大阪地方裁判所 昭和43年(わ)428号 判決 1968年5月25日
本店所在地
大阪市旭区森小路町五丁目二六番地
樋口興行株式会社
右代表者
樋口秀雄
本店所在地
大阪市旭区森小路町五丁目二六番地
千林建物株式会社
右代表者
樋口茂哉
本籍
大阪市旭区森小路町五丁目二六番地
住居
寝屋川市幸町一八番地の一七
会社役員
樋口秀雄
明治四四年八月一五日生
右各被告会社並に被告人に対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官豊島時夫出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
被告会社樋口興行株式会社を罰金三五〇万円に
被告会社千林建物株式会社を罰金六五〇万円に
被告人樋口秀雄を懲役八月に
それぞれ処する。
但し被告人樋口秀雄に対し本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告会社樋口興行株式会社は大阪市旭区森小路町五丁目二六番地に本店を置き、映画館、モータープールを経営する資本金五〇〇万円の株式会社であり、被告会社千林建物株式会社は右同所に本店を置き、映画館、料理店、結婚式場及びホテルを経営する資本金三〇〇万円の株式会社であり、被告人樋口秀雄は被告会社樋口興行株式会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括するとともに、被告会社千林建物株式会社の取締役として同会社の代表取締役である長男茂哉に代つて事実上同会社の業務全般をも統括しているものであるが、同被告人は右各被告会社の業務に関し、法人税を免れる目的をもつて公表経理から売上収入の一部を除外するなどの不正な方法によつて所得を秘匿したうえ
第一、被告会社樋口興行株式会社につき
一、昭和三九年四月一日から昭和四〇年三月三一日までの事業年度において同会社の実際所得金額が一四、一七八、六一二円で、これに対する法人税額が五、一九〇、三〇〇円であるのに拘わらず、公表経理上右所得金額中一三、一四八、二〇七円を秘匿した上、昭和四〇年五月三一日、所轄の大阪市旭区内旭税務者において、同署長に対し、右事業年度の所得金額が一、〇三〇、四〇五円で、これに対する法人税額が二九二、七七〇円である旨所得金額等を過少に虚偽記載した法人税確定申告書を提出し、右秘匿所得に対応する法人税四、八九七、五〇〇円は法定の納付期限を経過するもこれを納付せず、もつて不正行為により右同額の法人税を逋脱し
二、昭和四〇年四月一日から昭和四一年三月三一日までの事業年度において、同会社の実際所得金額が二三、〇九四、〇六七円で、これに対する法人税が八、一五九、一〇〇円であるのに拘わらず、公表経理上右所得金額中一八、二五七、八三〇円を秘匿した上、昭和四一年五月三〇日、前記旭税務署において、同署長に対し、右事業年度分の所得金額が四、八三六、二三九円で、これに対する法人税額が一、四一二、八〇〇円である旨所得金額等を過少に虚偽記載した法人税確定申告書を提出し、右秘匿所得に対応する法人税六、七四六、三〇〇円は法定の納付期限を経過するもこれを納付せず、もつて不正行為により右同額の法人税を逋脱し
三、昭和四一年四月一日から昭和四二年三月三一日までの事業年度において、同会社の実際所得金額が二九、八一九、〇三七円で、これに対する法人税額が一〇、一〇一、七〇〇円であるのに拘わらず、公表経理上右所得金額中二七、一七三、八八三円を秘匿した上、昭和四二年五月三一日、前記旭税務署において、同署長に対し、右事業年度分の所得金額が二、六四五、一五四円で、これに対する法人税額が六二九、一八〇円である旨所得金額等を過少に虚偽記載した法人税確定申告書を提出し、右秘匿所得に対応する法人税九、四七二、五〇〇円は法定の納付期限を経過するもこれを納付せず、もつて不正行為により右同額の法人税を逋脱し
第二、被告会社千林建物株式会社につき
一、昭和三九年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において、同会社の実際所得金額が四三、六六一、四三五円で、これに対する法人税額が一六、三三三、一〇〇円であるのに拘わらず、公表経理上、右所得金額中三六、〇五五、〇二七円を秘匿した上、昭和四〇年二月二七日、前記所轄旭税務署において、同署長に対し、右事業年度分の所得金額が七、六〇六、四〇八円で、これに対応する法人税額が二、六三六、九三〇円である旨所得金額等を過少に虚偽記載した法人税確定申告書を提出し、右秘匿所得に対する法人税一三、六九六、一〇〇円は法定の納付期限を経過するもこれを納付せず、もつて不正行為により右同額の法人税を逋脱し
二、昭和四〇年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において、同会社の実際所得金額が四六、二五四、六八七円で、これに対する法人税額が一六、七〇六、二〇〇円であるのに拘わらず、公表経理上右所得金額中三九、七〇六、〇一五円を秘匿した上、昭和四一年二月二八日、前記税務署において、同署長に対し、右事業年度分の所得金額が六、五四八、六七二円で、これに対する法人税額が二、〇一九、四九〇円である旨所得金額等を過少に虚偽記載した法人税確定申告書を提出し、右秘匿所得に対応する法人税一四、六八六、七〇〇円は法定の納付期限を経過するもこれを納付せず、もつて不正行為により右同額の法人税を逋脱し
三、昭和四一年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において、同会社の実際所得金額が四四、六六一、七六七円で、これに対する法人税額が一五、一二八、七〇〇円であるのに抜わらず、公表経理上右所得金額中三三、二三三、〇三五円を秘匿した上、昭和四二年二月二四日、前記税務署において、同署長に対し、右事業年度分の所得金額が一一、四二八、七三二円で、これに対する法人税額が三、四九七、四〇〇円である旨所得金額等を過少に虚偽記載した法人税確定申告書を提出し、右秘匿所得に対応する法人税一一、六三一、三〇〇円は法定の納付期限を経過するもこれを納付せず、もつて不正行為により右同額の法人税を逋脱し
たものである。
(証拠の標目)
全事実につき
一、永井達人の大蔵事務官に対する各質問てん末書及び検察官に対する各供述請書
一、後藤寿治大蔵事務官に対する質問てん末書及び検察官に対する供述調書
一、湊悦二の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、北川利美の大蔵事務官に対する質問てん末書二通
一、川本可澄の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、押谷秀三郎の確認書
一、永井達人の上申書(一一月四日付)
一、影山彰夫の押谷関係調査書、所得金額按分計算書類、貸借勘定調査書、銀行調査書
一、後藤寿治外八名の確認書一綴
一、被告人の当公廷における供述並に大蔵事務官に対する各質問てん末書及び検察官に対する供述調書
一、押収中の金銭出納帳三冊(昭和四三年押第二七六号5)現金出納帳(同号6)ノート(同号7)現金出納メモ(同号8)預金貸金明細メモ(同号25)
判示第一の各事業につき
一、商号登記簿謄本(樋口興行分)
一、旭税務署長の確定申告証明書三通(右同)
一、樋口静恵の大蔵事務官に対する質問てん末書二通
一、今井治の大蔵事務官に対する質問てん末書二通
一、中川義夫の大蔵事務官に対する質問てん末書二通
一、樋口康祐の大蔵事務官に対する質問てん末書二通
一、松尾喬の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、井藤恵美子の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、旭税務署長の法人税決議書証明書
一、坂本八郎外一名の調査書
一、影山彰夫の社長仮受金調査書
一、押収中の経費帳元帳(昭和四三年押第二七六号14の1、2)金銭出納帳(同号1218)元帳(同号16)銀行帳(同号1319)経費帳(同号1517)
判示第二の各事実につき
一、商号登記簿謄本(千林建物分)
一、旭税務署長の確定申告証明書三通(右同)
一、樋口竜四の大蔵事務官に対する質問てん末書二通
一、稲垣武夫の大蔵事務官に対する質問てん末書二通
一、千賀藤祐の大蔵事務官に対する質問てん末書三通
一、金田京子の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、香川純子の大蔵事務官に対する質問てん末書二通
一、森田栄の供述書
一、越川太郎の確認書
一、中谷清市の確認書
一、末広エレベーター代表者の確認書
一、影山彰夫の北川関係調査書
一、永井達人の上申書(一一月三日付)
一、樋口茂哉の大蔵事務官に対する質問てん末書二通
一、押収中の元帳(昭和四三年押第二七六号4)金銭出納帳(同号1)銀行帳(同号2)経費帳(同号236)補助簿(同号9)支出比較簿(同号10)月別経費明細表綴(同号11)請求書控(同号20乃至23)営業メモ(同号24)
(法令の適用)
法律に照らすと、判示第一の一及び同第二の一の各罪は昭和四〇年法律第三四号附則第一九条により同法による改正前の法人税法第四八条第一項(各被告会社につき更に同法第五一条第一項)に、判示第一の二、三及び同第二の二、三の各罪は昭和四〇年法律第三四号法人税法第一五九条第一項(各被告会社につき更に同法第一六四条第一項)にそれぞれ該当するところ、被告会社樋口興行株式会社の判示第一の一乃至三、被告会社千林建物株式会社の判示第二の一乃至三、及び被告人樋口秀雄の判示第一の一乃至三同第二の一乃至三の各罪は刑法第四五条前段の併合罪であるから、各被告会社につき各同法四八条第二項により各罰金額を合算し、被告人につき所定刑中各懲役刑を選択したうえ同法第四七条、第一〇条により犯情の重い判示第二の二の罪の刑に法定の加重をなし、それぞれの所定金額ないし刑期の範囲内において、被告会社樋口興行株式会社を罰金三五〇万円に、被告会社千林建物株式会社を罰金六五〇万円に、被告人樋口秀雄を懲役八月に各処し、情状により同法第二五条第一項を適用して本裁判確定の日から二年間被告人樋口の右刑の執行を猶予する。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 村上幸太郎)