大阪地方裁判所 昭和43年(わ)499号 判決 1968年8月29日
本籍
香川県大川郡引田郡引田町引田七八九の一
住居
大阪市福島区玉川町三丁目二一〇番地
こんにやく製造販売業
丸山常一
明治四〇年七月一日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官通山健治出席の上審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役六月および罰金二五〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、四〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
本裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、肩書住居地で、こんにやくの製造卸売業を営んでいた者であるが、所得税を免れようと企て、
第一、昭和三九年分の所得金額が一四二八万三〇〇〇円、これに対する所得税額が六四四万一七〇〇円であるにもかかわらず、こんにやくの売却による収入の一部を除外する等の不正行為により、右所得金額中一一〇九万八〇〇〇円を秘匿したうえ、被告人の同年分の所得税の申告として昭和四〇年三月一三日福島税務署において、同署長に対し、被告人名義で所得金額が二五六万七六〇〇円、これに対する所得税額が六一万四〇〇〇円である旨、被告人の長男丸山和男名義で所得金額が六一万七一〇〇円、これに対する所得税額が一〇万三四〇〇円である旨の過少に虚偽記載した各所得税確定申告書を提出し、よつて昭和三九年分の所得税五七二万四三〇〇円を免れ、
第二、昭和四〇年分の所得金額が一九八五万五〇〇〇円、これに対する所得税額が九四八万五九〇〇円であるにもかかわらず、前同様の不正行為により、右所得金額中一五四六万七〇〇〇円を秘匿したうえ、被告人の同年分の所得税の申告として、福島税務署において、同署長に対し、昭和四一年三月一五日被告人名義で所得金額が三六九万二六〇〇円、これに対する所得税額が一〇六万五八〇〇円である旨、同月一二日前記丸山和夫名議で所得金額が六九万五六〇〇円、これに対する所得税額が一一万八七〇〇円である旨の過少に虚偽記載した各所得税確定申告書を提出し、よつて昭和四〇年分の所得税八三〇万一四〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示の各事実につき
(但し括孤内に「第一」とあるのは、その証拠が判示第一の事実に、同「第二」とあるのは、その証拠が判示第二の事実に対する証拠にとどまることを示す。)
一、被告人の当公判廷における供述
一、被告人の検察官に対する供述調書
一、被告人に対する収税官吏の質問てん末書(合計一二通)
一、被告人作成の収税官吏あて事実確認書(合計一四通。但し昭和四一年一一月一五日付分は、被告人と中原静恵の両名作成のもの、同年一二月一九日付分は、「コンニヤク原料仕入の追加について」と題するもの、同四二年二月二八日付分二通は、いずれも「供述書」と題するものである。
一、鬼塚淳子の検察官に対する供述調書
一、次の者らに対する収税官吏の質問てん末書(各一通。但し山崎兵馬分は二通、福徳好昭分は三通。)
菊池稔 柴田強 中原敏昭 白石久雄 塩沢民治 林正夫 宮脇博 山崎兵馬 福徳好昭 武田邦雄 石川金治
一、次の者ら作成の各供述書
白石久雄(第二) 萩野重雄(第二) 白岩政行(第二) 柿本政吉(第二) 西条米子 藤原春子 瀬野清司(第二) 浜口平左エ門(第二) 加藤義一(第一) 西口泰男
一、次の者ら作成の各確認書
吉池弘行(第一) 梶利美 飯塚陛右 古目谷弘 大沢為二 赤沢武登 西本隆 西条米子(合計三通中昭和四一年一〇月二二日付分および同月二八日付分(各ペン書のもの)は、第一、同月二二日付分(タイプ印刷のもの)は、第一および第二)
一、次の者ら作成の大阪国税局の照会に対する各回答書
金田国登 藤井商店 菊池四郎 難波徹 黒沢武好 白石孝一郎
一、田村辰雄作成の調査てん末書(合計二通中昭和四二年一月三一日付分は、第二、同年三月四日付分は、第一および第二)
一、福徳好昭作成の「上申書」と題する書面
一、大阪国税局査察部の被告人にかかる所得税法違反けん疑事件確定申告書綴
一、前同銀行調査事績書綴
一、押収のノート一九冊(昭和四三年押第三五八号の1ないし17、19、23)
一、同蒟蒻玉原料扣帳一冊(前同号の18)
一、同家賃帳二冊(前同号の20、21)
一、同給料帳一冊(前同号の22)
一、同請求書複写簿三冊(前同号の24)
一、同領収書、請求書、納品書綴二綴(前同号の25、26)
一、同金銭出納帳六冊(前同号の27)
一、同決算書原稿二枚(前同号の28)
一、同源泉微収簿一綴(前同号の29)
一、同普通預金払出ノート三冊(前同号の30)
(法令の適用)
被告人の所為中、判示第一の点は、所得税法(昭和四〇年法律第三三号)附則第三五条により改正前の所得税法(昭和二二年法律第二七号)第六九条第一項に、判示第二の点は、所得税法(昭和四〇年法律第三三号)第二三八条第一項に各該当するところ、所定の懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は、刑法第四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については、同法第四七条本文、第一〇条により、犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期、罰金刑については、同法第四八条第二項により、右の各罪の罰金額を合算した罰金額の各範囲内において、被告人を懲役六月および罰金二五〇万円に処し、同法第一八条により右罰金を完納することができないときは、四〇〇〇円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置し、情状により、同法第二五条第一項に則り、本裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判官 井上清)