能である。従つて、同月一四日以降同月二二日までは原告主張の個所に工事穴は存在しなかつたことになる。以上のとおり被告大阪市に道路管理上の瑕疵はなく、原告主張の事故による損害を賠償する義務はない。
第四、証拠関係<略>
理由
第一、事故発生
一、<証拠>を綜合すれば、原告会社の自動車運転手である訴外林輝男は、原告会社所有のタクシー(大五あ〇七一七号、以下事故車という)に訴外松井昭外二名の乗客を乗せ、大阪市城東区放出中一丁目二五番地先道路を東から西へ進行していたところ、道路中央部にあつた穴に事故車の前輪を落し、ために事故車が急停止し、その衝撃で助手席に同乗していた乗客の訴外松井昭が受傷したこと、同道路の幅員は約九メートルで、事故現場付近はその南側約二メートルが非舗装でその余の北側部分がごく一部を除きコンクリート舗装になつていたが、事故車の車輛が落ち込んだ穴は舗装部分中央からやや南(左)側で幅約一、五メートル四方にコンクリートが切り取られ、深さ約三〇センチメートルであつたことがそれぞれ認められる。被告らは、原告主張の日時に主張の場所には主張のような穴は存在していなかつたと主張し、証人長野六則、同谷口幸雄、同森岡四郎は右主張に添う証言をなすが、本件事故車の乗客であつた訴外松井昭が事故車の急停車により受傷していること、右事故車は道路面の穴に前輪を落して停車したものであること、その現場が原告主張の大阪市城東区放出中一丁目二五番地先路上であることの前記認定の各事実、特に、前掲甲第四号証および証人山口豊造の証言によれば、原告会社の社員である訴外山口豊造が、本件事故の知らせを受けて事故現場に赴くと、道路中央よりやや左寄りにある穴に事故車の前部が落ち込み、車軸が路面のコンクリートにつかえて自力では走行できず、ためにジャッキで事故車を持ち上げてロープで引張り上げた事実が認められるので、これらの事実に照すと、前記各証言はたやすく措信しがたく、乙第四号証をもつてしてもいまだ被告ら主張事実を証するに足りない。その他前記認定を左右するに足る証拠はない。
第二、被告石田組の責任
一、<証拠>によれば、被告石田組は、被告大阪市から本件事故現場付近道路の舗装工事と水道管補修工事を請負い、舗装工事を訴外協和道路株式会社に下請けさせ、水道工事は被告石田組において直接その工事にあたり、同市水道局東部配水管事務所の指示にもとづき水道管漏水防止工事をなしていたのであるが、工事の方法は、通常、同事務所から工事の内容と工事現場の指示を受けると、即日午後八時頃から夜間にかけて工事にかかり、道路を掘り返して水道管漏水個所を修理し、工事終了後に掘り返した部分に盛土して仮復旧していたこと、このような工事を、まず昭和四一年二月三日になし、コンクリート舗装されていた幅二五メートル、奥行二一メートルの部分を掘削し、深さ約一メートル掘り返して埋設してあつた水道管の補修工事をなし翌四日朝までに、工事を終え、次いで同月七日、前記三日になした個所より約一〇メートル東の個所で、又同月一〇日にもその付近でそれぞれ工事をなしてその後それぞれ仮復旧したこと、なお更に同月二五日には、道路三日と一〇日に工事をなした個所に再度の漏水があり、再び道路を掘り返して水道管金具の取り替えをなしていること、右の三日に工事をなした個所が原告主張の本件事故現場と一致すること、その後同月末頃本件事故につき所轄警察署の取調べがあり、まもなく右の個所の損傷部分に防柵および標識を設置するに至つたこと、がそれぞれ認められ、右認定に反する証拠はない。これと前段認定の事実を考え合せれば、本件事故現場は、被告石田組が水道漏水補修工事等のため、舗装されていた道路を掘削し、同月三日になした個所の道路面を仮舗装のままで完全に復旧させていなかつたため、同所がその後の車輪の交通、降雨等により盛土が削りとられて陥没し、そのままの状態に放置されていたものと推認するを相当とする。証人松井一史は、被告石田組より本件事故現場付近の道路舗装工事を下請けし、同月一四日には水道漏水工事等で掘削された個所を含めて、付近一帯の本舗装工事をなしたと証言するけれども、右はたやすく措信できず、他に前記認定を覆えすに足る措信すべき証拠は見当らない。
二、そうだとすれば、被告石田組は、道路工事施行者として、道路面を掘削したならば速やかにその完全な復旧をなし仮りにも道路交通上の危険を生ぜしめることのないようになすべき注意義務があり、又かかる復旧工事が完全になしえなかつた場合には、工事後本復旧するに至るまでの間、同所を通行する車、人に対し、道路の危険を表示し、注意を喚起するための防柵又は標識を設置する義務があるところ、いずれもこれを怠つた過失があるものというべきである。よつて、被告石田組は不法行為者として、本件事故によつて生じた損害を後記のとおり被告大阪市と共に賠償する責任がある。
第三、被告大阪市の責任
一、被告大阪市が本件事故現場の道路を市道として管理していること、被告石田組に右道路下に埋設してある水道管の漏水個所の復旧工事を施行させていたことはいずれも当事者間に争いがない。
二、そして、被告石田組が本件事故現場を掘削し、その跡を本復旧しなかつたため、道路ほぼ中央部に少くとも約一五メートル四方にわたりコンクリートが切り取られて深さ約三〇センチメートルの穴が露出し、しかもこれに危険防止のための防柵や標識が設置されずに放置されていたことは前段各認定のとおりである。
三、ところで、一般的に、道路の管理者は、その所轄管内の道路を常時良好な状態に維持、管理をなし、もつて交通の安全性を確保すべき義務があり、道路工事を施行させ、請負業者をして道路を掘り起させたような場合には、常に、その部分が速やかに復元されるよう又復元に日時を要する場合には通行車輛等に危害が及ばないように措置を講じ、自からも十分監視、指導する義務があるものと解すべきところ、本件事故現場は大阪市内市街地内の道路で走行する車輛も多く、道路中央部に工事穴等の損傷個所が放置されていたとすれば、車輛が誤つてその個所に車体を嵌落させる虞れのあることは容易に予測されるのであるから、このような場合、本件事故現場付近道路の管理者である被告大阪市としては、前記工事穴による損傷個所を速やかに修理するか、その個所に防柵を設置し又は標識を掲げるなどして通行車輛に注意を喚起し、交通上の危険を未然に防止する措置を講ずべきところ、これを怠つたもので、道路の管理に瑕疵があつたものというべきである。従つて、被告大阪市は道路管理者として、本件事故によつて生じた損害を被告石田組と共に賠償する責任がある。
第四、過失相殺
一、<証拠>を綜合すれば、本件事故現場付近の道路は幅員九メートルのうち、南側約二ないし三メートルは非舗装で、その余の北側部分は多少非舗装部分のあるところもあるが、ほとんどコンクリート舗装になつていたこと、当時はかなりの降雨のため、非舗装部分は一面に、舗装部分は所々に水溜りができていたこと、舗装部分の道路はその中央に東西に走る舗装の継目があり、これを頂点に路面は南北にごくゆるい孤状をなして両端ほど低くなつており、本件工事穴は路面中最も高い中央部分で、継目部分より南へ一五メートル四方のコンクリートを切り取つた跡であること、原告会社の自動車運転手訴外林輝男は事故車を運転して時速約三〇キロメートルで本件事故現場道路を東から西へ進行中、前方約四〇メートルの道路上に水溜りを発見したので軽くブレーキをかけて時速約二〇キロメートルに減速して右の水溜りを通過しようとしたものであること、の各事実が認められる。右によれば、同訴外人の通過しようとした水溜りは路面の最も高い中央部分であつたのであるから、自動車運転者としては、前方をよく注視すれば、単にわずかな地盤の低下部分に水が溜つている場合とは異なり、道路の異常な状態を容易に識別し、察知しえたもの推認するを相当とし、そうならば、このような場合、水面下に如何なる障害があるかも知れないことを慮つて、水溜り部分を迂回するか又は最徐行して危険の発生を防止する注意義務があるものというべきである。しかるに同訴外人においてこれを怠り、多少減速したのみで漫然と通行しようとしたのであるから、運転上の過失のあつたことは明らかである。原告は、本件事故現場付近の道路は道路幅一ぱいに一面に水溜りとなつていたので、水面下に工事穴が隠されていたことを予測できなかつたと主張し、証人林輝男はこれに符合する証言をするが、右は前記認定の事実に照してたやすく措信しがたく、他に原告主張事実を証するに足る措信すべき証拠はない。
二、以上によれば、本件事故は、原告側にも過失(事故車の運転手である訴外林に運転上の過失がある場合には事故車の運行供用者である原告についても過失あるものとされる)があるので、損害額の算定についてもこれを斟酌されるべきであり、その割合は前記認定の一切の事情を考慮して、原告側を五、被告側を五と認めるを相当とする。
第五、損害
一、車輛修繕費 金五二、七四五円
<証拠>により事故車の修繕費として金一〇五、四九〇円を要した事実が認められ、これを前記の割合により被告らに賠償を求めうる金額を算定すれば金五二、七四五円となる。
二、求償債権
(一)、原告が本件事故により受傷した被告車の乗客訴外松井昭に、支払つた損害賠償金は次のとおりと認められる。
1、仮処分命令に基き支払つた治療費、休業損害等および執行費用
金四五六、一九一円
(<証拠>による。)
2、判決に基き支払つた療養関係費、逸失利益、慰藉料、弁護士費用および遅延損害金
金一、一七九、一〇二円
なお同金員は昭和四三年九月二一日に支払われた。
(<証拠>による)
3、原告より任意に支払つた治療費等 金四八、〇〇〇円
(<証拠>による)
(二)、右金員を前記の割合により被告らに賠償を求めうる金額を算定すれば、合計八四一、六四六円(円未満切捨)となる。なお前記(一)1・2が重複するものでないことは、前掲証拠に照して明らかである。
三、原告は休車損害として金三五、三一四円の請求をするが、甲第二号をもつてしても未だ原告の休車による損害額が金三五、三一四円と認めるには足りず、他にこれを認めるに足る適確な証拠はない。、
第六以上によれば、被告石田組は不法行為者として、被告大阪市は道路の管理者として、各自、原告に対し、金八九四、三九一円および内金三〇四、八四〇円(前記判決に基き支払つた関係部分を除く)につき本件訴状が被告らに送達された日の翌日であること記録上明らかな昭和四二年四月二九日以降、内金五八九、五五一円につき原告が前記判決に基き訴外松井に支払つた日の翌日である昭和四三年九月二二日以降、各完済まで民事法定利率年五分の割合による金員の支払義務あること明らかであるから、右の限度で原告の本訴請求を正当として認容し、その余を失当として棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九二条、第九三条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条を適用して、主文のとおり判決する。(吉崎直弥)