大判例

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大阪地方裁判所 昭和42年(ワ)2624号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕三、次に原告が本訴提起によりした解約申入の効力の有無即ち原告が被告藤井に解約の申入れをした本訴提起当時本件家屋の明渡を求めるにつき正当な事由があつたかどうか判断する。

<証拠> によれば次の事実を認めることができ、他に右認定を左右するに足る的確な証拠はない。

(一) 本件家屋は概ね、被告藤井が賃借している北東部分(これは更に被告加美田及びその家族が居住の用にあてている八畳、三畳、台所とそれ以外の土間に分かれる。)とその南側部分(これは八畳二間と十間その他から成る。)、更に土蔵とこれに連なつて原告及びその家族の居住部分がある西側部分とから成ること、

(二) 原告及びその家族が居住用にあてている部分は三畳、六畳、六畳、台所、それに中二階(六畳、四畳の二間がある。)とからなつているところ、これを原告及び妻、長女(昭和三九年一月一七日生)、それに母(明治四〇年生)の四人家族が、北側の六畳は応接間として、南側の六畳は居間として、中二階は原告夫婦及び長女の寝室として、三畳は母の寝室としてそれぞれ使用しているが、同人らが起居するのに狭すぎるということはないこと(尤も中二階は天井が低く夏期は暑くて居住には適しないのでこの時期には右の者らが居住するのに右居住部分のみでは十分な広さがあるということはできないこと)、

(三) しかし本件家屋の建築はかなり古く原告らの居住部分で約一〇〇年、それ以外の部分でそれ以上の年月を経ており、柱の傾斜、外壁の剥落部分が目立ち、原告ら居住部分はもとより全体としてかなり傷んでいる(しかし朽廃又は極めてこれに近い状態にあることまでは認められない。)うえ、家がいたずらに大きいのに昔のこととて採光に対する配慮が充分なされていないため右原告ら居住部分についてみれば室内に日光がさし込むのは南側の六畳のみでそれ以外の部屋は昼間でも電灯が欠かせない状態で、家の中が全体に陰気で健康的でないこと、なお原告らには右の居住部分のほか被告藤井の賃借部分の南側に接してある八畳二間があるが、ここは傷みが特にひどく使用に耐えないため現在は仏壇が安置されているにすぎぎないこと。

(四) 以上からして原告及びその家族の健康的で快適な生活のためには少くとも本件家屋の大改造が必要で原告もこれを計画中であるが、これがかなり老朽であることを考えると補修はもはや不可能であり、かりに不可能でないとしても新たに建築した方が費用が安上りであること、しかして新築するとして原告には本件家屋の敷地以外には土地はないのでこれを取毀わした跡地を充てるより仕方がないこと。

(五) 一方被告藤井は建築資材の販売等を営むもので昭和三五、六年頃従来の個人企業を会社組織に改めた(商号は株式会社藤井商店)うえ、引続き本件家屋で建築資材のほか主として厨房器具の小売りをし、本件家屋をそのための倉庫、事務所兼店舗として使用していたが、本件家屋は近鉄八尾駅から南方約三〇〇メートル、交通至便な商業地域に所在し右の営業上極めて恵まれた場所にあり、本件家屋の右営業上における必要度はかなり高いこと、他方同被告は本訴提起当時右のほか八尾市光南町において建築資材の販売(売上げ高は本件家屋でのほぼ倍)及び貸家業(昭和四五年六月当時貸家数八〇戸)を、また同市福栄町において生コンの製造販売を目的とする藤井コンクリート工業株式会社を経営しており(昭和四五年六月当時の規模工場敷地面積六〇〇〇坪、従業員数二、三百人、ミキサー車の台数三〇台前後)、その主力はむしろ他とは比較にならないほど多額の賃金(数億円)を投じてその操業を開始した生コン製造業にあり、本件家屋の厨房器具等の販売は同被告の営む各種事業全体を通じてみるとさしたる位置を占めていなかつたことが窺知できること(同被告が昭和四二年春の統一地方選挙の際本件家屋の大部分を石田ほか一名に選挙事務所として使用させたことは前記のとおりであるところ、その期間は一ケ月以上に及んでいるが同被告の営業上このようなことを許容しえたことは本件家屋での営業がさしたる位置を占めていなかつたことの一つの証左である。)、のみならず同被告は右のようにかなり手広く事業を営んでおり、その経済的手腕からすれば本件家屋に代るべき店舗を他に確保することはさほど困難ではないと思われる状況にあること

以上の各事実が認められる。

右事実から認められる、原告の本件家屋の明渡を必要とする事情、被告藤井の営業上本件家屋を必要とする事情(尤も本件家屋での営業は前記のとおり株式会社藤井商店の営業であるが、同社は会社とはいつても実質は同被告個人の営業と同視しうるから、同社の営業上の必要性は同被告の必要性と解して妨げない。)とを比較考量すれば、原告は本訴提起当時被告告藤井に対し本件家屋の明渡を求めるにつき正当事由を有していたものというべきであるから訴状送達により解約の申入れがなされたと解される昭和四二年六月二日限り本件家屋の賃貸借契約は終了したものというべきである。

(松井賢徳)

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