大判例

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大阪地方裁判所 昭和43年(わ)3760号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕弁護人は

自動車登録原簿は刑法第一五七条第一項にいう「権利義務に関する公正証書の原本」に該当するけれども、その公正証書の原本にかりに不実の記載がなされたとしても、その記載部分が重要な部分でなければ刑法第一五七条第一項の罪は成立しないのであり、本件自動車登録原簿の記載事項中「使用の本拠の位置」は重要な部分とは言い得ないのであるから、「使用の本拠の位置」につき不実の記載をなさしめこれが刑法第一五七条第一項に当るとする本件公訴事実は無罪である。

と主張するのである。

刑法第一五七条第一項にいう「権利義務に関する公正証書の原本」に不実の記載をなさしめた場合、その記載部分が重要な部分でなければ刑法第一五七条第一項の罪を構成しないとする弁護人の主張の当否は暫く措き、本件自動車登録原簿において「使用の本拠の位置」という記載事項は重要な部分といえるかどうかについて検討を加えよう。

自動車の登録制度は、もと旧道路運送法(昭和二二年法律第一九一号)を根拠とする省令「車両規則」(昭和二二年運輸省令第三六号)によつて定められていたように、単に車輛保安という行政目的(自動車の分布状態の把握)のためのものであつたが、その後の社会経済状勢の推移に従い、一方では自動車の盗難事故の激増といつた事態が生じ、他方では動産としての自動車を占有を移さないで債務の担保に供するといつた自動車に関する動産信用制度の創設を必要とする経済界の動きに対処するため、道路運送車輛法(昭和二六年法律第一八五号)及び自動車抵当法(昭和二六年法律第一八七号)の制定となり、これらの法律により、自動車の登録制度を整備充実して、自動車を目的とする所有権を自動車登録原簿に登録してその得喪変更を公示する制度を新たに採用するとともに、この登録制度によつて法律的に可能となつた動産抵当としての自動車抵当制度の新設に踏み切り、右の自動車登録原簿に自動車を目的とする抵当権の得喪変更を登録して公示する制度をも新たに採用し、もつて、従来の自動車の分布状態の把握を目的とした自動車登録制度は、その他の目的、即ち、自動車の盗難防止の徹底、及び自動車を目的とする私権の安全確保といつた諸目的をも併有する新しい制度として発足するに至つたものである。

右にみたところで明らかなように、道路運送車輛法の制度により新しい制度として発足した自動車登録制度は、その目的の一つである私権の安全確保の面において、所有権の得喪変更の対抗力を付与するにとどまらず、同時に制定された自動車抵当法により、抵当権の得喪変更の対抗力をも付与することになつたのである。周知のように、自動車抵当制度は動産としての自動車を占有を移さないで債務の担保に供するものであるから、自動車の占有状態の把握が抵当権者(債権者)にとつて最大関心事であるが、この自動車の占有状態を登録原簿上知り得る手がかりが「使用者の氏名又は名称」、「使用者の住所」(以上二つは必要的記載事項ではない)と並んで「使用の本拠の位置」という記載事項であるといえよう。してみると、自動車登録原簿における「使用の本拠の位置」という記載事項は、弁護人のいうような「重要な部分」でないとはいえないのであるから、これが「重要な部分」でないと前提する弁護人の無罪の主張は採用できない。(川口公隆)

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