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大阪地方裁判所 昭和42年(ワ)4849号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕前記(1)(2)より前記本件土地に関する両売買契約の目的物についての表示を合理的に意思解釈すれば次のとおり解釈できる。即ち、右各売買の目的物は前認定の残地についてのそれの如く農民被告間の売買契約上の地位(前(二)項(1)(2)の事実関係のもとではこう解される)ではなく被告が前記の自己宛の農地法五条の転用による所有権移転許可により取得した本件土地で、しかも将来右許可に基き宅地に造成され法律上処分自由な宅地化(非農地化)したときのもの、即ち将来の宅地(非農地)としての本件土地である。換言すれば本件土地に対するそれが将来宅地化したときにおける所有権であると解するのを相当とする。尚法律上宅地(非農地)となるためには現況のみならず地目も非宅地とならねばならぬとの法律的見解を契約関係者がもつていたとしても、右が誤解で現況さえ変れば(宅地化すれば)右許可は不要で処分自由なものとなる以上、かかる誤解は契約の目的物が前記の如く、将来の宅地(現況の宅地化したもの)と解することのさまたげとなるものでもなくまた、各売買契約自体に附款としての何らかの不確定期限又は条件を付したものと推認せしめる根拠ともならない。また、前記甲一号証の五条許可に関する条項もこれにそう許可申請手続に関し何らの行動がなされていない点及び後に認定する原告への中間省略登記の約束がなされ、また前認定の如く代金も全額支払い済である点そのほか弁論の全趣旨と対比すれば効果意思の内容または附款として意味を見出し難く例文に過ぎないものとみる外ないから、前記意思解釈のさまたげとなるものではない。

従つて本件各売買の目的物に関する被告の主張は認められない。

そうだとすると被告安達、安達原告間の前記将来の非農地(宅地)となつたときの本件土地の各売買契約は所有権移転効果の帰属の点を除きすべて有効に法律行為としての効力を発生済であるということができる。

(四) そこで被告から訴外安達、訴外安達より原告へと本件土地所有権が移転したかどうかについてみる。

前記のとおり本件将来の物(権利)の各売買契約が所有権移転の効果を各買主に帰属せしめるには右将来の物である宅地化が生じて売主である被告が右宅地化した本件土地の所有権を取得することを要する。そして本件では当事者は右宅地化とは法律上処分自由になることを想定していたのであるから、当事者が売買の目的としていた将来の宅地とは結局農地法の適用を受けない処分自由な宅地となつたものをいうのであるが、同法の適用対象である農地性は同法二条の定義により決すべきであつて、その判定は特段の事情のない限り当該土地の客観的事実状態(現況)を基準として定めるべきであつて当初農地であつてもその後現況上その土地が非農地の状況になれば、かかる状況を現出した者が農地法上の処罰を受けるのは格別、その時より該土地は農地法にいう農地性を失い法律上非農地(通例は宅地化の場合が多いが、これに限らず天災による荒地化、山林化、砂地化、等の場合も考えられる)となるというべく、このことは登記簿上の地目が農地のままであつても変りはないというべきである。これを本件についてみるに訴外安達が被告の了解のもとにおそくとも昭和四一年三月一八日より前に本件土地を土盛りして宅地造成し現況非農地化したことは前示認定のとおりであるから、右現況非農地化の時より本件土地は農地法上の農地でなくなり、これを目的とした被告安達、安達原告間の各売買契約はその客体である将来の非農地(宅地)は宅地化し、その所有権移転的協力も完全に生じ本件土地所有権は被告より安達安達より原告会社へと有効に転々移転し、原告会社はここに完全に現在宅地としての本件土地所有権を取得したものというべきである。

尚、以上は非農地化が被告と安達間、ついで安達と原告間の各売買契約(右双方または後者)の各締結時の前いつの時点において生じたとしても変るところがない。

蓋し、当事者の誤解に拘らず契約時点に現在する宅地の売買として該契約締結と同時に所有権移転の効力を生ずるからである。

仮に一歩ゆずつて本件土地の前記両売買契約が始めから知事の許可を予定しない、またその必要もない将来の宅地の所有権移転を目的とするものでなく、現存する被告が法五条の許可により取得した現況農地の所有権であつて、従つて、その所有権移転は知事の許可を法定条件とするものであつたとしても、そして現況非農地化が安達、原告間の売買契約締結後に生じたものとしても現況が宅地となり農地性を失うに至つた限り右許可は不要となり本件土地(宅地)の所有権は被告より安達、安達より原告会社と順次移転し、原告が最終的に本件土地の所有権を取得することに変りはない。

蓋し、農地法三条または五条に基く所有権移転についての知事の許可による制限は前示の如くその原因の如何を問わず目的農地が非農地化(同法二条の現況主義による)した限り(許可なしに非農地化した者が罰則の適用をうけるは格別)、その時より解除され、その前に締結された、当該農地に関する転々譲渡の各売買契約は所有権移転についてもその効力を生じるものと解されるからである。(増田幸次郎 杉本昭一 古川正孝)

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