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大阪地方裁判所 昭和42年(ワ)5450号 判決

原告

龍山尚

被告

長束俊明

ほか一名

第一 主文

一、被告らは各自原告に対し、一、四二一、四六二円およびこれに対する昭和四二年一〇月一九日から支払いずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二、被告長束俊明は原告に対し、三三、七四〇円およびこれに対する昭和四二年一〇月一九日から支払いずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

三、原告のその余の請求を棄却する。

四、訴訟費用はこれを二分し、その一を原告の負担、その余を被告らの連帯負担とする。

五、この判決一項は、かりに執行することができる。

第二 原告の申立て

被告らは各自原告に対し、四、〇六九、五〇二円およびこれに対する昭和四二年一〇月一九日(本訴状送達翌日)から支払いずみに至るまで年五分の割合による金員(遅延損害金)を支払え。

との判決ならびに仮執行の宣言。

第三争いのない事実

一、本件事故発生

とき 昭和四二年五月二二日午後八時五五分ごろ

ところ 大阪市城東区鶴見町七七六番地先路上

事故車 普通乗用自動車(大阪す三二五七号)

運転者 被告長束

受傷者 原告

態様 原告が原告所有の自家用普通乗用車(タウナス、大阪五す六九二一号)を運転して西から東に進行中、前車が交差点で右折のため停車したのでその後方に停車し、さらに原告車の後方に普通自動車が停車していたところ、事故車が右普通自動車に追突してこれを前方に押し出し原告車に追突させ、その衝撃で原告車前部が先行車後部に軽く追突した。

二、被告長束の責任原因(民法七〇九条)

前方注視義務を怠り高速度で運転を続けた過失により右事故を起こしたものであるから、原告が事故で受けた損害の全部を賠償しなければならない。

三、被告金の責任原因(自賠法三条)

本件事故車は被告金の所有であり、同被告はこれを自己のスクラツプ営業のため運行の用に供し、かつ事故当時その助手席に乗つていたものであるから、原告の受傷による損害を賠償しなければならない。

第四争点

(原告の主張)

一、被告金の責任原因追加(民法七〇九条)

被告金は常にブレーキを整理し急停車をなしうるよう注意すべき義務を怠り、被告長束のブレーキ操作を不能ならしめ追突させたものであるから、原告車の修理代をも賠償しなければならない。

二、原告の損害

(1) 受傷部位・程度、後遺症

頭部打撲傷、頸部捻挫の傷害を受け、東大阪病院に三一日間入院加療したのち通院を続けたが軽快せず、昭和四三年七月にむち打ち症治療のため再度入院しているが、難治性で治ゆの見込みはまつたく立たず廃人に近い状態である。

(2) 数額 合計四、〇六九、五〇二円(違算)

(イ) 療養関係費 計一、一七二、六四二円

(A) 東大阪病院入院雑費 四、四五〇円

(B) 森神経科脳波検査費 五、三六二円

(C) 龍山やす子に対する入院付添費(42・5・22~6・21) 三一、二〇〇円

(D) 右交通費(奈良から三〇回往復) 二三、四九〇円

(E) 佃和子に対する入院中看護料等(前同) 二八、〇八〇円

(F) 岸田ナツに対する通院中家政婦代(42・8・5~9・4) 二四、八〇〇円

(G) 通院のための宿泊費(42・6・21以後) 一、〇五〇、六〇〇円

原告は当時奈良市に母とともに居住し、同所から原告経営の大阪市北区喫茶店リミーに原告車を運転して通勤していたものであるが、前記傷害のため家事はもとより遠距離通院が不能で大阪市内にマンシヨンを借り受け、前記家政婦を付して治療に専念している。そのためマンシヨンの賃借料および家政婦の給料(前記(F)が療養費としてとくに入用である。

(H) 通院交通費 計四、六六〇円

1 東大阪病院(三回) 一、一四〇円

2 北野病院(一六回) 三、五二〇円

(ロ) 逸失利益等 八七三、三三〇円

原告は前記喫茶店リミーを経営しているが、本件事故のため営業に従事することができず、原告に代わる責任者を雇い入れたりしたが、減収を免れなかつた。

(A) 雇いママ龍山やす子に対する給料等(42・7・15~8・25) 四一、〇〇〇円

(B) 「バーテン平井に対する給料等(42・8・26~12・25) 六〇、〇〇〇円

(C) 減収(42・6~43・6一カ月二万円の割合) 二六〇、〇〇〇円

(D) 累計赤字(42・5~12) 五一二、三三〇円

病気回復後みずから営業にあたる予定であるが、顧客を失わないためその間営業を継続しなければならず、その経費が損害となる。

(ハ) 原告車修理代残 三三、七四〇円

修理代は一八三、七四〇円であつたが、被告長束においてすでに一五〇、〇〇〇円を弁済した(同額弁済の点は当事者間に争いがない)。

(ニ) 慰謝料 二、〇〇〇、〇〇〇円

右算定につき特記すべき点は左のとおり。

(A) 前記受傷部位・程度、後遺症。

(B) 原告には夫がなく母と二人で生活し、数年前ようやく待望の喫茶店を開店することができ、その喫茶店営業も原告みずから終日営業に従事することにより客の信用を得て一カ月約一〇万円の純益をあげうるに至り、原告の老後の生活の見通しがついていたが、前記症状のため喫茶店営業に従事することができず赤字がでるばかりであるので、営業を断念しなければならないという窮地に立つている。

(C) 治療のため母と別居しており、その生活上の不便、精神的不安はきわめて大きい。

以上により慰謝料は四、〇〇〇、〇〇〇円が相当であるが、本件では内金請求をする。

(被告らの主張)

被告長束は原告に対し、生活費二〇〇、〇〇〇円を支払つた(同額の支払いがなされた点は当事者間に争いがない)。

第五証拠

第六争点に対する判断

一、被告金の責任原因(民法七〇九条)について

事故車のブレーキが故障していたことを認めるに足る証拠はない。他の整備不良も認められないので、被告金に事故車整備上の過失があり、その過失により本件事故が起こつた旨の原告の主張は採用しがたい。したがつて、被告金は原告車の修理代を賠償すべき義務を負わない。

二、原告の損害

(1) 受傷部位・程度、後遺症

頭部打撲症、頸椎捻挫の傷害を受け、事故当日から六月二一日まで三一日間東大阪病院に入院加療し、退院後も七月一一日までの間に四日通院した。その後は北野病院に転院し通院治療を受けていたが、頭痛、上肢のしびれ、肩こり、耳鳴りなどが持続し、両側大後頭神経、両側前斜角筋に圧痛が認められ症状軽快しないので、昭和四三年七月二日から同院に入院加療中である。(〔証拠略〕)。

(2) 数額 合計一、六五五、二〇二円

(イ) 療養関係費 計四五、四六二円

(A) 東大阪病院入院雑費 四、四四〇円(〔証拠略〕)

(B) 森神経科脳波検査費 五、三六二円(〔証拠略〕)

(C) 前記入院中付添看護費 三一、〇〇〇円

〔証拠略〕によると、原告が東大阪病院に入院中は兄嫁龍山やす子および姪佃和子において交互に付添看護をし、その料金として計五九、〇八〇円を受け取つたことが認められるが、原告の前記受傷部位・程度、入院期間等に照らすと、入院中の付添看護費としては一日につき一、〇〇〇円の割合をもつて相当と認められる。

原告は龍山やす子に対し交通費をも支払つた旨主張するが、その額を認めるに足る証拠はない。

(D) 通院のための宿泊費、家政婦代

認められない。

〔証拠略〕によると、原告は前記東大阪病院退院後も病状が思わしくなく奈良市からの通院が不可能であつたので、退院後すぐ大阪市内にマンシヨンを賃料一日二、八〇〇円で借り、家政婦岸田を雇つて通院加療したというのである。

しかしながら、〔証拠略〕によると、原告は東大阪病院を退院後七月一一日までの二〇日間に四日通院したのみであり、またその後北野病院への通院頻度も甲四号証の四日から五日間に一日程度と推認されるのであるから、この程度の間隔においてもなお奈良市から大阪市までの通院が不可能であつたかどうかは、前記受傷部位・程度等に照らしきわめて疑問であり、前記各証拠中右通院が不可能であつた趣旨の部分はたやすく信用しがたく、他に右疑問を解消し通院不可能の事実を認めるに足る証拠はない。また、かりに右通院が不可能もしくは望ましくないものであつたとしても、その場合には奈良市内の適当な病院に転ずることもできたであろうから、大阪市内のマンシヨンを賃借してまで前記病院に通院せざるをえなかつたとはとうてい認めがたい。

つぎに、〔証拠略〕を総合すると、本件事故当時原告は奈良市において母と同居し、毎日大阪市の喫茶店リミーに通勤しており、みずからは家事をほとんど担当していなかつたものと推認されるので、その通院期間中別居しなければ新たに家政婦を雇い入れる必要はなかつたはずである。

以上の理由により、原告が通院加療のためマンシヨンを賃借し家政婦を雇つたためかなりの支出をしたとしても、それは本件事故と相当因果関係のある損害とは認めがたいといわなければならない。

(E) 通院交通費

原告主張のとおり(〔証拠略〕)。

(ロ) 業務代行者雇用費 計七六、〇〇〇円

原告は前記喫茶店リミーを経営しているが、本件事故のため営業に従事することが困難となり、原告に代わる責任者に雇い入れ、左記(A)、(B)のとおり給料等を支給し損害を受けた。(〔証拠略〕)。

(A) 雇いママ龍山やす子に対する給料、交通費(42・7・15~8・15) 四一、〇〇〇円

(B) 「バーテン平井に対する給料(42・8・16~9・末ごろ)

(C) 減収および累計赤字 認められない。

原告は事故後喫茶店の営業に従事することができず、ために相当な減収および累計赤字が生じている旨主張するが、〔証拠略〕によるも、いまだ減収額や累計赤字額を解認しがたく、他にこれを認めるに足る的確な証拠はない。

(ハ) 原告車修理代残 三三、七四〇円

原告主張のとおり(〔証拠略〕)。

(ニ) 慰謝料 一、五〇〇、〇〇〇円

右算定につき特記すべき点は左のとおり。

(A) 前記受傷部位・程度、後遺症。

(B) 原告には夫がなく母と二人で生活し、数年前ようやく待望の喫茶店を開店することができ、その喫茶店営業も順調であつたのに、事故による受傷のため入院したり、通院加療が長引いたりして、有形無形の営業損失をこうむり、将来その営業継続に相当な不安がある(〔証拠略〕)。

三、被告長束の弁済 二〇〇、〇〇〇円

〔証拠略〕によると、被告長束は原告に対し入院保証金および治療費六八、〇〇〇円のほかに生活費として二〇〇、〇〇〇円を支払つたことが認められ、この認定を左右するに足る証拠はない。

四、結論

被告らは不真正連帯債務の関係で原告に対し、前記損害のうち原告車修理代残以外の一、六二一、四六二円から右二〇〇、〇〇〇円を控除した残額一、四二一、四六二円、被告長束は原告に対し右原告車修理代残三三、七四〇円、および右各金員に対する昭和四二年一〇月一九日から各支払いずみに至るまで年五分の割合による遅延損害金を支払わなければならない。

よつて、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 谷水央)

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